孤独さんとプカプカ

孤独さんはプカプカ浮かんでいた。
独りは寂しいから、誰かに憑こうと思った。
プカプカ浮かびながら、彷徨っていると、欠伸をしている女の子がいた。
あの子にしよう。
孤独さんは、すっとその子の頭に降りた。
するとその子が「あれ?なんか私一人だ!寂しい」と言った。
孤独さんは「私がいるよ」と叫んだが、その子には聞こえなかった。
その子は突然スマホをいじりはじめて誰かに電話をかけた。
「もしもし、うん、なんか急に心細くなって」
その子が誰かとつながった瞬間に孤独さんはぱっと頭から離れてしまった。
孤独さんが離れたのか、離されたのか。
それは孤独さん自身にも分からなかった。
そして孤独さんはまた独りでホンを読んでいる子を見つけた。
今度はあの子にしよう。
すっとその子の頭に降りた。
女の子は何も言わずに本を読み続けていた。
「こんにちは」
孤独さんは呟いたが、その子には聞こえなかった。
だけど誰かと一緒にいるだけで、少しだけ救われた気がした。
この子が読んでいる本は何だろう。
孤独さんは、そっと意識を本に向けた。
本の中身は白紙だった。
この子は白紙の本を読んでいた。
何もない空間の中に一体何を見ているのだろう。
孤独さんは不思議に思った。
そして孤独さんはホンの少しだけ意識をその子の心に向けた。
一瞬どこまでも広がる夜空が浮かんだ。
星が瞬き、どこまでも暗闇と光が広がる世界が見えた。
そしてイメージの世界で女の子は手を広げ何かを待っていた。
それは光なのか闇なのか。
白い紙の中に無限のイメージを思い浮かべている。
孤独さんはちょっとだけ女の子がうらやましかった。
私には何にもない。
けれどもホンの少しだけその子のことを思うことで自分が救われたことが孤独さんは嬉しかった。
「ありがとう」
届かない声を伝えて孤独さんはまたプカプカ。
届かない想いを誰かに届けるためにまたプカプカ揺らぐ。

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