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『デジタル地域通貨でステーブルコインが普及。その先にあるものとは?』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.11.8


■福島で「会津コイン」本格始動、デジタル地域通貨普及へ

福島県会津地域でデジタル地域通貨「会津コイン」が本格始動する。12月から会津若松市が実施する総額5億円のプレミアムポイント事業でコインで発行する。店側が負担する手数料を低めに設定して普及を進める。将来は地域貢献に応じたポイントを付与したり、データを開放して行政や地元企業の施策に活用したりするなど、新たな形のデジタル通貨を目指す。

最近「地域コイン」のニュースが増えています。

2023年6月1日の改正資金決済法施行により、法定通貨を裏付けとするステーブルコインが発行可能になったことが、地域コイン発行ブームを後押ししています。

ステーブルコインを含む暗号資産、それを発行するブロックチェーン、コインを扱うウォレットなどは、これまでは詳しい人だけが扱えるものでした。

しかし「地域コイン」は、10~20%くらいのボーナスポイントが付きお得に買い物できることをフックに、老若男女問わず使われます。

ブロックチェーンは難しい、暗号資産は怪しい、という印象が払拭され、多くの人が意識せずに「ブロックチェーンで発行された暗号資産」を使うようになるきっかけに「地域コイン」が寄与しそうです。


以前からあったという安心感

地域限定で使える電子通貨っぽいものは以前からありました。「地域ポイント」や「地域クーポン」などもたくさんありました。

私の住む神奈川県でも「かながわPay」という名称で、すでに第3弾まで実施されており、回を重ねるごとに認知度が上がって、10~20%のボーナスポイント分の予算がなくなるまでの期間がどんどん短くなるほど大人気です。

しかし「かながわPay」はステーブルコインではありません。
ウォレットにあたる「かながわPayアプリ」を使って支払い用QRコードを読み込んだあと、実際にはd払いや楽天Payなど既存のQRコード決済を使って支払うという、高齢者もふくめてよく使えるなぁと感じる複雑さです。

もし「かながわPay」が第4弾を実施する際に「かながわコイン」をチャージして使う仕組みに変えたとしたら、事前チャージは面倒ですが、それはそれで使われると思います。

すでに体験したことがあるアレが、ブロックチェーンや暗号資産など難しい説明なしにステーブルコインに置き換わったとしても、誰もブロックチェーンを理解する必要はありませんし、すんなり受け入れられるはずです。

他の地域でもクーポン券などで実施したことがあるなら、スマホアプリ+ステーブルコインで実施したとしても受け入れられるはず。

以前からあった安心感は強いです。


ステーブルコイン化で変わること

「かながわPay」は実際の決済がd払いや楽天PayなどのQRコード決済でした。「かながわPay」が普及することでQRコード決済が広まり、結果的にキャッシュレス化が進む効果はあったと思いますが、それ以上ではありませんでした。

もしこれがステーブルコインに代わった場合、給与支払いのデジタル化にもつながります。

地域コインだと使える場所が限られて不便ですが、それでも多くの人は「住民」として特定地域での買い物が一定あるはずなので、地域コインの多くで実施されているように10~20%のボーナスポイントが付くかたちにしたなら、給与の一部を地域コインで受け取る人は多いと思います。

また、使える地域がもっと広く、たとえば日本国内ならすべて使える「デジタル円」になれば、ボーナスポイントが付かなくても、給与の受け取りを「デジタル円」にする人も増えるはずです。

「デジタル円」を受け取るようになり、それが店頭やECでのクレジットカード決済の引き落とし先に使えるようになると、銀行を間に挟んでお金を受け取ったり払ったりするのが非効率だったことに気づくはずです。

「デジタル円」を皆が持つことで、皆が暗号資産ウォレットを持っている状態になります。地域コイン・ステーブルコインごとにチェーンが違うということは起きるでしょうが、ウォレット側がマルチチェーン対応することでUX的にはチェーンの違いを意識しなくなることを当然目指します。

マルチチェーン対応ウォレットを皆が持っている状態になることで、店頭やECサイトなどでの決済もすべてキャッシュレス化されていきます。

さらに、ステーブルコインではない暗号資産もウォレットのマルチチェーン対応によって扱えるようになり、いろんなアプリを触っている中でいつのまにか暗号資産を受け取っている状態にもなりやすくなります。

積極的な人はステーブルコインでアプリ用の暗号資産を買う、つまり「課金」するようになります。逆向きの、アプリで暗号資産を稼いだらステーブルコインに交換して街中で使うという流れも起きやすくなります。

他の暗号資産に慣れてきたら、ETHやリップルXRPなどのグローバル通貨も普及しだすでしょう。海外旅行の買い物で支払ったり、海外からの来訪者が日本での決済に手元のウォレットから払う際に、グローバル通貨が求められます。

「地域ポイント」「地域クーポン」が「地域コイン」になり、「地域コイン」がブロックチェーン上で発行された暗号資産・仮想通貨であるステーブルコインに代わることは、

・給与のデジタル払い(お金の入口のデジタル化)
・支払いのキャッシュレス化(お金の出口のデジタル化)
・クレジットカードなど銀行引き落としのデジタル円化(銀行業の分散化)
・マルチチェーン対応ウォレットの普及(暗号資産普及の素地づくり)
・ステーブルコイン以外の暗号資産とそれを使ったサービスやアプリの普及(暗号資産の多様化)
・デジタル円以上に幅広く使えるグローバル通貨の普及(お金のグローバル化)

につながると見ています。

他にもウォレットに紐づけたID、身分証明書のデジタル化や、購買行動ログの社会的共有などもあり得ると思いますが、プライバシー面での議論やマイナカードの不手際などもあり、こちらはお金のデジタル化より時間がかかるかもしれません。


日本ではリープフロッグ戦略で

こうなるといいな、の願望込みでまとめましたが、実際には日本のキャッシュレス決済の普及は遅れています。諸外国の過半数以上~ほとんどキャッシュレスという現状と比べ、2022年時点でわずか36%の普及に留まっているのが現状です。

であればむしろ、リープフロッグ現象を狙うのもアリかもしれません。

アフリカなどでは、固定電話やガラケーが普及する時期をすっ飛ばし、いきなりスマホが普及しました。

それと同じように、QRコード決済などをすっ飛ばして、いきなりステーブルコインの地域コインやデジタル円を「キャッシュレス決済の切り札」として普及させ、給与振り込みからデジタル化させる戦略はあり得ます。

技術立国、テクノロジー先進国だった日本も今は昔ですが、リープフロッグで日本が一気に再びテクノロジー先進国になる未来が来たら面白いなと思います。

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