花市場がデジタル化するんだけど、これだけは言いたい

私はフラワーギフト専門店のMORIYAというお店を営んでいるのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、大阪を中心とした花流通が劇的に変遷している今を感じています。

今までの花流通

農家→花市場→花屋
      →問屋→花屋

花鉢であったり、大手の業者であれば、農家さんとの直接取引もありますが、流通の効率化の観点から、花流通は各地卸売り市場を経由されます。

今までは、朝6時半からオークションルームでセリが開始され、日本各地から送られてきたお花たちをセリ落としていきますが、コロナの影響で、オークションルーム内が3密になるということで、オンラインを利用した在宅セリが開始されるようになりました。

デジタル化するということは、何らかの効率化が期待できるものの、何のためにデジタル化するのか、その先に誰しもが幸せになるためのビジョンが必要となります。

その時の状況に応じて変化することは必要なことですが、どのように変化するのか。変化することが目的にならないように考えなければなりません。

※変化※
・セリが当日の早朝6時半→WEBで前日の午後19時開始
・WEBで前日の11時から予約注文できる
・WEBで前日の15時から市場と金額交渉できる
・予約注文が増えて、WEBセリに出る花の量が減少
・セリでのお花の量減少に伴い相場が上昇
花市場のメリット
・感染症対策になる
・予約注文が主体の取り扱いとなり、価格決定権を持つことができる
・セリ主体よりも相場が上昇し、売り上げが上がる
・取引単価が上がると、産地を呼び込むことができ、更なる売上向上が期待
・オペレーションの効率化により、人件費抑制効果

このように、花市場側には多くのメリットがある反面

花屋のメリット
・感染症対策になる
・価格の相場が上昇することによって、更なる産地の参入が期待

花屋のデメリット
・今までよりも相場が上昇する
・セリだけでは花が揃わないので、予約注文システムの使用必須
・予約注文のシステムを利用するために利用料が別途必要
・予約注文をする際の価格決定権が市場側
・花を引き取る前日の19時から仕事をしなければならない
・同業者同士の接点が薄くなる
・デジタル化についていけない花屋は参入できない

このように、単なる変化というよりも、厳しい条件が目白押しです。
せっかく、デジタル化したというのに価格面やコミュニケーション面において中央集権的なシステムになっており、自由な風潮が見えなくなっています。

せめて、産地と花屋のコミュニケーションが容易となるSNS機能を付与して、お客様の動向や、仕入れたお花の品質のフィードバック、今後期待したいお花の品種リクエストなど、お互いに情報交換できるようにすることが必要だろうと思います。でなければ、結果的に業界全体や、お客様を含めた世の中全体にデジタル化した効果が発揮されません。

供給側のみに都合のよくなったシステムは、今、社会に必要とされているデジタル化とは言えず、抜本的にシステムをより良いものにしたものとは言えず、デジタルトランスフォーメーションの一部分も掠っていない、統制的なシステムだと言えます。

花業界は今後、異業種のプレイヤーの出現によって、この統制的なシステムの外で新しい花流通が生まれることになると思います。そうでなければ、社会に対して、今のデジタル技術を十分に還元することができないからです。

流通はより正確で、より安全に、そしてより効率的に、生産と加工、消費へと流れるように進んでいかなければなりません。破壊的イノベーションが起こるような問題や課題を、我々業界の人間が提起し続け、新しいプレイヤーと協業しながら、未来の姿を創造し続けなければならない。そういう岐路に立っているんだと心に銘じたいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?