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『Web3時代の最適なメッセージングサービスとは?』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.1

■NFTマケプレ「OpenSea」ユーザーのメルアド流出 メール配信業者の従業員が不正に持ち出し

Web3サービスの代表格であるOpenSeaでなんとも古典的な事故が起きました。

NFTマーケットプレースを運営する米OpenSeaは6月29日(現地時間)、メールマーケティングサービスを提供する米Customer.ioの従業員が、OpenSeaユーザーなどのメールアドレス情報を不正にダウンロードし、外部に送信したことが分かったと発表した。流出の規模などは未公開。

先日兵庫県尼崎市で個人情報が入ったUSBメモリを紛失した事故が大々的に報じられましたが、この手の事故の起き方はWeb3時代になっても起きるものだと。


■ウォレット接続だけに絞るべきなのか?

OpenSeaは基本的にはウォレット接続だけで利用できます。
今回メールアドレスが流出したのはニュースレターの購読のためにメアドを登録していた人に限られます。

外部送信されたのはOpenSeaユーザーと、同社のニュースレター購読者のメールアドレス。詳しい状況は警察とともに調査中としている。

ユーザーに対しては、メールアドレスがフィッシング詐欺に悪用される可能性があるとして、Openseaになりすまして添付ファイルを開かせるもの、パスワードやブロックチェーンへの署名を求めるものなどは偽物と注意を呼び掛けている。

Web3系サービスはウォレット接続だけで利用開始でき、会員登録が不要になるので個人情報を運営主体に渡さなくていいのがメリットだ、ともよく言われます。

確かにOpenSeaがウォレット接続だけに限定していれば今回の事件は起きようがありませんでした。

しかしリアルタイムな連絡方法がまったくないことが不都合になるケースは多々あります。不正被害にあったユーザーへ連絡することもあるでしょうしマーケティング的にPushレコメンドしたいケースもあるはずです。

サイトに訪れればメッセージを残すこともレコメンドすることもできますが、ユーザーがいつ訪れるのかわかりませんし、再来訪する動機が長期間ないユーザーも一定数いるはずです。通知があることすら知る由がないという外部と謝絶されている状態はWeb3サービスとはいえ好ましいとは言えません。


■ウォレットアドレスベースで連絡する手段も数多くある

EPNSは、Ethereumウォレットアドレスをキーとして分散型キャリアと中央集権型キャリアの両方からの通知をプラットフォームに依存しない方法で受信できるようにする分散型通知プロトコルです。


ETHmailは、メールサービスに見立てたUIを持つウォレット利用メッセージングサービスです。ウォレット内の取引履歴を分析することでスパムかどうかを判定するというユニークな機能も実装しています。


GetGemsは、2016年に作られたウォレット&メッセンジャーアプリです。Gemsという独自通貨のウォレットであると同時に、Gemsウォレットのユーザー間のメッセージングを可能としています。当時主な連絡手段だったTelegramでの情報流出事故がたびたび起きていたため代替手段が求められていたという背景もあります。


Secretumも、同様にTelegramの情報流出事故を背景に開発されたメッセージングアプリです。イーサリアムとソラナブロックチェーンを基盤としているのが特徴で、特定チェーンのウォレットアドレスだけだと多数のメッセージングアプリを用意しなければならなくなることの課題解決、イーサのみだとメッセージを送るたびに高額なガス代がかかることの課題解決をマルチチェーンで対応しています。


■Web2時代はメッセージングサービスが乱立

Web2時代の今はSNSサービスの隆盛と表裏一体でメッセージングサービスで成功した事例が多数あります。

Twitter DMはグローバルなメッセージ手段、Facebook Messengerはリアルの人間関係を中心としたメッセージ手段、LINEはLINEスタンプという面白さと新しい経済圏を作ったユニークなメッセージ手段としてそれぞれ時代を作りました。

ビジネスユースだとSlackがメッセージ手段としてシェアを伸ばしている実感があります。もはやSlack以外で連絡を取りたくないとすら個人的には思います。

相対的にE-mailはよほどのことがない限り使いたくないメッセージ手段という感覚です。スパムとDMだらけで必要な情報は1割にも満たず、会員登録で必要なのでメアドは仕方なく持っている、という位置づけに急速に落ちました。


■重要なのはコンポーザビリティ

しかしE-mailには本質的に良い面があります。
コンポーザビリティです。

Twitter、Facebook、LINEなどは相手も同じサービスを使っていないとメッセージのやり取りができません。従ってサービスの流行り廃りによって未来に連絡が取れなくなることが起きます。mixi上でしかつながっていなかった人とは今連絡する方法がありません。

E-mailはメールソフト・メールサービスの流行り廃りはあるものの、E-mailアドレスは常に有効です。E-mailのPOPやIMAP4とSMTPというプロトコルを踏襲すればメールサービスが自由に作れる。これがコンポーザビリティです。


■Web3時代の理想的なメッセージング方法はまだ模索中

Web2時代からWeb3時代への端境期の今、Web3らしいメッセージングのモデルケースはまだ確立していないのが現状です。

先にご紹介したようなウォレットアドレスベースのメッセージングサービスは多数登場していますが、POP/IMAP4/SMTPのようなプロトコルレイヤーの共通化には至っておらずサービスレイヤーでの展開がメインのように見えます。

チェーンごとにサービスが分かれ、さらに同じチェーンの中にも無数のサービスがある状態では連絡が取れる相手が限られすぎます。たくさんのサービスを利用すると通知にも気づかないことが起きかねません。

結局最大公約数的にE-mailを登録する仕組みになるとしたら今回のOpenSeaの情報流出事故のようなことが必ずまた起きます。

Web3時代に最適なメッセージングの在り方は、コンポーザビリティを活かせるプロトコルレイヤーでの規格統一ではなく旧来のE-mailをWeb3的に進化させる方向かもしれません。

つまりまだメッセージングサービスの分野は商機・勝機がありそうです。

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