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甘エビは罪な奴なのか【湘南 稲村ヶ崎温泉編】

冬のある夕暮れ。江ノ島の桟橋に私は立って沈む夕日を眺めていた。コロナ禍の冬の江ノ島海岸は、人混み・ギャル・ギャル男・渋滞・猛暑と私の嫌いな湘南の要素が取り除かれており、それはもうそこに立っているだけで真夏の果実のイントロがどこからか流れてくるようだ。

なぜ、平日のこの時間に私は、対して好きでもない(むしろ嫌いだった)江ノ島に一人やってきたのかというと…

ここのところ、私の休みの日の行き先は、気が赴くままに決める、Like a Rolling Stoneスタイルを貫いている。誰にも縛られず、自分が行きたいと思ったところにいき、入りたい風呂に入り、食べたいものを食べる。この上ない幸せ。

その一方で、ダーツの旅的なサプライズも好きなので、何か自分がコントロールできない何かに導かれたところに行ってみるという遊びも取り入れている。昔、スピリチュアルブームが来た際に、方角にハマっていた話をこちらの記事でしたことがあるが、その名残で何か風水的なもので方角を決めて、そこから行きたい場所を選ぶということもたまにやる。

ただそれを繰り返す中で、スピリチュアル的なものへの懐疑心も生まれてきた。こういうもので本当に人は幸せを掴むことができるのか?むしろLike a rolling stoneと思って行った場所がもし悪い方角だったら不幸になるのか?そもそも、よく朝のニュースで「牡羊座のあなたは●位、今日のラッキーカラーは…」みたいなヤツって日中覚えていた試しがないけど、実際どの程度人の幸福に寄与しているのか。考えていたら、科学してみたくなった。(某宗教団体とは関係はありません)

そこで、東洋が誇る科学(?)「風水」というジャンルにおいて、スピ女たちの中で幸せの案内人として名高い李家幽竹先生の一口アドバイスどおりに365日過ごしたら、本の帯の通り、グレードの高い幸せとやらを手に入れられるのか?という実験を2021年はやってみようと思った。アマゾンでポチッと購入。

はりきって購入したものの、1月のページを開いてみて早速つまづいた。なぜならアドバイスがすべて各論すぎて、毎日試すのは至難の技である。早速購入して1週間も立たずに達成できていない項目が多すぎて、幸せになったかを定性的に図ることは難しい状況に立たされた。

1月6日「ビジューのついたものが幸運を呼びます」⇒ ビジューって何?画像検索したら、こんなの5歳くらいの友達の子のおもちゃでしか見たことないんだけど…

1月7日「スイートなラブソングを聞きましょう」⇒ 緊急事態宣言前日。飲食店が閉まってしまうので、馴染みのバーで朝まで飲みすぎた。かかっていたのは主にメタリカだった。

1月8日「おしゃれなルームシューズを探して」⇒ 緊急事態宣言が開始。家で「ボビー・フィッシャーを探して」を見るので精一杯だった。

1月12日「華やかなクラシック音楽を聞いて」⇒ 私:アレクサ、華やかなクラシック音楽をかけて」アレクサ:Amazon Musicから久石譲のSummerが再生。ん?これ名曲だけど華やかなクラシックとはちょっと違うような。

1月13日「鏡に向かって願い事を言霊にしましょう」⇒ちょっとこれは誰も見てないとしても、一人でやっている姿に自尊心を保てない。

1月15日「羽モチーフの小物で運気を軽やかに」⇒ビジューとネイティブアメリカン風モチーフのアクセを常備する人のファッションテイストをむしろ知りたい。

1月21日「仕事の合間にはミントティーを」⇒ミントティー嫌いなんだが、イングリッシュティーではだめなのか、綾鷹ではだめなのか。ミントティーである根拠を知りたい。

家にないものばかりでてきて、まるで難易度の高い借り物競争のようだ。本書をあまり批判するのは罰が当たりそうで怖いが、科学的でなくてもいいからどんな根拠があってこのアドバイスをしているかも合わせて書いてほしい。

そして、今回の休日の過ごし方の道標となるアドバイスは…

「吉方位:南西 甘エビを食べるとツキがアップします」

え、なんで? と突っ込みたい気持ちを抑えつつ、もはやここまで来ると「李家先生もしかして適当に書いてる?もしかして先生がこれ書いているときに無性に甘エビ食べたかっただけ?なぜ甘エビなのか?他のエビだとだめなのか?」とか混乱した。

そして、もし五黄土星以外の星の人にも全パターンこの具体的すぎるアドバイスを流用せず書いているとしたら、それはもう李家先生には頭が上がらない…。

ということで、私はとりあえず休みの日だったこともあり、時間なら死ぬほどあるので、出来ることはためそうと思い、南西で甘エビを食べれるところを探してみた。ぱっと思いつくのは三浦半島だが、三浦半島は我が家からは南に位置する。南西には湘南があるので、江ノ島に海鮮丼の店が沢山あったことを思い出し、そこなら甘エビを食べれるに違いないということで、江ノ島に車を飛ばした。そして一行目に戻る。

前置きが大変長くなってしまったが、結論からいって江ノ島で甘エビを食べることはできなかった。歩いて見て回った海鮮丼に乗っているエビはボタンエビばかりで、甘エビを見つけられなかった。そしてここならきっとありとあらゆる湘南の海鮮が揃っているに違いないと信じて入った江ノ島の名店「江ノ島小屋」には、甘えび自体が仕入れられていなかった。
人の少ない江ノ島に、女子1人現れ、甘エビの料理がないかを尋ねる私は、お店の人から結構な勢いで怪しまれていた。
しかも客は私しかおらず、甘エビがないからと聞いて店を後にするのは申し訳無さすぎる。
李竹先生の気まぐれアドバイスに翻弄された形となったが、ここで甘エビは断念することにし、お店オススメのホロホロ丼を食べた。
かなりうまかった。絶対甘エビより美味しいし幸せだ。

♨️今日のフロ飯♨️

江ノ島小屋
0466-29-5875
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-20-12
https://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140403/14005218/



何のために私ははるばる江ノ島まで来たのだろうか…。
渋滞がないのはまだ救いだが、もう日も暮れてしまい、やることは唯一つ。そう、休日のメインディッシュ。

温泉とサウナ!

さっそく一番近い温泉施設を調べたところ、エノスパが出てきたが、エノスパは前に行ったことがあったため、今回は泉質とサウナにこだわって「稲村ヶ崎温泉」へ行ってみることにした。

夏は海水浴客で賑わっていることが想像されるこちら、冬も地元サウナーの方々で賑わっていた。建物自体は新しく、隣接されるレストランがいかにも湘南って感じで若者カップル、ギャル男とギャルにも好まれそうだ。今日はお腹いっぱいなのでお風呂へ直行した。

稲村ヶ崎温泉HPより

コンパクトな作りで、半屋外になっている洗い場は冬には少し寒いが、さっさと洗ってお湯に浸かった。最初に入ったときは、ぬるさを感じたが、炭酸泉みたいな感じでじわじわとあったかさがくるのだろうと思い、しばらく浸かってみた。壁にかかったストーリーには、こちらの温泉は殺菌効果の高い松の有機質成分を含む「モール泉」と呼ばれるもので、平成前期までは世界で2か所しか確認されていなかった貴重な温泉資源らしい。昔、稲村ヶ崎は松林になっていたから生み出された奇跡の湯なのである。

想像どおりじわじわと温まったところで、サウナへGO。サウナも決して広くはないが2段ちゃんとある高温サウナ。モール泉での下茹でがいい感じに決まったおかげで、すぐに汗が出てきた。甘エビの恨みと無念を忘れるべく、私はサウナの中で、風水の無責任で自由なアドバイスに腹を立てた。そして、水風呂のなかで、この実験は無意味だということを悟った。なぜなら、幸せというのは、そんな各論に無理して従わなくたって、風呂とサウナでこうやって得ることができるんだから。

甘エビをちゃんと食べていたら、どんなツキが私に回ってきたかはしらない。むしろ知りたい。でも、外気浴がわりに、お風呂の椅子に座って真っ黒な冬の穏やかな海を眺めながら風が私の体を冷ますと同時に、私のもやもやも浄化されていった。もう、甘エビはどうでもよい。

海よ、稲村ヶ崎温泉よ、ありがとう。

ちなみに翌日のアドバイスは「ラッキー」というほどツキも上昇するらしい。愛の言霊の力ですかね。

稲村ヶ崎温泉
神奈川県 鎌倉市 稲村ガ崎1丁目16-13
https://inamuragasaki-onsen.jp/
入館料 1500円
レンタルタオル あり
泉質 炭酸水素塩冷鉱泉(モール泉)
サウナ 高温サウナあり
水風呂 あり
外気浴スペース なし。露天で代用
アメニティ だいたいあり
ドライヤー 無料あり
駐車場 あり
客層 冬は地元の若い方多め。
フロガーポイント じわじわあったまる温泉


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