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ドラマ「14才の母」〜桐ちゃんと春馬くんの成長

現在、動画配信されている「14才の母」を観ている。

まだ中学生の未希(志田未来ちゃん)と桐ちゃん(春馬くん)。
子供ができるということも避妊についてもよく分かっていないような幼い二人が、好きという気持ちだけで結ばれ、やがて未希の妊娠が発覚する事から始まるストーリー。
オープニング映像では、出演者たちがそれぞれ、母親の体内で眠る胎児のように丸くなっている姿も印象的だ。
当時この作品はセンセーショナルな問題作とも言えるもので、私もリアタイで視聴していたのだけど、なぜか桐ちゃんを演じた春馬くんのことは記憶から抜け落ちていた…。

当時と違う点は、今は自分が親の目線でこのドラマを観ているということだ。
産婦人科で母親(田中美佐子さん)が未希に
「あなたが生まれて、最初にあの、くっしゃくしゃな顔を見たとき思ったの。ああ、あたし、この子に会うために生まれてきたんだなぁって」
と語るシーンで、涙がとまらなくなった。
私は41才で息子を産んだ。
それまでずっと、自分は結婚もしないし、子供を産むこともないだろうと思って生きてきた。
だけど、生まれたばかりのまだ目も見えていない息子の顔を見た時、
"ああ、長い間ずっと、この子は自分を待っていてくれたんだ " と思えた。

「お母さんが私のことを大事に思ってくれればくれるほど、あたし忘れられないと思う。お母さんにとっての私は、私にとっての(お腹にいるこの子だから)」
「お母さん、ごめん。手術なんて出来ない!」と言って未希は産院を飛び出す。

14才で妊娠・出産というのは、若気の至りと言ってしまえばそうなのかもしれないけれど、産んでも育てられるはずがない、きっと後悔する、まだ若いんだから失敗してもやり直せる、忘れるんだ、と言う周囲の大人たちの決めつけや常識に、"本当にそうなのか?忘れちゃいけないんじゃないか?"と疑問を持つ、未希と桐ちゃんの真っ直ぐな瞳から、目を逸らすことが出来ない。

ほとんど歳の変わらない息子が、もしも桐ちゃんと同じような立場になったら、自分は子供の声にちゃんと耳を傾けられるだろうか?
私も動揺し取り乱して、頭ごなしに叱りつけ否定してしまうかもしれない。
そして、日本での性教育は今どんな感じなのだろうか…16年前のこの作品と同じ状況に陥っているティーンエイジャーが今もいるだろう事を思う。
こちらの国では学校でも性教育は必須。避妊や性感染症予防、相手や自分を大切にすることについても中学生で学ぶ。なぜ子供が出来るのか、聞かれたら親もしっかりはっきり教える。

「どうしても、お腹の子にどうしても会いたい」と出産を決意する未希に、そんな甘いもんじゃない!これから沢山の人が14才で出産するという未希に背を向けるだろう、育てきれなくて結局は子供を手放す人だって沢山いるのだ、と諭す母。
確かに、初めて子供を産み親になるということは、自分がそれまで生きてきた世界の全てが、180度変わってしまうくらい大きなことだ。
それは楽しく幸せなことばかりであるはずもなく、時には苦悩や痛みや悲しみさえも伴うことであり、自分に置き換えてみると、新米の親として未知のことを体験してゆく未熟さは、14才でも41才でも、母になることにそれほど変わりはないのじゃないか?とも思えた。


このまま仕方ないって逃げちゃいけないんじゃないか?未希のために自分ができることはないのか?と、強く逞しい母親(室井滋さん)の保護下から飛び出し自分の人生を歩もうと、もがき、葛藤する桐ちゃん。
何も出来ない自分が悔しくて情けなくて、涙が頬をつーっと伝うシーンでの、意思の強そうな春馬くんの澄んだ目に、ハッとさせられた。
どこか影があり、感情が繊細に揺れ動いている桐ちゃんと、春馬くんが重なって見える。
春馬くんはドラマ「Two Weeks」が初の父親役と言われていたけど、本当はすでに16才の時に父親役をやっていたのだよね。こちらは子供との交流シーンなどはないけれど、我が子と対面する場面はあった。
生まれてきた小さな命に驚き、その責任の重さに耐えきれずに、思わず病室から飛び出してしまう桐ちゃんもリアルだった。

上背もあり顔立ちや体格もすでに完成して大人びているけど、あどけなさも残る16才の春馬くんの、寂しげで憂いを帯びた表情や、はにかんだような仕草に、成長し20代後半になっても変わらない春馬くんの面影が見え隠れして、胸がいっぱいになってしまう。
春馬くんは大人になってもずっと純粋なままで…意に添わないことや色々なことを全て自分一人の胸に収め、抱えて来たのだろうか…。
そんなことを思うと、未希がしたように、"今までずっと頑張ってきたんだよね"と頭を撫で、少年の春馬くんをこの腕にぎゅっと抱きしめて、母親のように守ってあげたくなる。


長い俳優人生の中の、10代の春馬くんの姿がここにも、作品という形で永遠に刻まれている。
私たちファンは、何度もアルバムをめくるように、あなたの成長の過程を幼き日から辿ってゆくことが出来る。
それは数いる俳優たちの中でも、稀有なことなのではないだろうか。

春馬くん

私たちは
あなたの生きてきた軌跡を
見つめ感じながら…

あなたの作品は
私たちへの
忘れがたみのようだ





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