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【読書感想】思春期の娘ー伊藤比呂美著『伊藤ふきげん製作所』を読んで

伊藤比呂美著 新潮文庫 2004年出版

 娘が13歳の頃のことが書かれた古い伊藤比呂美のエッセイ。今回は、このエッセイの復刊がでたということで、感想文を書いてみた。

 こどもの思春期、反抗期のことなどが書かれている。もし、自分が娘だったら、こんなに赤裸々にいろいろ書かれてていやだな、と思ったけど、たぶん、子育てしている人は、子どもの思春期などでいろいろ悩みを抱えているだろうから、こういうエッセイを読めば救いになるだろうと思う。子育てしてなくても、昔、自分もそうだったな、そのとき親はこんなこと考えていたんだな、と思ったりして、母親のことを思ったりした。

 一言で言って、伊藤比呂美はものすごくタフだ。子どもが拒食症になってしまったときも、自分の経験から、そんなときはどうすればいいか考える。思春期の子供のことをめんどくさいと思いつつも、愛情いっぱいのまなざしで育てている。ステップダッドとのやりとりも、アメリカと日本という文化の違いが立ちはだかる中、愛情をもって接していたことが分かる。でも、実親としての父親とは違う、ということを、はっきりと子供にいうところなど、アメリカの自立した個人として生きている人間を感じる。伊藤比呂美の文章がとても軽快だからこそ、壮絶な子育てをユーモアたっぷりに語ることができているのかもしれないが、どこか伊藤比呂美自身が思春期の子供と対等な関係を築いていることが伝わってきて、だから、こんなに軽く感じるのかもしてない。伊藤比呂美のエッセイはいつもそうだ。自分の身に降りかかってきたら大変すぎて苦労が多い私、同情して、と思ってしまうようなことでも、彼女は決してそんな風には書かない。読者に媚びてないし、こんなに私は苦労したんだ、ということを、見せしめることもしない。

 しかし、思春期の子どもってなんであんなにめんどくさいんだろうね。自分のこと振り返っても思うし、人の話を聴いても思う。それにつきあってる親も、子どもがなんなんだ、と思うだろうと思う。思春期の子供は大人とも子どもとも言えない変な生き物である。


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