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BOOK REVIEW vol.063 大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生

今回のブックレビューは、藤子・F・不二雄さんの『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生』(小学館)です!

本棚に並ぶ背表紙を見るたびに懐かしさが蘇る、『大長編ドラえもんシリーズ』。物心がつく頃にはすでに実家に何冊かありました。おそらく姉か兄のどちらかが両親にねだって買ってもらったもの。最終的には末っ子である私の手元にやってきて、そのまま私と共に実家を離れ、京都や大阪府内を転々とし、今もなお私の本棚に並んでいます。30年以上、ずっと同じ時を過ごす同志のような存在。シリーズの中でもとくに思い出深いのは、『のび太の宇宙開拓史』と『のび太の海底鬼岩城』、そして『のび太の日本誕生』の3作品。ふと思い立って、今回は久しぶりに『のび太の日本誕生』を読んでみることにしました。

このお話は、原始人たちがいる石器時代へタイムマシンで旅に出る(正確には家出^^)、ドラえもんたちの夢と冒険の物語。“冒険”とは無縁の生活を送る、内気な小学生だった私は、この壮大なスケールの物語から、いつも夢と勇気をもらっていました。

昔からとくに興味があったのは、ドラえもんたちが冒険に出た先での“衣食住”のこと。ドラえもんのひみつ道具の一つ、「キャンピングカプセル」で寝泊まりしたり、かたい岩も地面も豆腐のように掘れてしまう「らくらくシャベル」で、山肌に穴を掘って自分たちの個室をつくる様子は、何度見てもわくわくします。間取りが載っているページはまじまじと見て、自分だったらどの個室を選ぶか真剣に考えたり(笑)、「ミニチュア家具」を選ぶ場面でも、「私だったらどれを選んで、どんな部屋にしよう!?」と悩むのが楽しかった。割ると中からカツ丼やカレー、スパゲティが出てくる、丸型の“ダイコン”も育ててみたかったし、身体のまわりの空気を調整できる「エアコンスーツ」も、雪国の民からすると憧れだった…!

大人になった今、あらためて読み直しても、やっぱり同じ場面にわくわくしました。でも子どもの時に比べると、登場人物たちのセリフの奥にある想いや、心の動きをより敏感に感じ取ることができ、物語の途中で出てくる武田鉄矢さんの『時の旅人』の歌詞もとても胸に沁みて…。“今の私”の視点で読むことで、また新たな味わい方で作品を楽しむことができました。

ストーリーも全部頭に入っているのに、何度読み返しても、じーんと感動して胸がいっぱいになってしまうのは、作品が素晴らしいのはもちろんのこと、もう一つの理由は、子どもの頃の悩みや感情が、この物語のあらゆる場面に染み込んでいるからなのかもしれないな、と思いました。

富山にある実家の小さな私の部屋で、子どもながらにいろんな不安を抱えながら読んでいた、あの頃。悲しいことがあるたびに、冒険と友情の世界に浸り、心を落ち着けていたからなのか、今もページをめくるたびに、あの時の感情を思い出します。もしも30年後の今の私から、あの頃の私にメッセージを送れるとしたら・・・とにかく一言、「大丈夫だからね」と伝えてあげたい。今日はなぜだかそんな気持ちになりました。

私と共に、30年以上も旅を続ける物語。きっとこれからも必要な時に読み返し、その都度、勇気をもらい続けるんだと思います。今日、手に取ったのも、偶然のようで偶然じゃなかった。立ち止まりかけていた心に、勇気と感動をわけてもらうことができました。この文章を書き終えたら、また一歩、前に進むことができそうです。

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