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家政学における洋服の歴史ーー刑部芳則著『洋装の日本史』を読んで

刑部芳則著 集英社インターナショナル新書 2022年出版

 最寄りの本屋さんでプラプラ散策してたら、出会った本。面白そうだと思って購入。

 ファッションの研究ってもっとされてもいい、と最近私は言い続けてきたけど、家政学の分野でこういう洋服の歴史が研究されているのは、常識だったのかも、と、この本読んで改めて気が付いた。でも、もちろん、私がファッションの研究ってもっとされてもいい、と言っているのは、こういう家政学的な研究ではないけど。でも、家政学的な研究って若干、歴史史実に基づいてない不確かな情報が飛び交っているような気がした。というのも、この本、「だれだれのこの本に書かれていることは、全く持って事実ではない」、という発言がすごく多い。そんな間違ったことが本当のことのように伝えられているのか、と思った。

 例えば、「関東大震災が女性の洋装化に影響を与えたという根拠のない神話」という文章があったが、そんなに関東大震災が境目になった話が定説になっているのだろうか。あと、どこかの建物で火事があったとき、女性が下着を身につけてなくて、高いところから降りられなかったという話もあったが、それも洋服の歴史には関係のない話らしい。後者はどちらかといえば、ジェンダー的な話になったら、おもしろそうだ。しかし、こういう歴史的事実と思われている話は、どこからきているんだろうか。新聞に書かれた話なのだろうか。どういう調査をしているのか謎だ。

 「政府内で主導権を握った旧藩士たちが洋服・散髪・脱刀を採用したのは、外見から身分制をなくすためであった。公家と武家の髷の違い、天皇から与えられた位階の上下によって着る色の異なる衣冠などは、四民平等とはかけ離れていた。したがって、公家・藩主・藩士といった身分の差、さらには農工商民との違いをなくしたのである。」p. 36

 という箇所は興味深く読ませていただいた。「外見から身分制をなくすため」というのは、現代における制服と一緒で、そういう考え方から洋服が導入されたと考えるのは、納得できるようで出来ない。多分、洋服が日本に入ってきたころから、法律とか制度の導入が始まったのかもしれない。と思うが、服飾史は割と複雑だと私は思う。だからファッションの研究の方が、流行とかそういう問題を取り入れられると思うから、多分楽なように思う。

 「従来の服飾史では、明治時代を迎えて到来した文明開化という結果論を当初から予定されていたかのように見なしている。なかには幕末から洋服を着ていた日本人がいたと読者に誤解を与えかねないものもある。」p. 51

 という記述は重要であろう。でも、多分、「文明開化」という捉え方が間違っていたら、多分、こういう話はすべて説得力を持たない。


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