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【読書感想】マンガ、アニメ研究のはしりーー斎藤美奈子著『紅一点論』を読んで

斎藤美奈子著 ちくま文庫 2001年出版

 なんかの本読んでたら、面白そうだと思ってチェックしていた本。図書館で借りて読んだ。

 アニメ、テレビ、宮崎駿作品、子どもの読み物の伝記、などで扱われるヒロイン像について述べられた本。軽く読めて、笑える。それでいて大事なことも、いっぱい言っている。斎藤美奈子さんは、毒舌なんだが、嫌みったらしくなくて、ユーモアを感じる文章を書く人。

 この本の前半は、アニメや特撮に出てくるヒロインについて書かれているんだけど、その紅一点の図式が結構単純でなんか時代を感じた。取り上げられる番組などが、女性の描き方が典型的なステレオタイプとして確立されていて、読んでいて、斎藤美奈子が単純に捉えすぎているのではないか、とちょっと思ったが、でも、どれもぴたりと彼女が言っていることが当てはまって、やはりアニメの作り方はとても単純だったんだな、と思ったし、フェミニズム思想が流行る前はこんなだったのか、と思った。はっきりいって、子どもに観させたくないと思った。

 でも、最近は、アニメ研究なども盛んにされてきているのを読んでると、ディズニーとかで描かれる女性が変わってきたというじゃない?私は見てないから知らないけど、最近の若い研究者の本によると、アニメもマンガも奥が深い。はじめは、宇野常寛の本を私は読んでて、仮面ライダーとかウルトラマンを研究として成り立たせてる彼はすごいな、と思っていたが、この本読んだら、斎藤美奈子のこういう本が前に出版されていたことは、今のこういう研究にとって足場を作ってきたんじゃないかと思った。私がアニメやマンガ研究者だったらとても鼓舞されると思う。

 確かに斎藤美奈子は女性の描かれ方に焦点をあてているが、子どもがふれるアニメや児童書である伝記に、単純化できる女性の姿しか描かれてこなかったのは、まぎれもない事実であると思った。でも、それだけではない。その後、宮崎駿の作品や、ジャンヌ・ダルクなどを取り上げ、「紅の戦士」についても論じる。また、紅一点ではなく、女の中に男一人のエヴァンゲリオンなんかにも、論じてある。斎藤美奈子はフェミニズム的な視点から一方的に書いているのかと思いきや、私はマンガやアニメ研究のはしりでもあると思った。


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