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【読書感想】「名前のない家事」のやっかいさ―阿古真理著『家事は大変って気づきましたか?』を読んで

阿古真理著 亜紀書房 2022年出版

 阿古真理さんの『小林カツ代と栗原はるみ』を読んだとき、料理家の二人の名前から、こんなにしっかりと研究した本が書けるのか、と感動した。料理や家事が研究として成り立っていて、読み応えのある本であった。なので、noteで阿古さんをフォローしてたら、この本を紹介していたので、読んでみようと思った。

 「はじめに」に、「中心と据えたのは、子育て期の男女カップル」とあって、独身者の私としては、ちょっと気が引けたが、読んでみた印象は、女性全般のことを考えられている本の構成である思った。家事や家のことがこんなに歴史やフェミニズムのことも含めて、研究してらっしゃる阿古さんを本当に尊敬した。

 確かに途中で、家族を羊飼いの羊としか思っていない夫のことが述べられているところなどは読んでて、こんなこと結婚して一緒に住んでる男性に言われたら、たまったものじゃないな、やはり独りでもいいな、と思ってしまったが、最後はケアについても書かれていて、親の介護が必要かもしれなくなってきた私は現実味があった。

 「名前のない家事」というのがやっかいなんだな、ということを読んでいて思った。阿古さんは「気配りの結果生まれるもの」といったがまさにそうで、そして、それはどちらかというと、几帳面か、雑か、気にするかしないか、とかそういった個人的な性格が表れる話である。それは、仕事でも「なんでもない雑用」と同じだと私は思った。例えば、「給湯室にあるふきんを洗って干す」や「お茶出し」などがそうだ。それは特に女性やパートの仕事として回ってくるのが一般的だが、そこまで大きくない部署だと、そういうのを率先してやる人とやらない人が出てくる。そうなると、女性に回ってくる。特に困った職場だと、姑みたいな人がいて、その雑用に文句をつけてくる人が必ずいる。かなり、私の偏見が混じっているが、女性だけのパートや雑用を任されるアルバイトを経験してきた私としては、ひしひしと感じた。そういう雑用は価値観の問題がかなり影響してくる。そこがさらに「女性だけの問題」とされている感がある。阿古さんは最後のあとがきに家事やケアなどの「家のこと」は「プライベートで取るに足らないことで女性の問題、と思われてきた」といっているが、かつて、こういう研究が成り立つと思っていなかった私もそう思っていたのかもしれない。それでいて、こういった「名前のない家事」は現実的な価値観が露呈される場面だからやっかいで、家事研究はこういうことが述べられてないと意味無いとも思った。雑用の仕事も誰でもできる仕事だが、いわゆる「女性の仕事」として会社が女性を雇用して働かせているから問題だ。そしてそこにそれぞれのやり方があって、事細かに言われたりする。それは、「名前のない家事」と同様だ。そんな仕組みを考えていた。

 結婚とはそもそも違う価値観を持った二人が一緒に生きていくことだから、生活の仕方が違うのは当然のことという了解のもと結婚するんじゃないのかな、と漠然と思った。一緒に住むとそれが目に見える形でぶつかるからやっかいなのだ。私はそもそも男女区別なくみんな一人暮らしを一度は経験するべきなんだと思う。経済的な理由ももちろんあるだろうが。シェアハウスでもいい、結婚する前に、自活することを親は強いるべきだと一人暮らししている私としては思った。それは、阿古さんがいう、子どもに「自分のことは自分でする」を習慣づけるということだと思う。かくいう私は、中学の頃寮生活を経験したため、友達の洗濯の仕方など見てきて、洗濯機に入れる前に手洗いする人などを見て、いろんな人がいるんだな、と思った記憶がある。私の母は、「私がそういうのやらないからだね。ダメな母親だね。」と笑いながら言っていたが、家庭は人それぞれ。自分の家族以外の世界を除いておくのは将来のためになる。なるべく小さいころから他人の家庭を覗き見る機会を持つべきだ。そのために会話がなされなくてはならない。

 この本はぜひ男性にも読んでほしいと思った。


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