金持ちジュリエット
いったいなんだって夫のPCのパスワードが金持ちジュリエットなのだろう。
それにも増してどうやって私はそれを解くことができたのだろう。
確かにこれだと閃いた記憶はある。
画面が開いた驚きで吹っ飛んでしまったのだ。
しかし問題はそんなことではない。パスワードだ。
ジュリエットってなに?
大方いかがわしいお店か何かだ。
だが待て、さっき開いたとき私ちょっと感動してなかったか?
そういえば、高校の演劇部で私がジュリエット役を射止めたとき、彼に演技を見てもらっていたのだ。
金持ちに見えるようにやったらと、確かそんなことを言われ、それを合言葉にしていた記憶を思い出した。
そうか、金持ちジュリエットは私だ。
…そうそう、それで入力してみたら開いたのだ。
おもいだしたおもいだした。
写真ファイルに収められたジュリエットたちの数を数えながら私は彼の帰りを待っている。
現在進行中のものは二人。
ロミオは抹殺され、ジュリエットの私は金持ちになるだろう。
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