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シークエンス:1-1「静止と乱視」

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仲西森奈による連作掌編小説「ショートスパンコール」シリーズの、シークエンス単位のマガジンです。 ショートスパンコールという作品群はいくつかのストーリーライン/シークエンスに分か…
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記事一覧

0150「予言」

 稲盛総一朗が市役所を出て駐車場へ向かうと、ひとりの女性が車の前に立っていた。 「どう…

0148「屋上」

 甲州街道裏の緑道のてきとうな場所に自転車をとめて、エマは古びた細長いビルの階段を上が…

0145「記念撮影」

ファイル名:写真 2013-05-09 15 53 39.jpg 種類:JPEGイメージ サイズ:2,104,900 バイト(…

0144「献立」

 それ、ぼくの同居人かもしれないですね。詰め所で噂話に興じていた私たちの前を縫うように…

0139「卵」

「こんにちは。坂東卵です。らん。みだれる、の乱。花の蘭。英語で走るはrun。アンケート用…

0138「エネルギー」

 早番を終え、自転車にまたがり、青山霊園を通って迂回する形でエマは新宿へ向かった。赤坂…

0134「ボクサーパンツ」

 洗濯機から取り出した衣類のなかに糸井くんの下着が混じっていて、そういえば籠に入れていたな、とわたしは思い出す。  半月ほど前の仕事終わり、わたしは糸井くんと一緒に家に帰って。ごはんを食べて、ベッドでセックスごっこをして、そのまま朝まで寝落ちしてしまって。ベッド脇に脱ぎ散らかした衣類のなかから自分の下着を見つけられなかった糸井くんは、遅刻するからとノーパンで家を出た。わたしはその日、病院に行くために午前休を取っていたから、糸井くんと一緒には出なかった。注射を打って、出勤し

0125「妻」

 楓にはふたりの親友がいる。真緒と亜里。社会人になってから知り合った三人だったし、銘々…

0124「ドロシー」

 京都の夏は暑いというより重たく、冬は寒いというより鋭い。 「でもカジさん。オズの魔法…

0123「秘密」

「ふう。ああごめんごめん。お待たせしちゃって。ええと。ここでいい?ここでいいのかな………

0120「プール」

「佐倉造です。アキさんの店の二階に居候、っていうか住んでいて、でもぼく、ヨシノさん?の…

0119「オリエンタル・チャーム」

【総勢一人の百鬼夜行】 https://■■■■■■■■■■■■■■■■.hatenadiary.org/ 2010…

0116「練り消し」

 最初から故郷/地元があるんじゃなくて。産まれた場所、育った場所が故郷/地元なのではな…

0115「ゴールデンバージニア」

 HUBってなんか、名前はちょいちょい聞くけど行ったことはないな。京都にはあったっけ。なんかあったような気もするし、なかったような気もするし、なんにせよ行くのははじめてだな。渋谷駅からHUBへと向かう短い道のりのあいだ考えていたことのほとんどそのままを、エマは短くまとめて独り言のようにして、すでにギネスビールをちびちび飲んでいたジョージに投げる。そうなんだ。まあ楽しもうよ。みたいなことをジョージは言って、持っていたパイントグラスを掲げて控えめに微笑んだ。それで一旦席を立っ