心の最先端
この歌詞を見た時、感銘を受けた。
涙の価値とはきっとこの歌詞の通りだ。
泣きながら自分の想いを誰かに伝えた時。
それは心の切実な訴えだ。
誰かの話を聞いて涙が出そうになった時。
それは自身が抱えている不安のかけらだ。
涙を流して、初めて自分が抱えていた感情に気付くことが多い。
痛覚の鈍りを取り戻してくれるのはいつも涙だ。
しかし涙はそう簡単に姿を見せない。
だからこそ「待ちこがれていた涙」なのだ。
最先端な癖してすぐに姿を現さない涙。
この歌詞はそれを的確に表現している。
涙を”心の最先端”と表現するところに作者の感性が出ていてお気に入りの歌詞だ。
この歌詞の続きは
となっている。
このモラトリアムかつ世間への批判を孕んでいるとも言える歌詞がたまらなく好きだ。
本当にタバコの煙のせいだったのか、はたまた自然と込み上げてきたものなのか、それは作者しか分からない。そこも含め、言葉の操り方にいつも脱帽する。
彼が書く歌詞は内省的なものが多い。
J-POPド真ん中ではなく哲学的で風刺的な詩を書く。
そこで彼の父親が以前言っていた言葉思い出す。
言えて妙だなあ、と当時感じたのを今でも覚えている。これは私にとって音楽を聴く一つの指標になった。
確かに彼らが創りだす音楽に娯楽的な要素は少ない。
ミュージシャンとして食べていくには娯楽的な音楽が必要なことも重々承知している。しかし、一時のブームでなく5年10年と評価される音楽は文化的なものだろう。
彼らが創りだしている音楽はそういったものなのだ。
その分、自身をすり減らす部分も大きいと思うが、現に私は10年以上前の彼らの曲を毎日聴いては、共感したりハッとさせられたりしている。
私は今まで瞬間の感情を残すために詩を書いてきたが、もっと内省的な詩を書きたいと彼らの音楽を聴く度に感じる。
2007年に書かれたこの曲の歌詞は今の私にも響いた。作者の感性はとても鋭く、いつも時代の先を進んでいる。それは内省的な詩を書くにあたって世の中をきちんと観察しているからだろう。
研ぎ澄まされた感性は時に彼自身に牙を向ける。
しかし、これからもその感性で紡がれる言葉が楽しみで仕方ない。
2024.06.07. 森野
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