人生、転職、やり直しゲーム 第1章

【優順さんの融資】

一方、
優順(ゆうじゅん)さんの方の融資は、
隣の輪仁(りんじん)さんの家の庭の部分を購入する金額が80万円、
輪仁さんが近くに駐車場として新しく購入する
五里押(ごりおし)さんからの土地購入金額100万円。
輪仁さんとの家の境目の塀の着工代金もかかる。

輪仁さんと五里押さんに土地代を
もっと安くしてくれないかと
しつこく頼むこともできるのに、

「無能(むのう)さん、隣近所から買い物するのに
ケチケチ値下げ要求したら、
この先、何年も
値下げしたことをご近所から言われる」
なんて優順さんは呑気な事を言う。

また、俺にキャンセルの電話がかかってきたので、
優順さんの家に慌てて行った。
もう、いいかげんにしろ。

「土地には60万円以上使いたくないんだけどね、
180万円もかかったら、
持ち出しがかかる。
アパートの家賃収入があっても、
返済が多くなるから、
やっぱり辞めたい
優待旅行もキャンセルする」

またかよ!
この前、説得したばっかだろう!

「優順さん、
それでは、私から、借りる金額を
180万円上乗せする代わりに
銀行の金利を下げるよう流石銀行に交渉しましょう。
優待旅行については、
アパート着工を進める、進めないは関係ありませんし、
今からキャンセルはできません」

「無能(むのう)さん、
それじゃあ、金利はそれでお願いします
旅行は行きます」

俺は頭を下げ、優順さんの家を後にして、
このクソ熱い中、また、流石銀行に向った。

流石銀行の融資係は渋い顔をした。
さっきの鴨葱さんの時と対応が全然違う。

「年金暮らしで、
建築費2300万円。
そのうち自己資金は、半分だから、
1150万円の借り入れ、
プラス土地購入に180万円。
合計1330万円。

金利をこれ以上下げるのは出来ませんね」

「何とかなりませんかね」

「鴨葱(かもねぎ)さんと違い
優順さんの収入は年金のみですからね。
この、土地代と追加の塀の着工代金。
これがなければ何とか…」

くそう、やはりそこか。
俺は何度も頼んだが、
融資係は土地代と堀の代金を自己資金で払えないと無理だと言った。

この、流石銀行はこの辺で審査が1番甘い銀行なのに。

この前、不正融資問題が発覚してから、
前はできた、
銀行口座コピーをフォトショップで残高を増やす改ざんテクは
もう、使えないし、
何とかできないかなぁ。

会社に戻ると、
課長が菅四輝(すがしてる)を怒鳴り散らしていた。
「また、架空の立地審査か!
これ以上、本社を誤魔化せないんだよ!」
(架空の立地審査 知り合いに頼んで、
見積もりの審査を受けてもらうこと。
最終的にキャンセルする、
プロセスのノルマクリアの為の手口)

バァン!
机を叩いた音が、
営業課の室内に響き渡った。
外は暑いのに、営業課の空気は冷え切っていた。
クーラーだけのせいではあるまい。

ここで、課長は俺に気がついた。
「おっ、無能か。
報告しろ」

「はい、課長、
鴨葱さんの融資、OKです。
来週にはおります。
着工に取りかかれます。
優順さんは…融資が少し難しいです」

「よっし、
まず、1件、決めたか!
頑張ったな!
よくやった!
あと、もう1件で、今季のノルマクリアだ!
3000万円契約だ!
歩合、30万円!
出ましたァ!
おめでとう!」

営業課のデスクで仕事していた皆がこちらに駆け寄った。

「無能非才、
もう1件、
優順さんは今月中になんとしてもまとめろ!
金が足りなくて融資がおりないなら、
保険を解約させるとか、
親戚から借りるとか、
お前が個人で貸すとか、
どうにかして
金を用意させろ!」

俺がぁ、優順さんに金を貸す?
持ち出しは、これ以上、勘弁してくれ!

「いいか、無能。
今月中にもう1本契約を取らないと、
首だからな!」

「は、はい課長」

「期待しているぞ!
よし、鴨葱さんとの契約成立ぅぅぅぅ!
皆!胴上げだー!」

ワーッ、
部屋の営業マンに皆に
俺は、胴上げされた。
騒ぎを聞きつけた他の課からも応援が来て、
でかい声バンザイ、バンザイ言われて、
汗まみれの手でもみくちゃにされた。
契約が取れた
達成感で俺は快感に酔いしれた。

胴上げが終わって、
冷静に考えてみると、
優順さんのところ、何とかしないと、
また、やっぱりアパート建築をやめると言い出すぞ。
困った…

なるべく、俺の金の持ち出しはしたくない。
俺は、2年前にアパート着工契約を取ったとき、
やはり、銀行から融資を断られた客のために、
フォトショップで預金通帳の改ざんをして、
個人的に足りない費用を俺が負担した。

そのせいで俺の借金は増えたんだ…
その地主の建てたアパートに現在俺は住んでいて、
毎月、家賃まで支払っている。

いきなり、俺の携帯電話が鳴った。

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