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ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」~いくつもの別れ道

ああ、とわ子はやっぱり小鳥遊(オダギリジョー)とは…そうか、そういう結末になってしまったか…という今週9話であった。
前回までの感想はこちら。

オダジョー登場時は、ビジネスとプライベートでのあまりの切り替わりっぷりに一部でサイコパスとまで言われてしまったけど、そんなことはなく、数学を学びたかったけれど17歳から31歳まで自分がない暮らしをせざる得なくて、社長に拾われた後もこの人について行けば大丈夫と妄信的に仕え、社長の命令は絶対で逆らうこともなく、結局ずーっと自分の人生がなかった小鳥遊。
とわ子と出会い、会社を辞める決意をし結果はどうあれ初めて他人と共に生きていこうと思ったことで、小鳥遊もやっと自分の人生へ踏み出せるのかもしれない。

亡き母の写真を見るとわ子。ここでまた昔母とした会話が聞こえてくる。
「とわ子はどっちかなぁ?一人でも大丈夫になりたい?誰かに大事にされたい?」
とわ子だって小鳥遊を好きだし、彼となら安心できるし多分幸せになれると分かっている。分かっているんだけどね…やっぱり欲しいものは自分で手に入れたい人なのだ、とわ子は。

ネクタイ姿のままYシャツの袖をまくり、とても自然にキッチンに立つ小鳥遊。オダジョーは、ちょっと崩した大人の男の魅力がある。
とわ子と一緒に作った料理を向かいあって食べ、食後はワイングラスを傾けながら数学の問題を解いたり楽しく弾む会話。穏やかで温かい時間を過ごす二人は、まるでもう夫婦のようなのに、マレーシアで住む予定の家の写真をそれぞれ眺めながら、思い描いていた未来は違っていたのか…。
「指紋が合わないように、人もみんな違うんですから。」
「そうですよねぇ。人は違うんですもんね。」
夜の街角で最初で最後の抱擁を交わし、とわ子が小鳥遊の頬に軽くキスすると、ちょっと驚いたように微笑むオダジョーの表情は、情感が滲んでいて良かった。
「じゃ。」と互いに言った後、もう二度と振り返ることなく反対の方向に歩き去ってゆく二人。
フランスの大人の恋愛映画でこんなシーンなかったっけ?というような、甘く切ない別れのシーンだった。

ところで、回を重ねるごとに慎森がかわいくて堪らなくなってるんですが(笑)。
「ヒゲの人はダメだ。」と、小鳥遊とのデートへ行く支度をしていたとわ子のスマホを奪い部屋に閉じ込め、とわ子との攻防戦で頭から小麦粉かぶってお爺さんみたいに髪が真っ白になっちゃっても、小学生かアンタって感じのリュック背負って拗ねてる姿も、妙に愛しくてなんだか許せてしまう。
「恋愛にはときめきのピークがある、だから人は結婚して夫婦になる。恋人だったらとっくに別れる出来事を、夫婦は何度も乗り越える。だから強くなる。ときめきが強さに変わる。」
な、なるほど〜と思わず頷いてしまう。慎森は時々とても核心をついてくる。
「君には愛する人がいる。知ってる、僕のことじゃない。ヒゲの人でもない。残念ながら君はあの人を愛している。その人も君を…。」「田中さん(八作)だよ。」
ええっ!?そうなの!?

とわ子と八作、元夫婦の会話が泣ける。

「私もね、あなたを好きになって、あなたと結婚して、よかったよ。それだし今でも好きだよ。」
「両思いだ。」
だからあなたを選んだ。あなたを選んで、一人で生きることにした。
「無理なのかな。」
「今だってここにいる気がするんだもん。三人いたら恋愛にはならないよ。」
「いいじゃない。こうやって一緒に思い出してあげようよ。三人で生きていこうよ。」
「そうだね。」

とわ子と八作は、かもめへのそれぞれの愛を共有し、夫婦を超えた絆で結ばれてゆくのであろう。
とわ子とかごめと八作、三人の愛。それも一つの愛の形なのだろうか。

「あの時続いていたら、どんな夫婦になってたんだろうね。」
とわ子と八作がもしも別れずにいたらという想像シーンは、どこにでもある家族の日常そのもので、二人で娘の成長について語り合いながらも老いてどちらかが先に逝く事まで考えたり。夫婦なんて強いところじゃなくて弱いところで繋がってるもんなんじゃないの?という八作。元は他人同士の二人が家族としての歴史を重ねながら生涯寄りそう…なんてそんな未来もあったかもしれない、と思うとやるせない。
八作からプロポーズされなかったという、とわ子。
「大豆田っていい名前だね。大豆田八作もいいなぁ。」って言ったじゃないという八作。え?それはちょっと分かりにくい…。
うちも夫からのプロポーズとか全くなかったよ…と思ってたんだけど、よーくよーく記憶を辿ってみたら、「ワタシとアナタ、大きいオジーサンと小さいオバーサンにナリマス。」って、変な日本語で言ってくれた、あれがそうだったのか?
でもこの国の民に共白髪なんて考えあるだろうか?恐ろしいほど離婚率が高い国なもので…。
老夫婦になるまで願わくばこの人と別れないようガンバロウ…と、なぜか我が身を省みてしまった9話だった。

冒頭の、婚約指輪を会社で披露している夢のシーンが、ラストは指輪が虫に替わっていて、ワワワワッ!取って取って取って!と大騒ぎするとわ子にウケる。その虫(カナブン?)の指輪も結構なかなかきれいだし素敵だと思うけど。

いよいよついに来週は最終回。
初恋の人・甘勝(竹財輝之助さん)の登場で、どーなる大豆田とわ子!




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