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SSC03『空想を呼び声として、』

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仲西森奈による連作掌編小説「ショートスパンコール」シリーズ第3作目(予定)『空想を呼び声として、』のnote版です。 50編収録。2024年8月時点ではすべて無料で読むことがで…
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2024年8月の記事一覧

0119「オリエンタル・チャーム」

【総勢一人の百鬼夜行】 https://■■■■■■■■■■■■■■■■.hatenadiary.org/ 2010…

0118「梶沙耶の愉快な一年(7)」

 風光り罫線で支えた言葉

0117「カーセックス(15)」

 ヤマグチとウチムラは見つめ合った。そして互いにフロントガラス越しの外の光景を眺めた。…

0116「練り消し」

 最初から故郷/地元があるんじゃなくて。産まれた場所、育った場所が故郷/地元なのではな…

0115「ゴールデンバージニア」

 HUBってなんか、名前はちょいちょい聞くけど行ったことはないな。京都にはあったっけ。な…

0114「カーセックス(14)」

 アサイはツジとお風呂あがりに海まで行って、生まれて初めて漁火を見た。砂浜は暗くてだだ…

0113「木魚」

 京成線とJR総武線・東京メトロ東西線の線路に挟まれたエリアには勝間田公園っていうひらけた公園があるんだけど、その隣には葛飾神社っていう地味めの神社があって、公園と神社の隙間には人ひとりぶん程度の横幅の道があって、その道沿いに俺の住んでいる一軒家がある。ベランダからは公園の広場が一望でき、玄関を出ると神社の境内が木々の連なり越しにわずかに見え、風景だけ取ればのどかだが公園と神社の目の前は千葉の中枢と東京の日本橋を繋ぐ国道14号線で、昼も夜もあらゆる車、あらゆるトラックがひ

0112「サガミ」

「サガミ。嵯峨見奈美です。わたしにはいくつかの名前があって、そのうちのいくつかはもうこ…

0111「枕カバー」

 街なかでブルーリボンのパネル展示が行われていて、それだけなら素通りするはずのエマの歩…

0110「村長」

 はじめまして、村長です。平成がまだ打ち消し線を引かれた飲食店の但し書きで、Windows Me…

0109「財力」

 その町には海があった。  海、と言っても、水たまりのようなささやかなものだ。すくなく…

0108「自転」

 くるまの車輪が球状だったらと思ったことはこれまでに一度もなかったが、想像してみると楽…

0107「ローソン」

 1  エレベーターの扉が開き、つま先あたりを見るともなく見ていた状態から顔を上げると…

0106「ポーズ」

 まばらな街灯に照らされてゴミ捨て場に可燃ごみ不燃ごみ粗大ごみ資源ごみをドコドコ捨てていくおれは今年で百二歳。  亀の甲より年の功とは言うけれど、ひとさまの言うことなんて鵜呑みにしていたらそれこそ鵜に丸呑みされちまうぜ。  百二年生きてきたって、自分の性格とか性質とかそういったものはどう足掻いたって変わらないものは変わらない。ああもう正味な話、ガチでな。だからこんな夜も更けきった、誰もいない時間帯に大量のごみを捨てている。ご近所の顰蹙を一身に背負わなくちゃいけない。ファッ