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墓じまいにはお金がかかる?離檀料問題は本当に存在するのか(2)

前回の続き

前回のnoteでは,

・「離檀料」を請求されたという記事をしばしば見かける
・離檀料はその金額も位置づけも明らかに法外なものとしか考えられない
・お寺,僧侶の名前はほとんど公表されていない
・本山や教務所から注意,指導が行われるべき
・悪質なお寺を見つけたらご連絡ください

ということを申し上げました。

「本当に離檀料を請求するお寺が存在するの?」と疑わしく思っているのが私の立場です。今回は,なぜ私が離檀料問題に疑いの目を向けているのか,離檀料問題が事実でないとしたら,これだけ「離檀料」がさかんに言われている背景にはどのような要因が影響しているかについて,考えていることを書かせていただきたいと思います。

記事の信ぴょう性が乏しい

前回も申し上げましたように,こうした記事に僧侶や寺院の具体的な名前はほとんど示されていません。書いてあったとしても,この産経新聞の記事のように「東北の…」であったり,「○○県の△△宗寺院」といった地方や県名,どこの宗派か,といった情報にとどまっています。

繰り返しになってしまいますが,大阪府松原市の本願寺派僧侶があおり運転をした問題では,あっという間に住職の名前,所属寺が特定されました(テレビのニュースで,そのお寺の門が映ったことが大きかったと考えられます)。

あおり運転をした僧侶やその所属寺はすぐに広まったのに,離檀料を請求したお寺はその名前が明らかにならないのはどうしてでしょうか?もしかしたら,実名を言えないような事情があるのではないでしょうか?

「××はブラック企業!」という評判が実名つきで広まっている会社はたくさんあるのに,どうして違法ともいえる額の手数料を請求したお寺の名前は明らかにならないのでしょうか?名前を出さないよう根回しをしたり,圧力をかけたりしているのでしょうか?(そんな権限があったらすごいですね)

名前を出しづらい事情

大阪府松原市のあおり運転事件のニュースを調べていて,このような記事を見つけました。

あおり運転をした住職のお寺のすぐそばに,同じ名前のお寺があり,人違いにもかかわらずさまざまな誹謗中傷に遭った,というものです。「ガラケー女」に間違われた女性が悪質な嫌がらせを受けたのも記憶に新しいと思います。

本当かどうかもわからないのに,不確かな情報に基づいて加害者の名前を調べ,公開することは慎まなければなりません。インターネット上で「特定班」と呼ばれる人々は「間違いだったらどうするのか」ということを考えていないのでしょうか?

僧侶やお寺の名前を出せない背景には,「人違いだったらどうしよう…」という不安も影響しているのかもしれません。それならなおさら,どこの誰かもはっきりしない,事実かどうかわからないエピソードは,記事としてふさわしくないと思います。

本当に実在していたら申し訳ございません

ここまで,さんざん「離檀料って本当にこの世に存在するの?」と疑ってきましたが「こうした心ないことを言われて,苦しんでいる方がいらっしゃるのも事実」「人ごとと思ってるんじゃないの?」とお考えの方もいらっしゃると思います。

もし,記事に書かれていることが事実であれば非常に憤りを感じますし,きわめて遺憾に思います。この場をお借りしまして,お詫びしますとともに,仏教界全体の問題として取り組んでいくために,さらなる情報提供をみなさまにお願いしたいと存じます。人ごとではないからこそ,不適切な活動をしている僧侶を注意しなければならないからです。前回,請求書や領収書を添えていただけると嬉しいです,と申し上げたのは,うそや人違いによるトラブルが起こるのを防ぐためです。

このようなニュースが出回るばかりで「違います!うちは大丈夫です!!」「なんで業界全体が問われていると思えないの?」と言い争っていて改善につながらないのは,すべての人にとって大きなマイナスであると考えます。根拠のはっきりしない記事をうのみにし,否定しないことが,よくいわれている「人々の悩みや苦しみに寄り添う」ことではないはずです。

「めちゃくちゃな活動をしている寺院および僧侶は,宗門の処分の対象になりうる」あるいは「高額離檀料問題は実際には存在しない,もしくはごくごく少数の特殊なケースである可能性が考えられる(○○寺という具体名がでてこないのはなぜか?)」ことを示すのが,不安を和らげる適切な方法ではないでしょうか。「そんなお寺があるんですか!!ひどいですね!」といったん受け止めるのも有効かもしれません。

いったい誰が得しているのか?

「墓じまいをしたいと言ったら,高額な離檀料を要求された…」という記事は,門信徒の方を不安な気持ちにさせますし,真面目に活動されているご寺院からすれば迷惑以外のなにものでもありません。このニュースは,いったい誰にどんな利益があるのでしょうか?

ひとつ考えられるのは,「既成の仏教教団のお寺はこんなにひどいところなんですよ!!」とネガティブキャンペーンを行うことで,自分やそれに関連した人々のビジネスに誘導する,ということです。「僧侶」「離檀料」「墓じまい」「○○万円」という言葉だけを反射的に拾って読むのではなく,誰がこの記事を書いているのか,こうした記事を書いて得をするのは誰なのか,いったい誰に頼まれて書いたのか、文字の裏にある背景を批判的にみつめていくことが必要と思います。

日本の仏教は1500年近い歴史と伝統がありますが,改善しなければならない点が多いのは確かです。ご自身のお商売を熱心にされるのも結構だと思います。「うちのほうがいいサービスですよ!」とアピールするのは当たり前のことです。しかし,それが嘘や不確かな情報に基づいている宣伝なら,それはただの誹謗中傷です。

まとめ

・法外な離檀料を請求する寺院が,ごくごく少数ではあるが存在している…かもしれない
・僧侶やお寺の具体的な名前を示した記事がほとんどなく,信ぴょう性に欠ける
・こうした記事を書いたのは誰なのか,書いて得をするのはいったい誰なのか,文字の背景にある意図や思いを批判的に見つめる

お盆やお彼岸が近づくと,こうした話題をよく耳にしますが,確かでない情報に惑わされて,苦しむ,苦しめることがないようにしたいと思います。私の知る限りでは,離檀料を請求しているご寺院は聞いたことがありません。

このような僧侶や寺院を発見しましたら,私moriまでご連絡ください。請求書,領収書など,証拠になるものを添付していただけますと,大変ありがたく存じます。最後までお読みいただき,ありがとうございました。

合掌

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