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「岩手県内9割 小規模コメ農家赤字」江戸から続く3ha未満の米農家の長男が令和3年度の米づくり収支を試算してみた

森暮らしのsamです。下記ニュースがTwitterで目に入り、皆さんの反応を見ていたら、意外と農家にしか知らない情報があるのではないかと思い、Noteにまとめることにした。

岩手県内9割 小規模コメ農家赤字 県試算、3ヘクタール未満

私の実家は宮城にある、江戸時代から続く、3ha未満の小規模米農家です。

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(今年の米の写真。ひいばあちゃんはこの米で90歳まで元気に生きた。私史上日本一のコメです。)
そもそも農協にも出しておらず、自家消費として食べていた米。
私が把握するまでは、収穫量が厳密にいくらかすらも把握していなかった。

なぜ米を作っているのかと親父に聞いた

「代々受け継いできたものを絶やしてはいけないから。荒れ果てた田畑は近所迷惑になるから。親戚や孫に食べさせたいから。趣味。健康づくり、食糧危機に備えて...」などといった言葉が出てきた。

つまり儲けようと思って米作りをしていなかった。加えて父に質問した。

米作りにいくらかかっているのかを聞いた

「米作りに毎年いくらかかってるの?」
「いや、それ、みたくないんだよな。やる気がなくなりそうだから。だからあんまり把握してないんだよ」と。

試算してみたら...毎年25万円の赤字だった

実際に今年の米づくりでかかった領収書を全部見せてもらって試算した結果がこちら。悲しすぎて見せられない。

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(不足がある場合がありますのと、耐用年数などあくまで参考値となります。ビニールハウスを新規で建てるなどすればもっとかかると思います。)

実際ほとんどを売りに出していないので、60万円程度が毎年お米づくりで財布から消えている試算となりました。

これ、親父が死んだら私が引き継ぐのか。まじか...。

引き継ぐことができるのだろうか...。補足していきます。

収入(仮試算)

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今年の農協取引値は、玄米1kgあたり150円だった。つまり、我が家は大体2ヘクタールで収量2.2トンなので、仮に農協に全てを売りに出した場合は、33万円となった。

支出(変動費)

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シンプルに計算するため、支出を固定費変動費で分けている。
農薬が占める割合が一番高い。農薬は毎年農協から買っている。

我が家は初期除草剤以外は、ほとんど農薬を使わず、代わりに木酢液などで防除している農家なので、コストは低い方であるはず...と思い込んでいた。それでも高い。2haあたり4万5千円

農薬には色々と否定意見があるが、実際健康被害はほぼないように研究開発されている。優秀、ゆえに高い。

最低限作物を収穫するには最低限の農薬が必要なのである...と父は話す。農薬を父は数十年かけて木酢液やそのほかの手段により持続可能な方法に代替している。今後も試行錯誤するらしい。
(モミから玄米or白米への精米費用2.2万円は、都度発生するので今回の合計には含めていません)

支出(固定費)

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コンバインが占める割合が一番高い。農業機械がそもそもはちゃめちゃに高い。耐用年数を踏まえて、1年あたり暫定でいくらかかっているかをまとめたところ、コンバイン、10年しか持たんらしい...。

1年換算にすると、約30万円である。機械で、ほぼ収入がフライアウェイ。

参考:コンバインの寿命:コンバインは約10年の耐用年数があり、稼働時間は約1000時間ほどになります。
URL:https://www.noukinavi.com/blog/?p=11394

お米づくりで採算を取るには

収入を増やすか、コストを減らすか
の2択しかない。

機械(コンバイン)なしの農業は、ほんとにしんどそう(私も幼少期に何度もはざかけを体験してきた)なので、持続性を考えると、機械は使いたい。なので、今回は収入を増やすには、の方を検討してみる。

収入を増やしてみる

例えば、直販で売って、農協に下さずに、玄米1kgあたり300円で売れた場合はどうだろう。(送料は考えない)

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黒字になった!!!(人件費はありませんが)

まとめ

直販で大体kg300円(270円以上)で売れれば、2ヘクタールの小規模コメ農家でも、採算は(一応)取れることがわかった。

他にも、精米・炊飯しておにぎりにするなど、加工して売ったりすればkgあたりの単価は上げることができるのだろう。(人件費は考えない)

日本の小規模農家の農業は、いったい誰が引き継ぐんだ...

現在、日本の農業従事者の平均年齢は60歳を超えている。

平野部で、大規模に集約農業できるところは良いと思うしもっと採算を取る方法はありそうだ。

しかし山間部の農家は、農地が一箇所にまとまっておらず、バラバラ。集約するのも難しく、機械を動かすのも一苦労である。

私は、親父が死んだ後に、これを、継ぐことができるのだろうか。

私一人に何ができるのかわからないが、事実を書き連ねた。

これが岩手県にほど近い小規模コメ農家の現実であった。

日本の米作りの未来に幸あれ。

もしも弊米をサポートいただける方がおりましたら、お気軽にお声がけくださいまし。美味しいよ。

○Facebook

小規模米農家の皆さんへ。コメ作り試算シート(簡易版)を共有します

よろしければ皆さんも試算してみていただき、結果をシェアしてみませんか。お米の社会的価値が少しでもアップしますように。↓

森暮らしsam

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