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森にいけない森のようちえんの挑戦

2020年度始まりました!ウチは森のようちえんです。園舎を持たず晴れの日も雨の日も森の中で過ごします。が、北九州は今、安心して人と会える状況ではありません。子どもたちの命を守ることが何より最優先。森には行かず、みんなと会わない形でスタートする決断をしました。今現在、このような形で森のようちえんをやろうとしている団体がどれだけあるかはわかりませんが、森のようちえんに限らず、幼稚園、幼児教育施設、保育園など子どもの教育に関わるどの施設も「預かる」という形を避けなければならないような状況になっています。そこで、約1ヶ月スタッフで何度もオンラインミーティングを重ねて出したこの決断と取組についてここに記したいと思います。子育て中の方、幼児教育者、教育関係者の方々にとって少しでも参考になればと思います。

休園かはじめるか

新年度をスタートさせるのか、休園という形をとるのかという選択肢がありました。緊急事態宣言は現時点でとりあえず5月の連休明けまで。が、そのあと必ず、いつもの日々が戻る保証はない。それに伴う子どもたちの家での日々は約1ヶ月。

たかが1ヶ月。されど1ヶ月。

この間も子どもたちは成長する。そもそも森の育ち場は預かることを主目的にした施設ではありません。幼児教育をするところ。子どもたちに何かしたい。きっと何かできる。私たちは休園ではなく「新年度をスタートさせる」という決断をしました。

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森に行かずに何をやるのか?

最大の課題はここ。ウチは森の中で子どもたちがあそぶことをとことん応援するようちえんなのです。森に行かずして、子どもたちに直接会わずして、何をやるか…スタッフ間で相当な時間とエネルギーを注ぎました。その一方で、私の中には「困った」という感覚はあまりなかった。ウチの園は、「自己肯定感・主体性・豊かな感性」を育むことを目的としたようちえん。あくまで「森」は方法論にすぎないのです。その感覚がスタッフ間でも共有できているので、森に行けないなら、直接会えないなら、どうやってこれらの力を育めるのか・・・議論は常にそこでした。

育みたいのは非認知能力

森の育ち場が道標にしているようちえんとしょうがっこう、徳島にある「自然スクールトエック」。代表の伊勢達郎さんが、一昨年の森のようちえん全国フォーラム分科会にて、第一声でいったことにしびれた。

「僕がやってることはビルの一室でもできます」

森のようちえんというと外遊びが多い、自然いいよね、自由でいいね…そんなところに目が向きがち。だから森のようちえんは「男の子には合うよね」「活発な子にぴったり」そんな風に思われることもしばしば。私たちは、子どもたちの非認知能力を育みたいのです。もっというと、生まれながらにもっている好奇心、やってみたい!という気持ち、個性…そんなモノを潰さず大事に守りたいのです。

そのために必要とされているのは「幼児期の主体的な活動」つまり「あそび」。あそびなさい!と言われて遊ぶのは遊びじゃない。「やりたい!」という気持ちあってこそ。遊びこそ主体的な活動なのです。そこで重要になってくるのはそばにいる大人の存在。子どもの成長に欠かせない遊びを、そばにいる大人がくだらないと捉えるのか、嬉しい気持ちで見つめられるのか。

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オンラインとオフライン

何ができるか?と考えたときにすぐに出てきたのは「オンラインミーティング」。通常活動で、毎朝子どもたちとミーティングをする。それを毎朝オンラインでやるということ。

みんなの顔がみれること、今、繋がれることは最高!が、オンラインに繋がっていない時間の方が俄然多い。さらに年少さんともなると何十分もパソコンの前に座ってるなんてできないし、そのこと自体が親子にとってストレスになりかねない。

オンラインの使い方も、すでに行われているオンライン授業などは、たとえば「◯◯を作ろう!」などゴールが同じものが多い。ウチのようちえんが大切にしていることを育むには、みんなおなじものを作って、私たちが正解を教えていくスタイルは合っていない。私たちが育みたいのは、子どもたちがやりたくてやるもので、何かができるできないに関わらず、上手い下手の評価のない場でこそ育まれるのだ。

今、つながれるオンラインというツールの良さ、オフラインだからこそできること、どちらもやろう。そう決めた。

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いつもと同じじゃないか!

作り込み過ぎず、けれど子どもたちの遊びが深まるような…ゴールが一つじゃなくて、暗に答えを伝えるような物ではなくて…知恵を絞って、たくさんのアイデアを出した。「キットにして届けよう!」ではどんなキットにする?考えに考え…辿り着いたのは、今までやってきた日常を届けよう!!

ウチの園には工作の時間、自由遊びの時間、歌の時間…のように大人があらかじめ決めたカリキュラムはない。様々な道具が用意されていて、子どもたちは自分のやりたいことに必要なものがあればその道具から持っていって使う。これじゃん!

使っても使わなくてもいい。「自分たちの遊びを応援してくれている大人がいる」それがいつか届くといい。これ使わなきゃ、ではなく、これも使えるかも!他にもこれ、いいかも!そんな気持ちが届くといい。いつも、用意している道具たちをベースに「七つ道具」と題して準備することにした。

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極論、親御さんをいかに支えられるか

子どもたちには「七つ道具」を渡すことに決めた私たち。が、そばにいる親御さんが「これ使わなきゃよ」「最後まで書きなさい」「もっと上手に使いなさい」そう言わざるを得ない状況になってしまえば意味がない。私たちは今子どもたちには直接関われないのだ。

日頃から子どもの育ちには家庭が必須だと思っているのでウチの園は、親御さんの話をただただ聴く機会を設けたり、親御さんが少しでも健やかでいられるように私たちは何ができるか、ということを大事にしている。この状況なら尚更だ。四六時中、家の中に子どもと一緒…綺麗事抜きにしてしんどい。笑っていられる時ばかりじゃないのは明白。

この状況で、子どもたちの健やかな育ちに対して私たちができることは、親御さんをいかに支えられるか。そうだ!親御さん向け「七つ道具」も届けよう!

香りでリラックスしてもらえたら…と楠のキーホルダー、遊びに困った時のおみくじ、子どもとの関わりに行き詰まった時に使う「最後の切り札」、親御さんとスタッフのオンライン飲み会のチケット、親御さんと個別にオンラインで話ができる回数券など。クスッと笑ったり、ホッとしたり…そんなきっかけになればと想いを詰め込んだ。

さぁはじまります!

子ども向け七つ道具と親御さん向け七つ道具をお届けして始まったばかりの日常。これからも状況はどんどん変化するだろう。これがベストだなんて思っていない。きっとまだまだやれることはあるし、常に今考えうるできる限りのことをやりたい。

みんなに元気でいてほしい。心も体も。

離れいても繋がっていることを伝えたい。

いつも想っている事を。

森の育ち場の挑戦はまだまだつづく。


今、【森に行けない森のようちえん】の子ども達のために利用させていただきます!スタッフみんなもすごく喜びます♡