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『LinkedInのプロフィール偽装問題。巨大な人材市場の課題をブロックチェーンで解決するニーズが高まる』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.10.8

■AIが生成した写真と他人のプロフィールのコピーを組み合わせたLinkedInの偽アカウントが人事部門を悩ませている

ビジネスSNS・LinkedInで、AIが生成した写真と他のアカウントからコピーした内容を組み合わせた偽のプロフィールが急増しており、LinkedInで採用を行っている企業が大きな打撃を受けていると報告されています。

アナログな履歴書でも昔から起きていただろう「偽プロフィール」問題。
個人的にも採用面接をほとんど毎日やっていることもあり人ごとではありません。

LinkedInは日本ではあまり流行っていませんが、グローバルでは一般的な「履歴書」サービスです。書式がある程度統一されているため、他人のプロフィールを組み合わせて偽プロフィールを作るボットも簡単に作れてしまいます。

履歴書での書類選考には偽装がつきものでした。それがLinkedInの偽プロフィール量産ボットで一気に顕在化した格好です。この対策として考えられるのがブロックチェーンに刻まれた行動履歴・評価履歴をエビデンスとしてつける方法だろうと思います。


■2020年度の日本の人材ビジネス主要3業界市場は8兆2,225億円、2021年の世界の派遣市場は69兆2,080億円

矢野経済研究所の調査によると、人材ビジネス主要3業界である人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業の事業者売上から算出した2020年度の日本の人材市場規模は8兆2,225億円だったとしています。

ディールラボでは、2021年の人材派遣の市場規模として4760億ドルを採用しております。参考にした情報は以下の通りです。

ランスタッド(元データはスタッフィングインダストリーアナリシス)によると、2021年の同業界の規模は4760億ドルです。

グローバルでは就業・採用の業態が違うので単純比較できませんが、人材派遣業界の世界市場規模は4760億ドル(69兆2080億円)という数値もあります。

人材派遣業、人材紹介業、再就職支援業のいずれも、書類選考に履歴書を使います。

LinkedInに限らず履歴書でもプロフィール偽装や「盛り」はあるはずで、採用する側も国家機関などを除けば記載内容の信ぴょう性を厳密に調査することはほとんどないのが実態です。

記載内容を一定信用しつつ、面接である程度見定め、採用後に試用期間を設けつつプロフィールに虚偽があったら解雇できる、という雇用契約でリスクヘッジするのが一般的ですが、虚偽かどうかを調査することは非常に難しいこともあり解雇にまで至るケースはほとんどありません。

信用できるプロフィールは人材市場でニーズが高く、大きなお金が動く業界ですから、プロフィールの正確性・信ぴょう性を高めるための事業投資が活性化する可能性は大いにあります。


■ブロックチェーンに刻まれた履歴書

改竄不可能なブロックチェーンに職歴や活動履歴を刻んでいけば信ぴょう性の高いプロフィールが作れそう、とは感じます。

企画部分を少し考えてみます。

誰が記録するのか

自分自身で職歴を記入するなら、偽造を防ぐための第三者評価が必要です。SNSの仕組みのように、長期間・大勢がつながりを持っていて違和を表明していないこと、のような仕組みでしょうか。

入社した企業が記録することも考えられます。大学の卒業証書と同様、企業も証明書を発行することになるため、企業向けの経歴発行システムの需要がありそうです。

DAOやweb3コミュニティでの活動を証明するにはNFTやトークンの入出庫履歴が使えそうです。初期メンバーとして運営からエアドロされたのかOpenSeaで買ってきたのかの区別はつきますし、入手時期も特定できます。

何を記録するのか

会社やDAOの中で何をやったのかの活動履歴、役割やポジションは採用側が知りたい情報です。ポジションやジョブディスクリプション、プロジェクト情報などが記録されている必要があります。Discordの権限ロールを履歴として記録したり、役割やポジションに応じた証明書を発行・授受してログを残す仕組みが必要です。

ただし企業ごと、DAOごとに呼び名や重要性は異なるため比較しづらいですし、会社が与えた役割を超えてマルチに活躍したりする行動力の高さは表現されなくなります。また、プロジェクトの詳細など機密情報は書けません。他人からの評価も表現する仕組みが足りません。このあたりは工夫が必要そうです。

どうやって記録するのか

ブロックチェーンに記録する、と一概に言っても、チェーン自体がまだまだ進化の過渡期で、チェーンがなくなる・仕様が変わる、ということもあり得ます。

またオンチェーン情報として記録できるデータは小さく、例えば作品例などのポートフォリオはフルオンチェーンで記録するのは無理です。IPFSなど分散型ストレージにメタ情報として連携するのが一般的でしょうが、100%の永続性は保証されません。

経歴は一生モノですので、複数のチェーンにバックアップされる仕組みを作ったり、メタデータの永続性を高めることが非常に重要です。

次にNFTの授受履歴を記録として使うことを考えてみます。

各種NFTとして発行・記録する場合、他人から譲り受けることも技術的に可能です。入社証明書や卒業証明書などの場合は発行体が一次発行したことが確認しやすいですが、一般的なNFTプロジェクトだと二次流通と区別がつきません。

ではSBT(Soul bound Token)という移転不可能なNFTにすればよいかというとこちらも課題があります。移転ができないということは、受け取ったウォレットから移動できないということです。

例えばバイナンスがKYC済みIDとしての「BAB」というSBTを発行する仕組みを持っていますが、このSBTはバイナンス内のカストディウォレットから移動できません。外部から参照できれば一応使うことはできますが、いろんなwebサービスが独自にSBTを発行し始めるとやはり1か所に集約したくなります。でも移動はできません。不便です。

いろんなチェーンで活動している場合も、1か所に情報を集約することが困難な場合が発生します。

データを一元化はできなさそうなので、やはり履歴書サービスはLinkedInのような自由記載にしておいて、記載内容にエビデンスをつけるかたちがよさそうです。


■エビデンス付き履歴書&偽造の自動チェック機能がサービスのカタチか

履歴書は自分の活動履歴のすべてであるべきです。

しかしこれまで見てきたように、オンチェーンデータだけでも1か所に集約するのが難しい。オンチェーンに記録されていないデータも過去にさかのぼってさくさんある。

とすればやはり、今までの履歴書にエビデンスとしてオンチェーンデータの参照先をリンクしておく、エビデンスがないものやオフチェーンの情報は信ぴょう性が低く見られる、というサービスになりそうです。

LinkedInがオンチェーンデータをエビデンスとして記載しやすくする機能改修をすれば近道でしょうから、LinkedInにエビデンス情報を提供しやすくするシステムはニーズがありそうな気がします。企業向けの入社証明書や昇進証明書をNFTとして発行するプラットフォームサービスだとかすぐにできそうです。

偽造の自動チェック機能もニーズが高いでしょう。企業に送られてきた履歴書が誰かのコピペでないかの自動チェックは基本として、オンチェーンデータをわかりやすいUIで「何を表しているのか」が表現され、不正がないことを確認してくれる機能はほしい。人事スタッフは技術者ではありませんので需要が間違いなくあります。

人材市場はもともと大きく、さらにこれからの未来は流動性がより高まり、ジョブベースで働くことも増える予想で、職歴を記録し証明すること自体が非常に大変になっていきます。また企業への応募も回数が増えるため、採用人事スタッフの負荷もより高まります。

ここにプロフィール偽装が混ざり込むと従来の人事の体制では処理しきれません。

ブロックチェーンで偽造不可能な証明書を出す、だけでなく、それを使えるカタチに仕上げられれば、相当なニーズがあるだろうと思います。

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