経営コンサルと戦略コンサル
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経営コンサルと戦略コンサル

(この記事は、先日のツイートをベースにまとめなおしをしたものです)

定義

今回のメモに関する前提として、戦略と経営という二つの言葉をぼく自身がどう定義しているか、まずは簡単に書いておきます。

戦略:持続的に競争優位性を構築し利益を出し続けるための、組織のリソース調達と投下に関する方針。なお、戦略立案とは、その方針を作ったり修正したりする仕事。

経営(する):組織のビジョンやゴールを達成するために、やるべきときにやるべきことをやる

すごくざっくりした定義ではありますが、これらの定義があった方が以下の議論がスムーズかなと思ったので、最初に書きました。

さて、それでは本論へ。

戦略と経営の関係

ぼく自身、コンサルティング会社からいわゆる「事業会社」に転職し、更にその会社で経営に関与する中で、以下のように考えるようになりました。

その組織・会社をどのように経営すべきかは、たしかに戦略に依存する。(もっというと、ビジョンやゴールにより依存する
しかし、戦略を考えたり立案したりする時間/仕事は、経営という仕事の中のごく一部に過ぎない。
会社のフェーズや経営者の経営スタイルにもよるが、実際に経営者が使える時間のうち、戦略の立案や構想に使える時間は半分もない。

実際、マイケル・ポーターとニティン・ノーリアの論文『How CEOs Manage Time』(2018年、日本語版はこちら)では、「調査に協力した大企業のCEO27名が実際に戦略について使っていた時間は、全業務時間の21%にとどまる」と報告されています。

つまり、経営という「やるべきこと」のうちの8割は戦略以外のことである、というのがこのレポートを読んでのぼくの理解なのですが、これは自分の実感とも割と合致しています。

なお、戦略について時間を使うというのは、つまりは「戦略を立案したり修正したりする仕事」に時間を使うことですので、より簡潔に言えばこれは「計画する仕事」だと言えます。

一方でそれ以外、つまりその他の8割は「(そこで立てた計画を、計画通りに)実行する仕事」であると言えます。結局CEOといえども「実行する仕事」が業務全体の8割になるということです。

もちろんCEOですので、メンバーに方針を伝えたり、実行の進捗を確認したり、必要に応じて緊急事態に対応したりというのが、ここで言う「実行」になります。

(なお、議論をシンプルにするためにプランニング・スクール的なビューを採用していますが、ご容赦頂ければ)

戦略コンサルティングと経営コンサルティング

上記のような理解であるために、ぼくは戦略コンサルティングと経営コンサルティングを、まったく別のもの/違うものとして考えています。

やや繰り返しになりますが、戦略コンサルティングは、その提案を通じて事業の持続可能な競争優位性の構築を目指す計画や方針の策定の仕事であり、CEOの時間の2割を占める「計画」にかかわる仕事、と言えます。

戦略コンサルティングの仕事を上記のように捉えるのであれば、一方の経営コンサルティングは、敢えて「実行にかかわるコンサルティング」と定義した方が分かりやすいかなと考えています。

なお、本来は「やるべきことをやる」が経営の定義ですので、経営は戦略立案を含むという論理関係(包含関係)になります。つまり、「広義の経営コンサルティング=計画も実行も含む経営全てに関わるコンサルティング」であるわけですが、これだと概念操作にやや難がありますし、両者に関する理解が深まりません。

そこで

狭義の経営コンサルティング
=計画以外(=戦略以外)の「実行」にかかわるコンサルティング

と定義したいと思います。こうすると理解・議論が進むので、以下で経営コンサルティングと言うときは、こちらの狭義の経営コンサルティングの方を指すことにします。

狭義の経営コンサルティングの仕事とは、したがって、「ヒト・モノ・カネ等の経営資源を組織として上手く使い、計画を実現すべく実行を促進する仕事」ということになります。

ここまでずっと定義と分類みたいな話を長々としてきました。なかなか分かりにくい部分もあるかと思いましたので、以下に図示し整理します。理解の助けになれば幸いです。

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経営に関する個人的経験(どう学んできたか)

5年以上前という前提だけ置かせて頂きますが、ぼく自身二つの戦略コンサルティングファームで働きましたが、実は経営コンサルティングのプロジェクトを経験することがほとんどありませんでした。

ぼくの(狭義の)経営コンサルティングのイメージは、管理会計とか営業管理とか人事制度とか、そういう「仕組み」を作るものなのですが、そうしたプロジェクトの経験を積む機会はありませんでした。

また、世間一般で言われる「実行支援」というタイプのコンサルティングも、この(狭義の)経営コンサルティングに分類されるのかなと思いますが、実行支援プロジェクトも、正直なところ経験がありません。

ぼく自身が特殊なケースなのかもしれません。けれど、もし戦略コンサルタントというキャリアを通じた経験がこのように「戦略の立案」に偏ると、「どのような経営がすばらしい経営か」「どうすれば/どのような仕組みを作れば、すばらしい経営ができるか」について、理解を深めたり、経験を積んだりすることが、意外とできないということは言えるように思います。

ちなみに、ぼく自身の話ですが、「戦略以外」については、過去に自分が経営した事業会社2社(どちらもスタートアップ的な会社)での経験をベースに力を付けてきたと思っています。

当時実際にぼくがリードした営業管理の仕組みづくり、人事制度づくり、管理会計の仕組みづくり(と各部門責任者のKPI・インセンティブ設計)などの「経営の仕組みづくりの経験」が、いまの経営のバックボーンとなっている、という意味です。

ちなみに、2つのコンサルティング会社を、コンサルティング事業を営む事業会社と捉え、それがどう経営されているか中から観察した経験は、いまの経営にとても活きています。

単にコンサルティング会社に所属して目の前のプロジェクトを回すのではなく、それに加えて、この会社がどういうKPIで動いているか、この上司はファームからどういう風にパフォーマンスを測られているかなどにも関心を持ちながら働くのがオススメです。笑。

(なお余談ですが、経営コンサルティングの経験は無いと言いましたが、実際の2社の経営経験と戦略コンサルタントとして培ったコンサルティングスキルの組み合わせで、今では経営コンサルティングもそれ相応のレベルで出来る、と自負しています)

話を本題に戻しますが、戦略コンサルティングという「計画立案」の仕事しか経験がないと、意外と(クライアントの)会社がどう経営されているかは見えません。CEOの時間の2割に関わる形なので、残りの8割がどうなっているかなかなか分からないというのが実情かと思います。(「分からない」と言わないのが戦略コンサルタントの仕事なので、あまり正直には言わないとも思いますが。笑。)

もちろん、戦略コンサルティング会社の中にも(狭義の)経営コンサルティングのプロジェクトもあるので、一概に「戦略コンサルティング会社出身者は経営(≒実行)を意外と分かっていない」と言うつもりはありません。

しかし、少なくとも、(狭義の)経営コンサルティングのプロジェクトを経験したことがなかったぼく自身に限って言えば、(戦略)コンサルティング会社を辞めるタイミングでは経営をまるで分かっていなかったと言っていいかと思います(苦笑)。

例えば、しっかりとしたインセンティブ設計や管理会計制度(≒実行のための仕組みづくり)が、いかに組織とそのメンバーの行動を変えるかについて、実感を持っては理解していませんでした。そして、基本的なことと思われがちな「ちゃんと目的に向かって動く仕組みづくり」がいかに難しいかについても、当時は分かっていませんでした。

恥ずかしながら戦略コンサルタントをしていた時は、戦略が実行されない原因は、現場のケイパビリティに関する立案者側の理解不足や、戦略に関する現場の理解醸成の不足にあると思っていました。

もちろんそういう側面がないとは言いません。でも、今では各種の制度・仕組みを変えたり、実行の責任者(トップ)のインセンティブとアラインする形にしたり、、、などの方が、インパクトが断然大きい(≒実行を担保しやすい)と考えています。

ちなみに、ぼく自身はトップが本当にやりたいと思っている戦略が実行されないということはないと思っている派です。(組織に関する理解が浅いですかね・・・)

余談ですが、例えばGAFAMやP&G、少し前ならGE、国内ならリクルートなどでの勤務経験を、ぼくはとても羨ましいなと思います。それは「ベストプラクティスと呼ばれるような企業が、どのように経営されているか」を(ちゃんと意識していれば)ある程度は知ることができるからです。

ぼく自身はそういう会社で働いたことがないので、GAFAMなどで働いた友人たちに色々と話を聞き、いつも勉強をさせてもらっています。笑。

経営者に関する理解について

少し話の角度は変わるのですが、戦略の実行において、もしくは提案を本当の意味で受け入れてもらう上で大切なことについて、最後に書いておきたいと思います。

それは、目の前にいる経営者が「やりたいこと」「やりたくないこと」「やらなければならないと圧力をかけられていること」などをちゃんと見極める、ということです。

例えば、「やらなければいけないこと」としての株式市場からの評価について。上場企業であれば、経営者は必ず「市場からの評価を上げないといけない」という意識は、必ずもっています。

少し前に投資銀行の方が「コンサルの仕事を横から眺めていると、上場企業クライアントと議論するときはもう少し『株式市場からの見られ方・評価』みたいなアングルを入れた方が良くない?と思ったりする」とTwitterに書いていました。

これは本当におっしゃる通りで、経営者自身が気にしている点(自分がどう評価されるか)まで視野に入れて提案をできるコンサルタント(ここまで来るとパートナーの仕事)は日本でもごく一部なんじゃないかと思います。逆にこれができているコンサルタントは本当に一流だなとも思います。

また、「いやあ、あの提案してくれた戦略なのだけど、現場からの反発が強くてなかなか動けなくてね」みたいな発言をクライアントの社長がしたとしても、それを鵜吞みにしてはいけません。もちろん本音で言っていることもありますが、そもそもその社長自身がその戦略を実行したいと思っていない、みたいなことはよくあります。

最近は、自分自身が小さな会社を経営するという立場になり、周りに経営者が増えました。また、中堅企業の子会社の代表、スタートアップの雇われ経営者(代表取締役ではあるけど株式の持ち分は僅少という立場)、自分が100%株式を持つ創業社長という3つの立場の「経営者」を経験したことで、「経営者が何を気にするか/どういうインセンティブが働いているか」についての理解も深まったなとは思います。

それでもぼく自身は、「経営者」という人種がどういう人なのかについて、まだまだ学びの途上だなと思います。「経営者」については本当にいろんな立場があります。

例えば、ここまで株式会社の話を中心にしていましたが、NPO法人の理事長はまた全く異なる「気の配り方」をしています。これはガバナンスの在り方が根本的に違うためです。

株式会社だったとしても、例えばサッカーチームみたいな「半公益的」で「お金を支払う人たちのアイデンティティに関わるサービス」だと、(株主も大事ですが)ファン・サポーターのことも大いに気を配る必要があります。

自分自身の場合でも、外部から資本を入れたら経営に関する「考え方」や「気を遣うポイント」は当然変わるんだろうなと思っています。

全てを理解することはできないのかなと思いますが、色々な人の話を聞き、想像をめぐらすことで理解を深めるというのを今後も続けていきたいと思っています。

最後がだいぶまとまりのない形になりましたが、ただの殴り書きメモにしてはとても長くなってしまったので、このへんで。

ちなみに、上で紹介した「How CEOs Manage Time」は結構面白いのでオススメです。サクッとデータ見るだけでも色々分かります。

この論文からの着想で「なぜ戦略コンサルタントが、その会社のことを熟知している経営者からも評価されるような戦略を描けるのか」という問いに一つの考え方を示したこちらのnote「なぜ社外のコンサルが戦略を作れるのか」もあわせてご覧いただけると嬉しいです。


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株式会社ソシエテ代表。「コモレビ」というメンタルケアサービスとコンサルティングサービスを提供しています。 東京大学教養学部卒。