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わたしの仕事は「だれのために」を考えることからはじまる #PRLT

「この仕事に関わる”意味”を出せているのか」

仕事で自分に問いかけていることの1つだ。20代の後半で伊賀泰代さんの「採用基準」を読んで、かなり感化された。

本書によると、マッキンゼーでは「バリューを出せているか」がつねに求められる。たとえば「会議で発言ゼロの人はバリューゼロ」、だから「その意見に賛成だ」とスタンスを表明するだけでも、発言ゼロよりは意味があるのだ。

それまでは会議や打ち合わせの規模が4人以上になったり、エラい人との対話ではあまり自分の意見を伝えることができなかったわたしも、感化されて殻をうちやぶることができた。イベントや勉強会に参加したら、いの一番に質問することもできるようになった。

自分の仕事に当てはめて考えてみると……。

わたしはnoteを運営する会社で、広報・PRの役割を担っている。

広報・PRを英語で書くと「Public Relations」。そう、ステークホルダーとの関係構築が仕事で、油断するとただの仲介役になりかねない。でもそれでは自分の介在価値が1ミリも発揮されていない。そんなのつまらないじゃないか!この記事はそんな叫びから、書きはじめた。

書いてみたら、大事にしていることの軸には「だれのため」があると気がついた。仕事でひとの意見に振りまわされがち。がんばったつもりなのに、イマイチ評価されない。仕事のやり方がワンパターンになりがち。そんな方に読んでもらえると、参考になるかもしれない。

この記事は【広報LT大会(Lightning Text) #PRLT Advent Calendar 2019】の第9日目(12月9日分)にエントリーしています!


だれのための仕事?

いつも大切にしているのは「それは、だれのための仕事?」を問うこと。

広報・PRでは「伝える」行為自体が目的になりがち。言われたことを伝えました。言われたとおりに書きました。それでは、介在価値がまったくない。

前職で広報になりたての頃、いまも教訓にしている出来事があった。

とある著名な方に社内の勉強会で登壇いただき、そのレポート記事をオウンドメディアでも掲載したときのことだ。勉強会の仕切りを任されていたわたしが、登壇者の原稿確認も対応することになった。

いま思えば、わたしは「編集者」としての役割を任されていた。ただ、当時はライターと登壇者、それぞれの意見を仲介・伝達する”だけ”のひとになっていたのだ。

どんな弊害が発生するか?

ただの伝書鳩がいると、介在価値がないどころか、原稿の方向性もブレブレになってマイナスだ。ライターが書いてくれた原稿を読んで「いいですね」と登壇者に提出して、先方が赤入れした内容を「それも確かにそうだな」とそのままライターに戻して、上司から「こうしたらいいんじゃない」とアドバイスされたことも盛り込むと、さらにグラグラグラグラいろんな意見が混在して。

「あなたの意見は?」
「なんのために存在するの?」

自分のスタンスのなさを突きつけられた瞬間だった。

「この原稿をだれに読んでほしいのか」
「だれになにを伝える記事なのか」

「だれのための仕事」なのかを明確にできていれば、どんな意見があっても「●●という理由で、それは取り入れたくない」「たしかに取り入れたほうがさらに良くなる」と自分で判断ができる。


このエピソードは、たまたま原稿をめぐるやり取りだが、広報・PRの仕事では日々がこの連続だ。KPIとして分かりやすい「メディア露出」がゴールになりがちだが、あくまでも手段であり、目的にしてしまうと危険。

たとえば、いまわたしが働いているnoteを運営するピースオブケイクでも、広報・PRがたずさわる範囲はとても広い。入社して7ヶ月でやってきた仕事をまとめてみたら、以下のような配分(ここはざっくり体感値)だった。

サービスPR(プレスリリースを月平均8本発表):30%
メディアリレーション(パートナーへのお声がけ、noteの利用相談ふくめて):15%
社員インタビューの作成、編集 :10%
登壇イベント対応:10%
オフィシャルに出す資料作成:10%
SNSでのユーザー対話:10%
土台固め(POCの公式サイト整備、文言統一):5%
社内発信(加藤さんの言葉の伝達):5%
その他もろもろ:5%

なにか施策をやるぞ!と決まったときも、そのためになにをするのが一番良いのか?なにができるのか? 仲間を募る、ユーザーとイベントを行う、自分たちで記事をつくる、メディアに取り上げてもらう。さまざまな打ち手を検討することから始めている。

プロダクトやかかわる社員、会社のバリューをどうしたら最大化できるのか。まだまだ力不足を痛感する日々だけど、自分が関わったことでみんなが幸せになってほしい!と思っている。心の底から。

だれのための仕事?を細かく分解してみる

たとえば日常的にやっている仕事では「取材のあと、かならずお礼メールとともに取材のログを記者へ送る」がある。

「しゃかりきにメモを取って送るだけ」にも見えるが、「だれのための仕事」を考えると3つ。それによって、どんな仕事をしたら良いのかが見えてくる。

1つ目は「記者や編集者」のテープ起こしの手間が省けるのではないか。即日送れば、話の要点も理解しておぼえてもらいやすい。

2つ目は「会社」の資産になる。取材に同席したわたしだけではなく、社員みんなに共有したい話であれば、Slackで共有することもある。

3つ目は「自分」。取材のなかでは、話が行ったり来たりすることもある。取材対象者が話したことで補足が必要な場合もある(1次情報の提示やファクトの確認など)。ただの文字起こしではなく、読み取りやすいように編集をする練習になるのだ。


ほかにも、最近あった大きな仕事では「文藝春秋」がnote proを活用してデジタルメディアをはじめた「文藝春秋digital」スタートのニュース。

おかげさまで多くのメディアでも取り上げていただいた。

このニュースにおけるそれぞれの目的をかいつまんで説明すると……文藝春秋の目的は「より多くの方に知ってもらって、読者になってもらう」こと。自社にとっては「note proの活用法を示す」いい機会でもある。だからこそ、まず最初により多くの方に知ってもらって、文藝春秋digitalの船出を成功に導く必要がある。

できるだけ多くのメディアに取り上げてもらって、多くの人の目に触れる機会を作りたい!そのために今回のニュースに興味を持ってくれそうなメディアに、それぞれの特性にあわせて、ストーリーをアレンジしながらお伝えした。

こんな良い素材を頂いて、ニュースバリューを高められなかったらどうしよう……!と緊張の日々だったが、いまも順調に購読者が増えていて、本当にホッとしている。


社員のインタビュー記事を作成するときも、いつもドキドキしている。あるテレビ局の記者から言われた一言が忘れられない。「その人の価値を生かすも殺すも書き手にかかっている」。

社員インタビューでは、自社を魅力的に思ってもらうことはもちろんだが、今後そのひとの名刺代わりの記事になるかもしれない。その覚悟が必要だ。


先日ブックライターの宮本さんがnoteに「(レストランにたとえると)ブックライターは料理人、編集者はレストラン全体のプロデューサー」と表現されていた。まさに広報・PRも料理人であり、プロデューサでもあると思う。

「自社」「社員」「プロダクト」「顧客のエピソード」など、さまざまな素材をどう調理するか考え、どんな雰囲気でどのように提供するのかを考えるのだ。難しくて、プレッシャーも大きいが、だからこそおもしろい。

あなたの仕事、いつでも引き継げますか?

余談だが、わたしは広報・PRよりも営業のキャリアのほうが長い。営業界隈でよく出る「担当変更を顧客に伝えたら、”あなたじゃないとイヤだ”と言われた」というエピソードが苦手だ。

要はプロダクトの魅力ではなく、その営業個人の魅力に惹かれて顧客は発注していた。営業にとっては、誇らしくうれしい話でもある。

でも、それって本質的だろうか。個人事業主ではないのだから、自分だけのファンにするのではなく、会社全体のファンになってもらってこそ一流だと思うのである。

「だれのため」を考えると、広報・PRの仕事の顧客には当然、社員や自社そのものも含まれる。

若手広報の方から「1人広報で、子どもができても産休や育休をとれるイメージが湧かない」と相談を受けたり、「あの会社は広報の方が変わった途端、あまりニュースを聞かなくなったな…」と思うこともある。

広報・PRはコミュニケーションを生業にもしているので、属人化する側面もあるが「きちんと情報を蓄積すること」「仕事で大事にしているTipsをきちんと他のメンバーにも伝えること」「親しくなった関係者(メディア、ユーザー、取引先など)との交流を自分だけのものにしないこと」で、「引き継げない」なんて事態は、防げるのではないか。

ちなみに、わたしは情報を残しすぎていて、先月新しくPRチームの仲間になった関矢さんから「めっちゃある」とフィードバックはもらったのですが…(苦笑)。精査します、はい。

アタリマエのことをバカになってちゃんとやる

社会人生活をスタートさせた前職で、口すっぱく言われてきたABC理論(それぞれの頭文字を取ってきてるらしい、まさかの日本語)。

A アタリマエのことを
B バカになって
C ちゃんとやる

わたしの強みは、このABCが得意だったことだと自負しています。たとえば広報・PRの仕事であれば……

・すぐやる(良さそうなことはすぐ試す、イベントレポートは熱のあるうちに出す、常にネタを探す…など)

・経済の動向を掴むために日経新聞を毎日読む(朝刊夕刊ともに)

・LINEでさまざまなメディアの公式アカウントとお友だちになる(定期的にダイジェストが送られてくるので、各メディアの傾向がつかみやすい)

・会いたい人がいたら、イベントに参加してでも会いに行く

・取材の後にきちんとお礼メールや取材のログを送る

・ステキだなと思った記事やイベントは、シェアしたり実況して愛を伝える

・社内にゴミが落ちていたら拾う、乱れている会議室があったら整える、来社した方にきちんと挨拶する

どれも小さな積み重ねだが、自分が関わるひとたちを幸せにするためには必要なこと。これも「だれのため」が明確だから、できているのかもしれない。


この記事で書いてきたことは、なにも広報・PRに限った話ではない。それだけ「だれに」なにをどう伝えるのかは普遍的で重要なスキルだ。だから面白い。

今日から仕事をするときに「だれが顧客なんだっけ?」とふと立ち止まって考えるキッカケになったら嬉しいです。

noteの広報としてポジショニングトークをするのであれば、noteを書き続けることで、顧客を想像してどう伝えるかの技術を鍛えられる。わたしもnoteでは仕事とは全然関係ないことをよく書いているが、普段とはちがう素材を調理する工程を楽しんでいる。ほかのひとのnoteを読んで勉強になることもたくさんある。

「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションに掲げる会社だからこそ、まずは自分が一番のユーザーであり、ファンでありたい。

この記事を読んでいるあなたも、素材の生産者になってもいいし、料理人になってもいい、食べにくるお客さんも最高のキャストの1人だ。それぞれのやり方でnoteを楽しんでほしい。

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