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「メアリーの総て」をみた

「フランケンシュタイン」の作者が女性で、かつ18歳であるということすら知らずにいた。物語の始まりが16歳。終わりは18歳。

できれば経験したくない不幸が、幾重にも重なり合った2年間だ。私だったら途中でダメになって、すべて投げ出しているだろう。

登場人物の男性のクズ度合いもすごい。男は理想を追い求め、女性は現実を見据えているという、男女の構図は200年も前から何も変わっていないのかと驚いた。パーシーがフランケンシュタインを読み終わった後に「バケモノじゃなくて、もっと美しい、天使とかが生み出されるんじゃダメなの?」と呆けたようなことを言った瞬間、ぶちのめしてやりたかったもん。

主演はエル・ファニング。
ひょろりと長細い手足、時折見せる無邪気な笑顔が、無垢な少女の片鱗を感じさせる。劇中なんども出てくる「思いを巡らせながら鉛筆をくるくる回す」シーン。彼女の指はあどけなく鉛筆を弄び、指先には幼さが宿っていたのが印象的だった。短期間で10年分ほどの重い人生経験を経て、すっかり老成してしまったが、やはり少女は少女。心と体のアンバランスさがよく現れていたように思う。

この映画の中に出てくる言葉で、印象に残っている言葉が2つある。

ひとつは「自分の声を見つけなさい」という父からの言葉である。
実は、私も父に同じようなことを言われたことがある。自分の不甲斐なさを、幸せにかまけて外的なものに責任転嫁しようと、ジタバタともがいていた頃だった。父は私に、孤独になり、自分と向き合え。自分の気持ちをしっかり見つめなさい。と言った。まさに、なセリフに世界や時空を超えた父の普遍性を感じざるを得なかった。

ふたつめは「私の選択が今の私を形作っている」という言葉。
あんなにめためたに傷つけられた18歳がそんなこと言えるか?まじか。なんて精神力だ。しかも、パーシーを目前にして「後悔していない」と宣言する。もうなんて強い女性なんだ、と感服してしまった。私はきっと彼女に一生頭があがらない。

テーマは昨今の「女性の地位向上」と密接に結びついている。タイムリーというか合わせてきたのだろうと思う。しかし、200年も前から戦い続けてきた女性たちがたくさんいたのだな、と改めて感じた。監督は、今だからこそ映画化したかったのだろう。

衣装をはじめとする画づくりの繊細さが素晴らしかった。とりわけ衣装は本当に可愛くて、色もデザインもめちゃくちゃ好みだった。メアリーが着ていたコート、ポリドリのジャケット、ぜんぶ欲しい・・・。

あと、やっぱりクリエイティビティって、幸せに浸かってると発揮されないっていう定説、あるよね。何か必要に駆られて、追い詰められて、そこにしか力が注ぎ込めないっていう環境、大事だよね。って思った。でも辛いんだよな。


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