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【読書感想】内田樹の『街場の文体論』を読んで

『街場の文体論』 内田樹著 ミシマ社 2012年出版

 内田樹の神戸女学院大学での最後の講義をまとめたエッセイ。

 クリエイティブ・ライティングの講義だが、前半は結構具体的な書くことについて、後半はエクリチュールのことについてなど、フランス思想が散りばめられて書かれている。読後の感想は、とても読みやすい本だったということ。内田樹ってこんな分かりやすいイメージなかったな、と率直に思った。というか最近合気道やってる人というイメージの方が強くて、仏文学者だということを忘れていた。でも、仏文学会を脱会した話など、若手の研究者が業績作るための発表だったり、みんな重箱の隅をつつくような研究ばっかりでうんざりした、というのはなんとなく、ふーんそうなんだ、と思った。自分は在学中どうだったかな、と考えてみたら、確かに、徐々に隅をつつくような研究になりつつあったな、と思った。それで、どこかで、つまんないな研究、と思って、大学院を退学したように思う。新しい研究をしようと思ったけど、そこまで手が広がらなかった。

 内田樹さんが書いているものを読むと、なんでこんなに頭が柔軟でいられるんだろう、と思うところがある。この本もとても分かりやすく書かれていて、こんな講義を学生時代に受けていたら、もっとはやくに、「書くこと」についていろいろ考えていたかもしれない、と思った。

 私が大学に入った時、大学の教授は尊敬できる人ほど、なにか質問をすると「いや、良く分かりません。」と正直に答える人たちだな、と思った。それまでの学校で教わった「先生」とは。明らかに違った。自分も、年をとればとるほど、何か聞かれると、「よくわかんないな」と答えたくなることが増えた。おかしい。大人になればなるほど、分かることが増えて、答えを簡単に一言で答えられる人になると思い込んでいたが、そうでもなかった。こんな大人に私はなってしまったんだが、いいのだろうか。

 この内田樹さんの本を読んだら、すぐ答えはみつからないけど、自分が勉強してきたことをもっと柔軟に人に話せるような大人にならないとな、と思った。


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