もり塾の歩き方(4)憧れのインタビュー。でも私なんかにできるの?
60歳目前。でも人生100年ならは、まだ折り返し地点。
これが最後の挑戦と、「もり塾ブックライター・編集ライター養成コース」に挑んだ野村紀美子の受講体験記、第4回です。
いよいよ講座も中盤。基本的な文章の技術や、ライターになるための心得を学んだ後は、実践的な講義へ進んでいきました。インタビューに関する課題。取材もインタビューも全く経験がなかった私は、どこから手をつけたら良いのやら途方に暮れてしまいました。
インタビュイーが見つからない
講座も中盤に入ったとき「インタビュイーを探して、企画書を作成する。選んだ理由とタイトル、小見出しも考える」という課題が出ました。
「インタビュイー」、聞いたことがない言葉でした。
「『インタビュアー』はインタビューする人よね、聞き間違い? 先生の言い間違いではなさそうだし」と疑問を抱きながらも、それすら知らないことが恥ずかしくて質問しそびれていました。どうやらインタビューされる人と推測したものの
「探す? どうやって? アポ取れる人? 何かを成し遂げた人?」
私の頭の中は、大パニック。
このとき、先生も同期の仲間も全く知る由もなかったとは思いますが、私の動揺はかなり大きなものでした。
「インタビュー」と聞いて、最初はワクワクしました。私の中でライターの仕事は取材やインタビューで忙しく動き回るイメージ、プロへの扉が開いたかのようなときめきです。
冷静になって実際にインタビューすると考えると、まず私に会ってくれる人、ど素人のインタビューに応じてくれる人でしょう。
となると友人や知人しか思い浮かびません。
友人ならば何を聞くのでしょうか?
よく知っている人物だけに、世間話やおしゃべりの延長になってしまいそうです。
それとも、昔勤めた会社の上司など社会的地位のある人や何か成し遂げた人を選ぶべきでしょうか。
私にとって尊敬に値する人物でも、あくまでも一般人。交流も途絶えていて取材を受けてくれるかも疑問でした。
では著名人などで、話を聞いてみたい人はどうでしょう。
なんとなく思い浮かんだ人物はいましたが、超有名人というほどではないけれど著書も出版し、雑誌やWEBでのインタビュー記事も溢れています。
どうやってコンタクトを取るのかさえ検討もつかないし、そもそも私からのオファーではアポイントを取ることは不可能に近いでしょう。
何をどう検索すればその対象がヒットするのか見当がつきません。情報収集も大事な資質なのに、これではライターの端くれにもなれないと焦るばかり。
何もできないまま迎えた締め切り当日、私は先生に課題ができないと泣きつきました。
すると先生は講義の中で、私がインタビュイーを探せなかったことについて取り上げてくださることに。みんながヒントをくれるというなら、ありがたい限りです。
みんな、「つて」なんてないんだ
講義では仲間たちが次々と流暢に発表していきます。
「一体どこから探したのだろう? もともと何か知っている人なのだろうか? アポイント取れる自信があるということ? やっぱり現役で仕事をしているから?」
再び焦燥感が湧き上がります。
私の番が回ってくると、私が先生に送ったコメントがパワーポイントに表示されました。
「対象となる人物が全く思い浮かばず、いたとしてもコンタクトを取るつてもなし、手をつけることすらできませんでした。」
これに対し仲間が私に質問をすることで糸口をさぐろうと先生が促します。
仲間の質問に答えながら、私はインタビュイーを見つけられなかった経緯を伝えました。
仲間たちも、突然の展開にどうヒントを伝えていいやら戸惑っている様子。
電波状態が悪いわけではないのに静止画と沈黙が画面を支配します。
先生に「ちなみに著名人とは?」と聞かれ、考えていた人物の名前を挙げました。
数年前に雑誌で知ったその女性は、専業主婦から40代後半で社会復帰し、数年で管理職になったという人物。
自分と年齢も近く、強い衝撃を受けそのページを切り抜いてスクラップに保存し、憧れと尊敬を抱いていました。
その異色なキャリアの秘密をいつか知りたいと心ひそかに思っていたのです。
しかし今回調べてみると、その後書籍を2冊も出版し、かなり活躍している様子。
私ごとき素人がインタビューなんてできるわけがない、と思い込んでいました。
先生は、大物作家や芸能界の大物などの超有名人とは違うのだから、その方にアポを取ってごらんなさい、とあっさり。
私は拍子抜けしました。
「初めてインタビューするとき、『できないかもしれない、会ってくれないかもしれない』私だってそう思った」
と先生が経験を語ってくれました。
私の心に安堵感が流れます。
「コンタクトを取るつてなんて、なくていい。
みんな、ないのが当たり前。
全然知らない人にアポ取ってアタックする。
そうしてライターは仕事をしていく。
案件が来たらなんだって必死でやるんです。
一から全てをこなす。それがライターなのです」
と、先生はライターの心得を熱弁。
取材のイロハも知らなかった私でしたが、その言葉でプロのライターの仕事というものが、おぼろげながら姿を見せてくれたような気がした瞬間でした。
卒業制作へのイントロダクション
アポ取り、取材依頼書など実践的なことは今後の講義の中に組み込まれ、一人での取材が不安で難しい場合のフォローアップなどもあると伝えられました。
出題のときには明かされていませんでしたが、そのインタビュー取材は卒業制作の一つ、卒業に向けてのイントロダクションが告げられたのです。
このときの私はこれから訪れる試練も知らず、憧れが現実となることにただ胸を躍らせていたのでした。 (次回に続く)
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