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一気読み間違いなし!お金にまつわる人生劇場『老後の資金がありません』

本日は、垣谷美雨さんの『老後の資金がありません』をご紹介します。

この本はタイトルからずっと気になっていたのですが、読み始めた途端、あまりの面白さとテンポの良さに、思わず一気読みしてしまいました。

一気読み間違いなし!お金にまつわる人生劇場『老後の資金がありません』

「お金」にまつわるあれこれは、誰にとっても関心ごとのド真ん中にありながら、人前だとついお茶を濁してしまいがちな話題でもありますよね。

お金の話題には、なんとなく触れてはいけない空気が漂う世の中で、そのものズバリなタイトルに「うっ」と呻いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「老後の資金」が心配な方はもちろん、お金の勉強をこれから始めようとしている方も、ぜひ本作を読んでみてください。

読んで損はないと思います!

思わず財布の紐を締めたくなる

主人公の篤子という50歳の主婦が、家族に関わるお金のやりくりに翻弄されていく物語です。

読者のみなさんも、自分ごとのようにのめり込んでいってしまうでしょう。

読み進めていくうちに、教育費、生活費、介護、冠婚葬祭にかかる費用、自分自身の老後の資金まで、一生のうちで特にお金がかかるライフイベントを一通り見渡すことができてしまうところに、この小説のすごさがあります。

小説だからこその可笑しみにも満ちていて、まるで人生劇場そのもの。

生きていく上で避けては通ることができない「お金についてのあるある」も満載で、身につまされました。

お金が絡むと、これまで見えなかった人間の本性も浮き彫りになってきたりするものだから面白い。

お金にあぐらをかいてきた人と、爪に火を点すように生きてきた人では、果たして最終的にはどちらが幸せになるのか?

いつの間にか自分の生き方とも照らし合わせながら読んでいることに気づいて、財布の紐を引き締めたくなるかもしれません。

お金の懐事情には誰にも言えない秘密アリ

お金のことって、仲の良い友人であっても、詳細な話をすることが憚られるものですよね。その理由を、本を読みながら考えてみました。

もし人間関係の中で、おのおのの懐事情をつまびらかにしてしまえば、無意識にではあっても、お互いの立場のマウントをとってしまいかねない。

その後の関係性にも何らかの影響を与えるのは避けられないでしょう。

ギクシャクしないためにも、お金の核心はオブラートに包み、あまり触れないでおくというのが円滑なコミュニケーションのための秘訣なのかもしれません。

篤子が通うフラワーアレンジメントの講師も、誰もが羨むよう華やかな暮らしをしているかのように思われていたのに、人知れずある事情を抱えて悩んでいたことがわかります。

フラワーアレンジメント教室の友人のサツキとは何でも話せる間柄で、篤子はお金の使い方が堅実なサツキに一目置いていました。

彼女がどんな人物かというのはわかっていたつもり、だったかもしれません。

しかし、あとになって、サツキにはお金にまつわる驚くような秘密があることが判明します。

また、篤子の夫の実家は浅草で明治時代から「和栗堂」という和菓子屋を営んでいましたが、舅が70歳になり店を畳み、浅草の土地を二億円で売り払います。

九十九里に住んでいる娘夫婦の近くへ引っ越したあとは、悠々自適に豪遊したり豪奢なケアマンションに入居します。

挙句、お金は見事にスッカラカンに。

両親を気にかけていた義妹の志々子も、しっかりしているように見えて、実は身内のお金には甘かったりもします。

「人は見かけによらない」という言葉があるように、お金の問題が絡むと、こんなにもスルリと人間の本性が顔を出すんだなぁ、という皮肉も感じました。

物語を盛り上げる意外な人物

娘の結婚費用や舅の葬式費用も負担して、挙句の果てには、姑を引き取ることになった篤子夫婦。

老後の資金はどんどん目減りしていくばかりで不安は雪だるましきに増えていきます。
窮地に陥っていく篤子たち夫婦の老後の資金はいったいどうなっていくのか?

姑は商売をやめてからは、精彩を欠いているかのようにぼんやりと存在感がなく映ります。

しかし、篤子たちが姑を引き取って、自分のことは自分でやるように伝えると、まるで自分を取り戻していくかのように、イキイキとしてくるのです。

それからの怒涛の展開は目を見張りました。
姑の意外すぎる暗躍がストーリーを盛り上げていき、目が離せなくなります。

え、おばあちゃん!カッコいい女性だったんだ!

商売人の血が騒ぐのか、黙っていられないとばかりに、相手とキビキビと闇取引をする交渉術の巧みさには舌を巻きます。

突然のハードボイルドに心拍数も上がってしまいました。

お金の価値観って、まさに個性。

お金の使い方は生き方そのものと言っても過言ではないのかもしれません。
最期まで人間味あふれる物語で、読了後は爽快感も得られました。

もっと早く読んでおけば良かったと思える作品でした。
おすすめです!

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