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BOOK REVIEW vol.091 生きのびるための事務

今回のブックレビューは、坂口恭平さん(原作)、道草晴子さん(漫画)の『生きのびるための事務』(マガジンハウス)です!

原作は、作家、画家、音楽家、建築家として多方面で活躍されている坂口恭平さん。全ページ漫画で描かれており、漫画のご担当は道草晴子さんです。黄色と黒のカラーリングに味のあるイラスト、『生きのびるための事務』という印象的なタイトル。スキマ時間にたまたま入った本屋さんでこちらの表紙とばっちり目が合い、「なんか気になる!」と思わず手に取りました。

ストーリーは、約20年前、23歳で無職だった坂口さんと、突如現れた事務員かつ居候のジムとの出会いから始まります。このジムから、“夢を現実にするたった一つの技術である事務”を優しく、時に厳しく学びながら、素直に実践していくうちに、次第に坂口さんの人生に光が差し込み、道が開けていく…というお話です。

「事務」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、書類の作成や処理、ファイリングや整理、データ入力や電話応対などの、いわゆる“事務作業”ではないでしょうか。じつは私も、そういった意味での「事務」だと思って読み始めたのですが、語られていたのはまったく異なる「事務」だったので、良い意味で衝撃を受けました。「これも事務なのね!?」という新鮮な驚き。私はバックオフィスとしての事務作業も嫌いではないけれど、今回の「事務」も、読み進めていくうちに点と点が繋がり線になっていくような、頭の中がすっきりと整理されていくような感覚になりました。また同時に、自分の“夢”や“目標”、そして“この先の人生”についても考える機会にもなりました。

皆さん誤解されてますけど、《事務》は、「冒険」のための道具なんです。
「冒険」をはじめない限り、事務なんて存在しないんです。

『生きのびるための事務』P138より引用

事務員のジムの言葉は、時々、格言のように胸に響きます。今回、私の中で響いた言葉はこちら。「事務」と「冒険」・・・一見、まったく結びつかない言葉ですが、このお話を読んでいると、「なるほど!」と、大きく頷ける部分がありました。つい“絶対的な安定”を目指したり、一度手に入れたそれらを死守しようとしてしまうけれど…。「冒険」をはじめない限り、「事務」は存在しない。『私に不足していたのは、「冒険」だったのかもしれない』と自覚できた瞬間でした。

「自分に自信がない
「やりたいことが続かない
「悩んで行動に移せない
足らないことは《事務》でした

『生きのびるための事務』帯より引用

帯にも書かれていますが、“やりたいことはあるけど、それをどう仕事に繋げていけばいいのかわからない”、“頭で考えてばかりでなかなか行動に移せない”と悩んでいる方、その中でもとくに芸術や創作活動で生きていきたい方には、多くのヒントの詰まった、背中を押してもらえる一冊だと思います。

『生きのびるための事務』の中で示されている「事務」とは、方法であり手段であり戦略です。「事を務める」と書いて「事務」。将来やっていきたいことを、単なる“夢”で終わらせないためにも、夢を“将来の現実”として明確に捉え、コツコツ実践していくことの大切さを実感しました。“いつか叶うといいな”と願っているだけでは実現は難しい。でもこのお話に書かれている方法を実践していくことによって、きっと何か見えてくるものがあるはずだと勇気をもらいました。

・・・私も私の「事務」を始めてみようかな? 不安はあるけれど、冒険に怖さはつきもの。心細くなった時は、例の合言葉を唱えてみようと思います。「きっと大丈夫。どうせ最後は上手くいく!」と。

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