ある荻窪のカレー屋について
僕が「吉田教」に入信したのは、今から8年前の2016年9月のことだった。
そう書くと、いきなりヤバい話が始まったと思われるかもしれないが、どうか安心して欲しい。荻窪にある「吉田カレー」というそのお店は、特筆すべき圧倒的な美味しさと癖のある店主のキャラクターが相まってカルト的ファンが多く、その熱狂ぶりがある種宗教チックなので、一部のコアファンから愛を持ってそう呼ばれているのである。
ご多分に漏れず、当時22歳だった僕も初めて食べた瞬間、文字通り言葉を失い、その美味しさに頭をブン殴れられるような衝撃を受けた。
ただ、吉田カレーの美味しさを言葉で表現するのは、トップバッターでM-1を優勝するくらい難しい。※これを書き始めたのが去年だったのでまさかこんなことになるとは
インドカレーでも欧風カレーでも、はたまた日本風の家庭のカレーとも全く異なり、鰹節、昆布、貝柱といった魚介の出汁と、産地にこだわったオリジナルの鶏ガラスープ、さらにバナナなどフルーツの甘味が複雑に混ざり合わさり、渾然一体となって押し寄せる圧倒的な旨みは、正に筆舌に尽くし難い。もしかしたら世界に誇る日本語の語彙力を持ってしても、その美味しさを修飾するには事足らないのかもしれない。とにかくこれまでのどのカレー、なんならあらゆる食べ物にも類似していない、完全な“新味”なのだ。
そこからというもの、毎月1回は必ず足を運び、時には仲の良い友人を連れていき吉田教の道連れにしたり、挙句の果てには、結婚式で配るパンフレットにもオススメ文を書いて参列者全員にゴリ押しするなど、吉田教の布教活動に勤しんできた。
ただ、ここまで書いておいてあれだが、吉田カレーは広く全員にオススメできるお店ではない。なぜならお店独自のルールが多数存在し、そのルールを破れば、店主からブチ切れられ、即退店させられるからだ。(もはや行き慣れて調教済の我々からすれば至極真っ当のルールに思えるが)なので、少しでも「金払ってるのは客側だ」的な考えがある人、作り手/料理人に対してリスペクトがない人には絶対にオススメしない。
ただ、そのルールを知らず悪意なく破ってしまい、その結果怒られたり食べれない憂き目に合う人を少しでも減らすべく、ここに「吉田カレーマニュアル」を記す。※情報は2024年5月時点のものであり、今後変更の可能性があります。
まず営業日時について、少し変則的で毎週月、火、金、土の4日間のみの営業。営業時間は、11:30-13:50のお昼の部と、17:30-21:00の夜の部だ。(土曜だけ18:30-21:00) ※追記22:00-24:00の部も始まったとのこと
ただ、土曜の夜(と常時22:00~の部)は特別営業で限定メニューのみの販売となるので、初回来店は避けるべき。吉田の味とルールに慣れてきたタイミングで行くことをオススメする。ちなみに限定メニューは毎回店主の創作で、同じ味のメニューは二度とない一期一会のレアものだ。
次にお店へのアクセスについて、JR中央総武線荻窪駅、または東京メトロ丸の内線荻窪駅から北口を出て向かって左方面の都道4号線を直進。
7分ほど歩くとと道の右手側にフレッシュネスバーガーが見えてくる。その横の「倉はし」というお好み焼き屋の2階に“聖地(メッカ)”はある。
2階への階段の入り口はこんな感じ。
驚くかもしれないが、このシャッターの状態こそが“営業中”なのだ。成人した大人であれば、確実にシャッターをくぐる必要がある。シャッターを半開きにしているのは、何も知らずにふらっと入ってくる一見さんを減らすための、ある種の防護壁だ。
ただ、多くの場合、特に土曜祝日は待ちが発生しており、階段部分に入れる位置であれば階段内で待つ。(おおよそ6-7人ほど)
それより多い場合は、先頭3名までは入り口前の街電灯から道の左側に沿って並ぶ。外に3名以上並んでる場合は、横断歩道で渡る人の邪魔にならないよう少し間隔を空けて並ぶ。(もちろん全員揃った時点から並ぶように)
そして、最も大事で、初心者殺しのルール、『呼ばれるまで店に入らない』。暗く狭い階段上がった踊り場の入り口前部分でじっと待つ。とにかく待つ。もし勝手に扉を開けた途端、ゲームオーバーである。店主の「何名様ですか?」の声が掛かるまで、Xの吉田カレーアカウントの投稿を確認しながら静かに待つ。
呼ばれたら、入店し、入り口レジのところで先にメニューを注文する。(会計は後)
メニュー ※2024.2.27時点
僕的な初回のオススメは、ご飯小 MIX ハーフ豚 中華アチャール だ。
アチャールとは、キャベツや大根などの野菜の酢漬けで、吉田カレー内で非常に重要な役割を果たすので、特にマストで頼んで欲しい。
2回目以降余裕が出てきたら、営業時間前にポストされるX記載の限定トッピングを注文してみよう。
1点注意としては、量がかなり多く、二郎ラーメンを普段から食べまくっている僕でも、ご飯並で十分お腹いっぱいになるので(毎回トッピングしすぎるせいもあるが)、少食の人はご飯少なめを推奨する。
あとは案内された席に座り、料理が来るまでの間、穏やかに精神を統一。迷惑にならない程度に話すのはOK。(キッチン側のカウンターでない場合、カレーが出来たら席の位置で呼ばれるのできちんと聞いておくように)
カレーが到着したら、写真を素早く撮り(なお店内は料理以外は撮影NGで食事中もスマホ禁止)、手を合わせ小さく「いただきます」と唱え(心の中でも良し)、後は自分の思うがままに食べ進めれば良い。そこまでいけばあとは夢のような味覚体験が待っている。
食べ終わったら、お皿を受け渡しスペースのところまで必ず持っていくこと。ティッシュゴミは入り口近くのゴミ箱へ。支払いは現金かpaypayの2択で、クレジットカードやその他電子マネーは使えないので注意。paypay支払いの場合、レジ横にあるpaypayのQRコードを読み取って、金額を聞いて支払い完了画面を見せればOK。現金の場合は、1万円札での支払いだと喜ばれる。(レジ内千円札が大量にあるため)
最後に吉田店主にご馳走様でしたと伝え、長いトンネルのような狭い階段を一歩一歩ゆっくり降りていき、半開きのシャッターをくぐり、久しぶりの娑婆の空気を深呼吸すれば、1人の吉田教信者の完成だ。数日も経てばあの味を思い出して、お腹が空き、再びその地を訪れるであろう。
これを読んで、少しでも興味を持ったら、ぜひ一度夢への扉を叩いて欲しい。不安な方はぜひ僕に一報ください。お供します。
おわり
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