仮説立案としての事業計画書

はじめに

前回は新規事業のステップ4である「ブラッシュアップ」について投稿しました。
今回は新規事業のステップ5である「仮説立案」の方法について説明していきます。

事業計画書としてまとめる

アイデアのブラッシュアップまで完了したら、次は事業計画書としてまとめて行きます。
ただし、現時点では仮説検証前の段階のため、完成版の事業計画書では無く、事業計画書のドラフトというイメージです。
そのため、仮説検証が実施出来るぐらいの粗いレベル感の内容としてまとまっていれば大丈夫です。
なので、大企業の中では、「企画書」という表現の方が、イメージとしては近しいかもしれません。
事業計画書を誰に見せるのか?で、書く内容は変化しますが、以下の内容を全て書ければ誰にでも見せられる事業計画書となります。
①会社概要
②経営者・事業責任者略歴
③創業の動機・新規事業に取り組む動機・事業のビジョン
④事業概要
⑤事業環境・市場規模
⑥特徴・優位性・シナジー
⑦ビジネスモデル
⑧営業・マーケティング戦略
⑨事業推進体制
⑩財務計画
⑪事業リスクとその対応(コンティンジェンシープランや、撤退プラン等)

提出先ごとの記載内容としては、基本的に以下の表の様になります。
ただし、役員や同僚によって、気にするポイントがバラバラなため、適宜カスタマイズする必要があります。
特に役員の場合は、AさんとBさんで気にするポイントが全く異なったり、同じAさんでも気分によって言うことが変わったりするため、とても苦労します…

スライド1

①~⑪の中で財務計画と体制以外については、ブラッシュアップまでの中である程度検討出来ていると思います。
そのため、今回の仮説立案の中では、事業推進体制と財務計画について少しご説明します。

事業推進体制

以下の様な体制図として事業計画書に記載しましょう。

スライド2

上図の略語の意味はそれぞれ、以下の通りです。
・CEO=Chief Executive Officer(会社法で言う、指名委員会等設置会社における取締役(または、表見代表取締役)に近い役職です。)
・COO=Chief Operating Officer(指名委員会等設置会社における代表執行役に近い役職です。)
・CMO=Chief Marketing Officer(指名委員会等設置会社における執行役に近い役職です。)
・CTO=Chief Technology Officer(指名委員会等設置会社における執行役に近い役職です。)
・CIO=Chief Innovation Officer(指名委員会等設置会社における執行役に近い役職です。)
・CIPO=Chief Intellectual Property Office(指名委員会等設置会社における執行役に近い役職です。)
・CS=Customer Success

具体的な役割や体制等は、ビジネスに応じて異なるため、ビジネスに最適な体制を検討する必要があります。
ただし、ビジネスに最適な体制や実態に近い体制でも、以下の様な、ティール型/スター型/ギルド型の体制図を事業計画書に記載するのは、控えた方が良いです。
なぜなら、資金提供者(ベンチャーキャピタル、金融機関、役員等)が、誰とコミュニケーションを取れば良いのか分かりにくいためです。

スライド3

財務計画(収支計画)

会計に強い人はここが一番の得意領域だと思います。
一方で、多くの人が会計に苦手意識があると思います。
そこで、少し具体的にご説明します。

予測PL

基本的な損益計算書が、事業計画書に記載する財務計画となります。
ただし、基本的な損益計算書と異なり、「売上の内訳」、「売上原価の内訳(≒製造原価報告書)」、「人員計画」も記載すると良いです。
まず、売上の内訳は、単価×数量が基本となります。
上の損益計算書では、「単価」と「1年間の延べ利用・購入人数」の部分となります。
特にサブスク系のビジネスを検討する場合は、新規利用者、継続利用者、解約者が発生するため、1年間の損益計算書での表現を「延べ利用人数」とすることが重要です。
次に、売上原価の内訳は、材料費+労務費+経費+製造間接費が基本となります。
ただし、スタートアップや、会社内部で新規事業を推進する場合、家賃や水道光熱費等を製造間接費と一般管理費に分割するのは難しいと思います。
そのため、製造間接費を省略して、一般管理費に一本化しても良いです。
上の損益計算書では、「原材料費」「外注費」「サーバー費」「労務費」「減価償却費」の部分となり、製造間接費を省略しています。
最後に、人員計画は、期中での採用となることが多いため、一人の単価×月数の総和となります。(数式で表すとΣUN×MNとなります。なお、Nは従業員となります。)
そのため、上の損益計算書では、「(平均)単価」と「人×月数」として表現しています。
なお、1枚に纏めるのが大変という場合は、「損益計算書」+「売上明細書」+「製造原価報告書」+「人員計画」という4枚の資料に分割して作成しても大丈夫です。

また、銀行等の金融機関に事業計画書を提出して融資を受ける場合は、予測キャッシュフロー表も作成して提出すると印象が良くなります。

予測CF

ただし、キャッシュフロー計算書を作成するのは、ハードルが高いと思います。
そこで、以下の様な簡素化した資金繰り表で代用することも可能です。

資金繰り表

まとめ

今回は、仮説立案の方法として事業計画書をご紹介しました。
事業計画書としてまとめることで、以下の点を確認出来る様になります。
・事業として目指すべき方向性
・事業全体の整合性
・お金が集まるか否か
⇒金融機関・ベンチャーキャピタル・自社等から評価を得て出資・融資を受けられるか?
 ⇒お金では無いが、材料等を提供(現物出資)してくれる企業が現れるか?
・人が集まるか否か
⇒一緒に事業を推進して貰える仲間が集まるか?
⇒事業に共感して貰えるファンが集まるか?

事業計画書としてまとめたことで、色々と確認出来る準備は出来たけど、どの様に確認して行けば良いか?と悩まれると思います。
そこで、次回は新規事業のステップ6の「仮説検証」の方法をご紹介します。
また、上手く仮説立案が出来ないという場合は、私たちにお気軽にご相談下さい。
多くの事業計画書を書いてきた経験から、色々なアドバイスを行ったり、仮説立案のお手伝いを行ったり出来ます。

著:NS.CPA森本 晃弘

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