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【読書感想】スペイン文学に触れるー『グルブ消息不明』を読んで

 エドゥアルド・メンドサ著 柳原孝敦訳 東宣出版 2015年出版

 スペイン、バルセロナ生まれの著者。英語やフランス語の翻訳だけでなく、いろんな外国語の文学に触れてみたいと思って、図書館で借りた。

 宇宙人の主人公が、グルブという名の宇宙人二人で地球にやってくるんだが、始めからグルブが消息不明になっていて、主人公の宇宙人は人間と住みながら、グルブの行方を追う。結局グルブに再会するのだが、グルブは、人間の女性として生きていて、男にモテモテで、それに愛想つかして主人公が宇宙へ帰ろうとする。グルブも行こうとするのだが、結局、どこかへまた行ってしまって、話は終わる。

 この本のタイトルになっているグルブとの関係はあんまり書かれてなくて、主人公の宇宙人が人間といかに人間離れした自分と折り合いつけてやっていこうとするかが、書かれてる。日記風になっていて、日ごと時間ごとをおって、書き出されている小説なんだが、読みやすくて、始終楽しい気分で読み終えた。

 訳者のあとがきを読むと、当時のバルセロナはオリンピック開催を目前としていて、町が大改革されようとしているバタバタした雰囲気の様子があって、それがこの小説に盛り込んであるそうだ。そうだとは気がつかなかったが、バルセロナの町の雰囲気が、ヨーロッパのフランスとも違う、アメリカとも違う、スペイン固有の町の様子を表している。

 宇宙人がいちいち、夜寝るときはパジャマに着替えるとことか、チューロ(チュロス)が好きで食べまくってるとことか、朝からバルで、茄子と卵の炒め物をビールと食べるとことか、なんかいいな、と思った。

 この宇宙人、外形が定まっていないらしく、いろんな人をモデルにして変身して出かける。多分、実態は男も女もなくて、グルブはどうやら女の役目として人間にモテてるようだが、主人公にとってはグルブを「彼」と呼び続けているし、摩訶不思議な宇宙人の話だった。

 テレパシーで君たちが話すと、テレビの音に混ざって聴こえてきてうるさいのよ、と当たり前のように言う隣人もなんだかおかしかったし、宇宙人の変なとこが普通に受け入れられているのも、なんなんだ、この違和感のなさは、とスペイン人が好きになった。

 スペイン人のジョークってどんな感じなんだろう、と思った。この本に盛り込んでいると思われる笑いを私は把握できているのか、ちょっと不安だった。


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