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あの子の日記 「洋梨」

日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集

部屋を出てお日さまにキスをした。まぶたの裏がオレンジ色に透けて、夢の世界を見ているみたい。

幸せな朝にゆうびん受けをのぞくと、運命の手紙が眠っているってだれかが言っていたから、今日もぼくは期待している。

もしかして、駅でICカードを拾ってあげたあの子からのラブレターだろうか。それとも、お風呂場で生まれたあの歌のレコーディングのお誘いだろうか。

目を開けてゆうびん受けをのぞいてみると、ノートの紙切れが1枚あお向けになっていた。薄い色の鉛筆で個性的なリンゴの絵が描いてある。リンゴにしては縦長で、ずんぐりむっくり。

なあんだ運命っていたずらじゃん、と紙切れを取り上げて地面に捨てる。裏側に書かれた「用無し」の文字を見ないまま進むぼくの現実は、何度も夢を見たがった。

あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。