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最高レベル
レベルを上げれば攻略が楽になる。他者に対して優越感を得られる。勝利を得られる。注目される。
ということで、レベルを最高まで上げた。
でも最高レベルの人たちがすでに五万人いた。
なんで五万と分かるのかというと、五万番というバッチをもらったから。
僕にバッチをくれたのは、千三百二十一番の人で、彼が言うには、僕の担当が彼らしい。
つまり、基本的に番号の若い順の者が、下の者を優先的に配下に加えられるらしい。
その千三百二十一番も、百二十二番の配下ということだ。
僕は彼からデッキブラシとバケツを渡され、彼の部屋の掃除を言い渡された。
そんなの今まで倒してきたモンスターにやらせればいい。街の人にお金を払うなりしてもいいだろう。
でも違うのだ。彼らは最高レベルではない人のためのものなのだ。
ちょうど少し前まで、レベル上げをしていた僕のような人のための。
それにモンスターや町の人をあわせたって、最高レベルの人たちの数には敵わない。
今や僕らのこの世界での価値は、最初の村で出会うモンスターより低い。
結局僕は掃除道具を手に取った。
もちろん、負けを認めたわけではない。
仕事ぶりを認められたり、最高レベルの人たちの間だけで通用するお金を集めたりすれば、十分出世の道もひらけている。
好きな職業にだってなれる。
それに上の者たちは、引退したりもする。
そういう上下動にうまく乗れば、出世の波に乗れるとのことだ。
家の窓ふきなんかをしていると、レベルの低い者たちが、楽しそうにさっき受けた仕事のことや、新しく覚えた魔法のことなんかを話しながら通り過ぎていく。
それから何日かしたあと、街に巨大な隕石がいくつも降って来た。
僕がいる街は跡形もなくなってしまった。
残ったのは僕を始めとした最高レベルの人たちだけ。
どうやら、その中の一人が放った魔法だったらしい。
「ラスボスは素早く保護され、傷ついた街周辺のモンスターは治療を受けた」
と、千三百二十一番。
「どうしてこんなことが?」
僕は尋ねる。
でも彼はそれに何も答えなかった。
僕も聞き返したりはしなかった。
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