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『AppleがNFTのアプリ内課金を強制。保守化は世代交代のシグナル』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.26

■Apple「アプリ内課金によるNFT関連サービス販売」を許可|機能ロック解除などは認めず

Apple(アップル)は2022年10月24日に「App Store Reviewガイドライン」を更新したことを発表しました。今回の更新では『アプリはアプリ内課金を用いてNFT関連サービスを販売することができる』といった文面が追加されていますが、それにあわせて『NFT保有者限定のアプリ内機能ロック解除などは提供できない』ということも説明されています。

AppleがNFTに対する姿勢を規約で明確化しました。

・NFTを販売する場合、アプリ内課金を使うべし。
・NFTを持っているとアンロックされるサービスは禁止。
 外部でNFTを買ってきて持ち込まれるから。
・ウォレット接続させるアプリも禁止。
 外部でNFTを買って持ち込む手段だから。
・アプリ内課金以外の、外部課金ページへのリンクボタンの設置や誘導も禁止。Apple税30%取れないから。

といった内容です。原文はこちら。

Appleは長くデジタル分野のトレンドセッターだった立場をかなぐり捨てて新しいものを前向きに取り入れるよりも現行ビジネスを守る保守的な判断をしたと捉えています。

Appleが保守化したら終わり。
でも多くの人にとって今はNFTや暗号資産は関係のないもの。

さてAppleの守り固めにかかる時間と時代の変化スピードのどちらが勝つでしょうか?


■NFTの市場規模はAppStoreの売上の26分の1。でも…

NFTについてハードな制約を設けてきたということは、NFTが無視できない存在になってきたことをAppleが認めたということだろうと思います。

NFTなんて捨て置けば自然に廃れる。NFTなんて社会実装されるわけがない。
・・・と考えるなら規約の中にNFTという言葉は登場させません。

「外部から調達したアセットを使用できるアプリは禁止」など解釈の幅を持たせられる文言にしつつ広く網をかけ、運用で締め出すということも可能だったはずです。

現時点では、NFTの市場規模はそれほど大きくはありません。

マーケッツアンドマーケッツ社によると、NFT市場は2022年の30億5,600万米ドル(約4,196億円)から2027年までには136億7,900万米ドル(約1兆8,782億円)と、4.4倍超の規模にまで成長すると予測しており、予測期間中のCAGR(年平均成長率)は35.0%の見込みです。

と、NFT市場は世界全体でも2022年は30億5,600万ドル(約4,196億円)なのに対して

AppStoreの売り上げは2022年第3四半期だけで196億ドル(約2兆8,000億円)もあります。年換算で単純に4倍すると約800億ドル。Apple1社の手数料売上 vs 世界全体のNFT市場規模で比較すると26倍の開きがあります。

ただしNFTの市場規模は2027年には136億7,900万米ドル(約1兆8,782億円)と、4.4倍超に急成長すると見込まれています。さらに

App Storeの9月の純売上高は5%減少
ウッドリング氏は、売上高が減少した理由として、Appleの顧客がインフレなどの経済的懸念から、ソフトウェアなどのソフト製品への支出を減らしている可能性を挙げています。主にゲームの売上高は14%減少したとされ、全体で5%の減少は、Morgan Stanleyが2015年にデータの追跡を開始して以来、最大の減少率となりました。

さらに同氏は、「私達は最近のApp Storeの結果は、裁量所得が需要の滞っている分野に再配分されているため、世界の消費者が短期的にApp Storeの支出をやや重視しなくなったことを明らかにしたと考えています」と述べています。

AppStoreの売上は伸びなくなってきているか、減少傾向です。

NFT市場規模の2027年予測値136.8億ドルは2022年のAppStoreの売上規模800億ドル比で5.8倍まで縮めてきています。ざっくり今後5年で26分の1から6分の1(またはAppStoreの成長鈍化でもっと差が縮まる)というペースを考えると、10年後には追い抜かれているかもしれません。

それでもApple1社 vs 世界全体の市場規模で比較しなければならないほどAppleは巨大で、その巨大さを保つための仕組みがApple税30%です。

そして金額規模もさることながら、NFTはApple税の仕組みを無効化する可能性が高いことが、今回NFTを名指しして規制してきた根本の動機なのだろうと思います。


■NFTはオープン&分散の思想を技術的に持っている

OpenSeaなど外部サービスで買ってきたNFTは、技術的にはいろんなサービスで共通利用が可能です。相互運用性、インターオペラビリティと呼ばれる思想です。

Webサービスに限定してアプリを出していないOpenSeaでNFTを販売し、アプリ内で使用できるという仕組みにすることでAppStoreを介さずにお金のやり取りが可能になります。

NFTに金銭価値を移転して外部サイトで売買するのは、お金の流通とサービスの利用を分離する行為です。

お金が動くところに関所を設けて手数料商売ができるのが旨味だったのに、お金を介さずサービス利用するアプリの頒布=コスト部門だけやらされるようになってはたまりません。


■加速主義的には、もっと規制がハードになればNFTの普及が早まる

「NFTが使えない不便」という世の中のトレンドからズレたことをやり続ければ、いつかiPhoneは見放されます。

今は世界中のほとんどの人がNFTを使えなくても不自由なく生活できていますが、NFTの社会実装が進み、誰も「NFT」を特別視しないようになったころ、iPhoneは使い物にならなくなります。

たとえば。

スマホは当初「電話の代わり」として登場しました。携帯電話のキャリアがスマホ本体の販売と回線とセットで売るものでしたので、仮に携帯キャリアが「パケット通話は通話需要が減るから禁止!SNSも通話需要が減るから禁止!SMSをMMSとかリッチ化するからそっちを使ってね!」と言っていたらどうでしょう?

ガラケー全盛期でスマホはアプリがなく不便だった時代はほとんどの人に影響がなかったでしょう。「SNS」の3文字ワードに説明が必要だった時代です。

今はSNSが禁止されたスマホは誰も選ばないでしょう。そして今はSNSというものに説明は不要で、どのサービスがSNSなのかの言葉の定義にこだわる人はいないでしょう。

時代が進み、多くの人が「これはNFTなのか」を意識せずに裏側でNFT技術が使われている状態で社会浸透した時、NFTが禁止されているスマホを使う人がいるでしょうか。

短期的にはGoogleが同じ制限をしてくるかが気になります。もし制限しなければiPhoneからAndroidへの移行が進みそうです。

世界でこれほどiPhoneばかり使っている国は日本くらいなので、世界の方が先に移行が進み、日本だけ保守的に不便なiPhoneにしがみついている人が残存してNFTが社会実装されずガラパゴス化する、という歴史を繰り返してしまうかもしれません。

Googleも同じくNFTを禁止するなら

NFTを全力活用でき、AppStore的アプリマーケットの手数料もゼロな「Web3
スマホ」が普及するきっかけになるかもしれません。

GAFAMというメガプラットフォーマーの支配から独立しようというweb3の思想性ともマッチし、規制が強まれば強まるほどGAFAMが守りに入り革新が彼らからは生まれなくなっていき、結果あたらしい勢力を生むきっかけになる、かもしれません。

加速主義(かそくしゅぎ、英語: accelerationism)とは、政治・社会理論において、根本的な社会的変革を生み出すために現行の資本主義システムを拡大すべきであるという考えである。

今回のAppStoreのNFT締め出しは、社会変革が進む大きなきっかけになる予感がします。web3というアンチGAFAMのバズワードが登場した今のタイミングでのNFT規制は偶然ではない気がします。

加速主義的な見方をすれば、よりハードな規制がかかるほどweb3時代が早く来る。なのでAppleにはOpenSeaにアクセスできなくする、MetaMaskアプリをBANする、DiscordはNFTをパスポートに使えるから禁止、などどんどんBANしていただければ、クリプトネイティブなZ世代から順にiPhone離脱が起きてむしろNFTが普及するのが早まるはずです:-p

iPhoneユーザーである私の個人的な対策として、STEPNのSpendingにあったGMTとSOLをWallet側に全部移しました。これでSTEPNアプリがBANされてもPhantomウォレットを通じてSTEPN内のトークン資産は取り出し可能です。シューズ9足やComfort GEMたくさんというNFT資産が取り出せなくはなりますが、Android端末も持っているので最悪そちらで手じまいすればOK。やれることはやっておきましょう。

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