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原田マハさん『リボルバー』美術初心者でも楽しめる中毒性のあるミステリー!ゴッホとゴーギャンの謎とは?

本日は、原田マハさんの『リボルバー』をご紹介します。

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私は美術には疎くて、お恥ずかしながら原田マハさんも何作かしか読めていない初心者のレベルです。

そんな私だからこそ、素直な感想を語れるかもしれません。

まず書店で目を引いたのは、有名な名画、ゴッホのひまわりの表紙です。
名画とマハさんの新作の重みがズシリと感じられて、レジに持っていく途中はドキドキするような高揚感に包まれました。

家でおもむろにカバーを外してみると、「肘掛け椅子のひまわり」という絵画が出てきたので、「おおっ!」とさらに嬉しくなりました。

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物語に魅了されたことは言うまでもありません。
読書中にあまりに入り込みすぎて周りの音が聴こえなくなるほどでした。

普段あまり感じられない、不思議な感覚でした。

ゴッホとゴーギャンの関係性も本作で初めて知ったぐらいですが、そんな私でも2人の関係性についてうんちくを語りたくなるほど、小説で知識が得られるということが嬉しかったです。

というか、「え?これ何?実話?」と思わされてしまって、正直今も狐につままれている気分です。

ミステリーとしての要素を取り入れながら、読む者を魅了させる中毒性の高い小説となっています!

「リボルバー」はどんな物語なのか

フィンセント・ファン・ゴッホとポール・ゴーギャンという2人の画家は、生い立ちこそ違えど、まるで双子のように共通点も多かったと言います。

タイトルにもなっている、ゴッホが自殺を遂げるのに使われたという錆ついた「リボルバー」が、主人公の高遠冴の勤務するオークションハウスに持ち込まれました。

持ち込んだ人物は、マダム・サラ。
彼女は言いました。

「1890年7月27日、オーヴェール=シュル=オワーズ村で、ファン・ゴッホの腹部を撃ち抜いたピストルです」(p47)

冴は絵画(タブロー)の専門家であり、19世紀フランス絵画が専門で、ゴッホとゴーギャンをテーマにいずれ博士論文に挑戦しようとしていました。

そんな彼女のもとに届けられた、リボルバーの秘密を追ううちに、物語は大きくうねり始めるのです!

ここからが、物語の第二部と言えるかもしれません。
原田マハさんの真骨頂。
いやはや、驚嘆。

サラの追想が、冴に語られるという形式をとっていきます。

彼女の幼い記憶から始まります。

サラの母親は「子どものための絵画教室」の先生をしていたこともあって、彼女は幼少から絵を描くわくわくとした気持ちを大事にしてきました。

物心ついた頃から母に連れられ、美術館に頻繁に出かけるようになります。

やがて、サラはゴッホの絵画に夢中になっていきます。
伝記や評伝を読み、ゴッホの絵を模写するほどの惚れこみようでした。

そんな時に母エレナから、ゴーギャンについてどう思うかと尋ねられます。

数日後、自宅に飾られた1枚の絵を見て息を呑むサラ。
この絵はポール・ゴーギャンによるものだと直感で理解します。

しかし、その絵に描かれている女性は、なぜか母に似ているような・・・?

母エレナは言いました。

"この絵を描いた画家の名前は、ポール・ゴーギャン。
そして、この柄の中の女の人は、私のおばあちゃんよ。"(p190)

しかしこの絵はサラが25歳の時に盗難に遭い、母は失意の底へと沈みます。

絵画への再会も叶わぬまま、エレナは94歳になります。
そうして時を経て病床で娘へ語られた母の独白は、恐るべき事実なのでした。

サラのひいおばあちゃんは、ポール・ゴーギャンの・・・。

そして、エレナが語る、エレナの母ヴァエホの追想へと移ります。
さらにヴァエホの告白へと場面は移り、物語の核心はゴーギャンの独白へ。

私たち読者はサラの口述から、サラ自身の生い立ち、母エレナから伝え聞いた彼女自身の人生、そしてエレナの母ヴァエホ(つまりサラの祖母)の告白から、ゴーギャン自身が語っているかのような秘密へ、私たちをまるで映像を見せられているような静謐な世界へといざなっていきます。

彼女たちの記憶をたゆたいながら、ゴーギャンとゴッホの関係が炙り出されていくわけです。

私が回りの音が聞こえなくなるほど、物語へとトリップしたのはこの核心部を読んでいるときだったのです。

ゴーギャンの視点で描かれていく、ゴッホの天才的で孤高な人物像や、ゴーギャンのゴッホへ感じる苛立ちとジレンマ。

2人を支えるゴッホの弟テオ。

そうして、リボルバーの真実が徐々に明らかになっていき、冴のいる現代に戻り伏線回収。

これもまた見事でした!

私は読み終わってしばし呆然としながら、思い出すと後からぶわーっと鳥肌が立つような読後感でした。

小説の文章を追ってくうちにいつの間にか、色彩鮮やかな「ひまわり」を脳内に咲かせているような体験に包まれるでしょう。

ゴーギャンのタヒチの乙女達のタブローなども、若い肌のエロスや瑞々しさが文字から浮かび上がってきて、ゾクゾクきました。

これからゴッホとゴーギャンの絵画や史実をさらに知っていきたいと思います。

原田マハさんの芸術に関する小説も少しずつ読んで、美術に向き合う時間も持ちたいです。

原田マハさんの芸術に関する小説を読むのを躊躇している方は、まず最新作の『リボルバー』から読んでみるといいでしょう。

私も美術もマハさんの芸術小説もゼロ知識から読んで、ここまでの感動に到達できました。

何の先入観もいりません。
まっさらなレベルで挑んでみても大丈夫です。

本作は、間違いなくあなたの世界を広げてくれることは間違いありません。










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