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【読書感想】大学院生の恋愛ー島本理生著『よだかの片想い』を読んで

島本理生著 集英社文庫 2015年出版

 島本理生の小説。今年の三月になんとなく読みたい本リストに載っていたこの小説を図書館で借りて読んだ。今回、映画になるということで、感想文をnoteにアップしてみたい。

 顔にあざがある、大学院生の女の子と、映画監督が恋に落ちるお話。二人の間に交わされる会話が両者執拗に自分というものに対する言葉が多くて、こういうカップルっているのかな、と思った。ここまで自己探求できる恋愛って最近あるんだろうか。うらやましい。大学院生の生活風景も自分とは全然違うけど、こういう小説って珍しいと思うから、多分読んでみたい本にあげられていたのかな、と思った。大学院生が主人公の小説って少ないよな。千葉雅也の『デッドライン』が一番修士課程の学生と研究過程が良くかけていると思ったけど、この島本理生の小説も、ちょっとした院生の恋愛が書かれていて、こういう人もまあいるとは思う。最終的には同じ研究室の若い同胞に好かれてそれで淡い恋が成就して、好きだった映画監督とのちょっと背伸びした無理ばかりしていた恋愛が終わるんだけど、その構図は分かりやすい。

 島本理生ってデビューした時は若すぎるイメージがあって書くものもそういう感じな小説なんだろうなと偏見があった。確かに恋愛小説ではあったが、一人の人が人を好きになる気持ちが非常に抽象的な次元だけでなく、それをうまく言語に落とし込んでいる気がしてちょっとこの本読んで、尊敬した。とにかく読みやすくて、先が気になってどんどん読んでしまった。


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