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読書録「お母さんは命がけであなたを産みました」

  冒頭はこのような文章で始まります。


 『「私は親から何もしてもらっていない」
   そんな不満を口にする人がいます。
   みなさんは、自分がどんなふうに生まれてきたか知っていますか。
   想像したことがありますか。
   あなたのお母さんは、命がけであなたを出産したのです。
   あなたが、ここに存在することは、どういうことなのか。
   考えてみてくださいね。
   あなたは「親から何もしてもらっていない」ことは、ないのです。』

 
 この本の副題は「16歳のための、いのちの教科書」。
 学校に講演に行き、学生たちに”素敵な大人になること”を伝えている助産師の内田さんが書かれています。

 私も高校生の時に、学校で命や性に関する講演を聞いたことがありますが、自分には縁遠い話だなぁ…ぐらいに思っていました。

 けれど、自分が母親になってみて、このタイトルの意味を身をもって体験しました。出産は本当に命がけだと思ったから。


 この本の中で、とても、とても、深く胸に刺さった文章を紹介します。
(※死産のお話が出てきます)

そこにいるだけでいい

『「生」の反対は「死」じゃないと思う。「生まれないこと」だと思う。生まれたものにしか「生」も「死」も存在しない。』

『あるお母さんの話です。
 妊娠十ヶ月に入り、今日にも明日にもと、生まれる日を待っていたお母さんは、胎動がないことに気付きました。胎児は母の胎内ですでに輝きを失っていたのです。亡くなった胎児でも、母親は産まなければならないんです。
 そのお母さんは、ご褒美のない陣痛の痛みに耐え、命を輝かせることのない胎児を出産しました。泣かない赤ちゃんを母親は泣きながら抱きしめます。もう、それしかできない。それ以上のことはできないのです。
 お母さんは、「この子を一晩抱いて寝てもいいですか」と私たちに尋ねました。夜中に看護師が見回りに行くと、母親は、窓から差し込む月明かりの下、ベッドの上に座り、子どもを抱いていました。看護師が「大丈夫ですか」と声をかけると、その母親は「いまね、お乳をあげていたんですよ」と答えました。看護師は一瞬、驚きましたが、黙ってしばらく様子を見ていると、母親は、一滴、二滴とにじんでくる母乳を指に取り、それを赤ん坊の口元に運んでいたのです。
 どんなに、そのお乳を飲ませたかったことでしょう。どんなに、授乳する日を夢見ていたことでしょう。』

『いのちと向き合う仕事を続けてきて思うこと。
 「人はそこにいるだけで価値がある」
 
あなたのお母さんは自分のいのちを削って、あなたを産みました。そして、お母さんは、あなたを抱き、「あなたに会うために、私は生まれたんだ」と思うのです。』

『あなたが一人、人として生まれてくるために、どんなに多くの困難を乗り越えなければならないことか。生まれてきて、この瞬間に、ここにいることの「すごさ」を知ってほしい。そしていつか親になる日が来たとき、自信をもって、堂々とした親になってほしいと思っています。』


 初めて息子を抱いたあの瞬間の景色はずっと脳裏に焼き付いています。 
 どれだけ待ち望んだ瞬間だったことか…
「生まれてきてくれてありがとう」と涙を流しながら思いました。


 自己嫌悪になったり、自信をなくしたりすること、恥ずかしながら私は毎日のようにあります。でも、この大切な存在がそこにいてくれるだけで「どれだけ幸せなことなのか」をこの本があたたかく教えてくれました。


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