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『十年後の恋』恋と愛のはざまで乱れる大人のための恋の処方箋


本日は辻仁成さんの『十年後の恋』という恋愛小説をご紹介します。

最近、インスタのDMでフォロワーさんの人生相談を受けることも増えてきました。

ご本人の許可を得て、相談内容をご紹介。
本を処方箋としてお届けしていきます。

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ご相談者さんは、離婚のご経験もあり。
SNSでのやりとりで、海外の方との恋を育んでいます。

「恋に効く本を教えてください!」とリクエストを頂いたので、辻仁成さんの最新小説がピッタリかもしれない!と思いました。

この主人公のマリエも、子どもが2人いるシングルマザー。

映画の仕事はキャリアも順調。
来年のカンヌに向けて、懇意にしている監督とタッグを組み新作の映画を撮っていました。

プライベートでは2人の子育てと仕事の両立で、恋なんかしている暇もないまま、気づいたら離婚して10年が経とうとしていました。

元夫が許せなくて、男性を信じることができなくなっていたマリエ。

そんなときに、アンリという謎多き年上の男性が気になり始め、ある日恋に落ちたのだと気づきます。

アンリは多くを語らない。
言い訳もしない。

どこからが本当でどこまでが嘘なのかはっきりしない。
マリエは猜疑心でいっぱいになり、相手を信じ切れません。

さて、アンリは稀代の詐欺師なのか?
本当に信じてもいいの?

眠っていた女心が疼き、熱病のような恋によって冷静さが剥ぎ取られていく。

マリエの心は散り散りに乱れ、傷を負っていきます。

さらに、コロナ禍。
2人の行く末はいったいどうなる?

辻仁成さんでなければ書けない、大人のための上質な恋愛小説です。

さて、恋と愛の境界線ってどこにあるのでしょうか。
引用してみます。



"フランス語ではAmour 1つしか存在しないのに、なぜ、日本語には愛と恋が存在するのか、私は子供の頃に父と母に訊いたことがあった。

この2つはとかく混同されがちだけれど、愛は自分本位の放棄で、恋は相手次第なものを指す、とまず父が言った。

「恋は一時的な自己喪失状態を指し、愛は永遠なる自己中心主義の喪失を指す。

もし、愛だと思っていたものが壊れて夫婦が別れたとする。

それは信じていたものが愛ではなく恋だったというだけのことだ」と父は名言を残している。

なるほど、と私はジャン=ユーグ(注:元夫)のことを想いながら納得をする。

「ときめくものが恋で、信頼に裏打ちされたものが愛。

心配で仕方ないものが恋で、安心はすべて愛よ」と母
も母らしい言葉を残した。(P282)"



そして、マリエのアンリへの想いとは?




"私はアンリのことを考えていた。
愛しているよ、と言ったアンリの言葉が耳奥から離れなかった。

結局、愛とは何だろう、と私は考えた。
私は初心に返る必要があった。

私がアンリに求めたのは愛ではなく、もう一度言おう、それは恋だった。

結婚はそもそも恋じゃない。
家庭を作りお互いを約束で縛るのは愛であって、恋じゃない。
辞書によると、恋は落ちるものだ。

私が当初彼に求めたところに立ち戻ればいいだけのことじゃないか?

未来や生活のことを考えるのは間違いで、私は恋する自分が必要だったのだ、と思い出していた。(P284)"


恋や愛に悩む方の処方箋になったら幸いです。
映画のような恋愛小説に、切なさの嵐。

バレンタインの一冊にぜひ!






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