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【短編】王子様は現れないけど、私もお姫様じゃない。
同棲までしていた恋人に裏切られて別れた本町香澄は一人暮らしを謳歌中。
そんな折、元恋人の木村龍樹と新しい恋人の綾野雫と街で出くわしてしまって。
新しい生活は悪くない
ちゅんちゅんと雀の鳴く声に意識が浮上する。薄く目を開ければ、細い日差しが昨晩脱ぎ散らかした服の上に差している。
(ーベッドで寝たあたし偉い)
まだ寝起きでぼうっとする頭で香澄はそう自分を褒めた。
今日は土曜日だ。経理として働く香澄は、月初と月末以外は基本定時で帰れる。昨日大学の友人から久しぶりに飲みにいかないかと誘われて飛んでいったのはいいが、少々調子に乗り過ぎたようだ。去り際の記憶が曖昧なのだ。
顔に触れると、化粧は落としてから寝たようだ。それにほっとしてから、むくりと起き上がった。
1週間を乗り越えた香澄の部屋の荒れようはひどいものだが、香澄はそれを自分に許している。
(働きながら家事も完璧って、無理じゃない?)
伸びをしてベッドから下りる。足にふかふかのスリッパを引っ掛けて、カーテンを開ければ外は快晴だった。とはいえ、隣のマンションの背が高くて見える空はそう広くはない。
耳をすまさなくても、隣人が回す洗濯機の音が聞こえてきた。古いアパートだから仕方ない。築年数より駅への近さと広さを優先した結果だから文句はないのだ。
東京のひとり暮らしでワンルームでも1Kでもなく、1DKに住めたら上々じゃないだろうか。まあ、何を優先したいかは人によって違うのだが。
脱ぎ散らかした服を抱えて洗濯機の前まで移動する。普通に洗うものと、おしゃれ着用洗剤で洗うものを分けてから洗濯機を動かした。
元カレの龍樹と同棲している時はドラム式の洗濯乾燥機を使っていたが、マンションを出るときに置いてきた。ふたりの給料で買ったものだったが、くれと言うのも面倒だったし腹が立つので辞めたのだ。
とはいえ、引っ越し費用やら家具家電を買い揃える費用を考えると、ドラム式はちょっと手が届かなかった。
顔を洗って冷蔵庫を開ける。中は寂しいものだったが買い過ぎないようにしているからこんなものだろう。運良く納豆が残っており、インスタントの味噌汁も見つけた。炊飯器は空だったが、冷凍ご飯が残っていたのでそれをレンジにかける。
ご飯が解凍されるのを待ちながらケトルでお湯を沸かそうとして手を止める。確か先日ケトルと電子レンジを同時に動かしてブレーカーが落ちたのだ。もしかしたらドライヤーも使っていたかもしれないが、念の為待つことにする。
ジーッという電子レンジの音、ガタガタと揺れる洗濯機の音を聞きながら、昨晩の友人との会話を思い出す。
『後輩に彼氏取られるとか、流行りの漫画じゃん!』
あははと園美は笑った。怒るより先に笑うのが彼女らしい。そう思うと、今でも唇が緩んでしまう。
『でも災難だったね〜。結構長くなかった?』
「2年付き合って、1年同棲してたな〜」
ふふっと香澄は笑う。あのまま龍樹と結婚するのだと思っていた。子どもはどっちに似てるだろうなんて想像して遊んでいた自分が滑稽で可愛らしい。
香澄は今年25歳になった。都内の会社で経理をやっている。同期で営業部に配属された木村龍樹は調子がいいところはあるが仕事は真面目に取り組む好青年として周囲からも認識されていた。
「まあ、だからだろうな」
そんな頼れる先輩を好きになるのは簡単に想像できた。龍樹はふたつ年下の後輩の綾野雫と浮気していた。雫は黒い髪に緩くパーマをかけたお人形のように愛らしい顔をした女性だった。小柄な彼女を「守ってあげたくなる」とか言われたら、確かにと頷いてしまうだろう。
雫は同性の香澄から見ても魅力的な女性だった。話を聞けば仕事ぶりも真面目なのだから、非の打ちどころはないだろう。あるとすれば、彼女がいると知っている男に声をかけたことか。あるいは彼女がいるのに可愛い後輩の誘いを断らなかった龍樹が悪いのか。はたまた両者か。
チンとレンジからレトロな音がする。この音が気に入ってこのレンジにしたのだ。オーブンなんて高機能は今の香澄には要らない。ケトルをかけてから、レンジから解凍したご飯を取り出す。少し温め過ぎたようだ、熱い。指先だけを使ってラップから茶碗に白米を移す。ぶわっと湯気が広がった。日差しは暖かいが空気は冷たい。季節はまだ冬だ。
デザインと材質が気に入って買ったダイニングテーブルに茶碗を乗せる。もう少しおしゃれな料理が似合いそうなテーブルだが、そこは気にしないでおこう。カチッとケトルがお湯を沸かし終えた音が耳に届く。
香澄はテーブルに背を向けてケトルに手を伸ばした。インスタントの味噌汁を開けてお湯を注ぐ。味噌の香りが鼻腔をくすぐった。
「朝だな〜」
地元の母の朝食は、毎日味噌汁と白米と焼き魚だった。結構ボリューミーだなと今でも思う。まあ、そんなこともあり、味噌汁の香りは香澄に朝を告げるもののひとつなのだ。
お椀を持ってダイニングチェアに座る。ガシガシと納豆をかき混ぜてご飯にかけた。この部屋にテレビはないから静かなものだ。ケチったのもあるし、以前からそう見ていなかったのもあるからあえて買わなかった。おかげで部屋が広くていい。
スマホで何かBGMでも流そうかと思ったが、今の散らかっている部屋には何をかけても似合わない気がしてやめた。おしゃれを楽しむのは部屋をひとしきり片付けた午後にすることにしよう。
のんびり朝ご飯を食べて、空になった食器をシンクに下げる。洗濯機はまだ回っているから先に着替えることにする。ゆるりと楽なパンツと綺麗めなシャツをクローゼットから引っ張り出す。この大きなクローゼットもこの家にした決め手の一つだ。たぶん古いから昔は押し入れだったのだと思う。それを大家はリフォームしてクローゼットにしたのだ。今の時代、押入れよりクローゼットの方が使い勝手がいいので助かる。
化粧ポーチを取り出して、姿見の前に座ってメイクをする。洗面台はポーチを置く場所がないので自然と寝室の姿見の前になった。手際よく済ませて立ち上がり、自分の姿を確認する。
「うん、いい感じ」
鏡の中の自分にやわらかく微笑みかける。香澄は龍樹と別れてから髪を切った。ずっとやってみたかったが龍樹が好まないと言ったのでできなかったヘアスタイルだ。肩上の髪にパーマをかけて、染めてもらった。確かミルクティ色とか言っていた気がする。化粧も少し派手になった。龍樹は清楚な女性が好きだったから。
「まあ、でも、我慢しなくてもよかったけどね〜」
付き合っているとはいえ、男の意見で好きな髪型にできなかった自分はちょっと情けなく感じる。でも、もういいのだ。今は自由だから。何を着ても、どうメイクしても、どんなヘアスタイルにしても、何か言ってくる人はいない。
『ええ〜いいじゃん、似合う似合う〜』
そう園美も褒めてくれた。
『大ぶりのピアスとかイヤリングなんかもいいかもね〜』
園美はそう言いながらハイボールのジョッキを煽っていた。
「買い物もいいな」
部屋を片付けて軽く掃除をしたら出かけようか。春になったらたくさん外に出て歩きたい。そんな素敵な自分を想像して香澄は笑みをこぼす。
ちゃらちゃらちゃらりと気の抜けた音楽が聞こえる。洗濯が終わったのだ。まさか音楽がなるとは思わなくて、初めて使った時は驚いたものだ。洗濯カゴに移して、ベランダに移動する。洗濯物を干しながら、暖かい日差しとまだ冷たい風を感じる。この風が温かくなるのが待ち遠しいと思いながら、今日買うつもりのイヤリングに思いを馳せた。
後悔する過去は誰にでもある
『そっか、なら仕方ないね』
そう笑った顔に、痛みを感じなかったわけではない。彼女はいつも他人を責めない。自分の何が悪かったかと考える。そんな生き方辛いだろうと思うし、同時に少し眩しかった。常に前を向く横顔が凛としていて、だから、ちょっと思った。
(どうせなら、泣いて欲しかった)
(泣いて、責めて欲しかった)
そうしたら、自分はどうしていたのだろう。そんなことを考えながら木村龍樹はキッチンから壁にかかっている時計を見た。針は10時だと告げている。こんな時間まで寝ていたら香澄に叩き起こされていたから、龍樹は休日でも8時には目が覚めるようになっていた。でも、雫はまだベッドの上で夢の中だ。
(比べるのはよくないんだけどな)
わかっているのだが、やってしまうのだ。例えば、雫は食事はご飯と1品が多いし、洗濯は乾燥モードを先に使ってしまったからおしゃれ着を洗えないとこぼしていたし、家のあちらこちらにお互いが脱いだ服が散らかっていた。
これが香澄だったら、もう一品汁物が出ていたし、洗濯機の使い方も手際が良かったし、洗濯物の山は家にひとつだけだった。
「俺がしっかりしないとな」
甘えていたのだと思う。全部、うまいこと香澄がやってくれたから。
『営業はお仕事大変でしょう?』
そう笑ってくれた。そう言って、龍樹の怠惰を許してくれた。でも、もうそうはいかない。龍樹もしっかりしないと家は荒れ放題になるし、そうなると雫との雰囲気も悪くなる。さすがに起きないと週明けに差し支えると、寝室に起こしに行く。華奢な体を優しく揺らして顔を覗き込む。
「おはよう、雫。朝だよ」
「うーん?…龍樹さん、おはよう」
寝ぼけ眼のまま、雫はにっこりと笑った。それは大層愛らしくて、今度こそ大切にしようと龍樹の決心を強くする。
「うん、おはよう。ほら、もう10時だよ。朝ごはん食べて」
龍樹はカーテンを開ける。だいぶ高くなった日差しが差し込み、雫は眩しそうに目を細めた。
「龍樹さんは何時に起きたの?」
「8時半くらいかな」
「お休みの日なのに早起きだね」
まだどこか寝ぼけ眼で、えらーいと褒め言葉を口にする。そういうところが可愛くて、そういうところが嬉しくて、雫を好きになった。龍樹は、ベッドに座りこそすれまだ揺れている雫の頭を撫でる。
「雫がお寝坊さんなだけだよ」
「そうかな」
社会人なんてこんなものじゃないかなー?と目をこする。その動作ひとつひとつが幼く、庇護欲を掻き立てられる。だから、龍樹は香澄に言った。
『香澄には、俺は必要ないだろう?』
香澄は強い女性だから。ひとりで家事をこなして、龍樹を起こして、投げ散らかした洗濯物を指摘しつつ結局自分で拾って。仕事がうまくいかないと落ち込む龍樹を励まして、でも香澄は仕事の愚痴なんて話してくれなくて。
「ねえねえ、今日のご飯はなあに?」
雫が立ち上がりながら尋ねてくる。
「いつも通りだよ。トーストとスクランブルエッグ」
「あとコーンスープ!」
ふふふと雫は愛らしく笑う。上目遣いで見上げてくる。どうやら頭がはっきりしたらしい。
「おはよう、龍樹さん。今日もありがとう」
「ほら、温めるからさっさと食べて。新しいスリッパを見に行きたいって言ってたろう?」
「そうだった!」
雫はパタパタと寝室を出ていく。顔でも洗いにいったのだろう。龍樹は先ほどまで自分が使った食器を洗っていたキッチンへと移動して、雫の朝ご飯を準備する。誰かのために朝ご飯を準備するなんて、雫が初めてなのだ。そうできるようにしてくれたのは、母親でも父親でもなく、香澄だ。
「本当、俺って子どもだったんだな」
苦笑が溢れる。あれもしてもらって、これもしてもらって。そして、今はする側に回った。
これもこれで心地よいと思う。大切に思う人に、大切だと言葉だけでなく行為で示す楽しさを知ることができた。
「ご飯ご飯〜」
雫がキッチンへ入ってくる。龍樹の手元を覗き込む顔には楽しみだと書いてあった。それが可愛くて、おかしくて、龍樹は困ったように笑った。
この遭遇は吉か凶か
カツカツとヒールの踵が鳴る。それは香澄の心を弾ませた。季節はまだ冬だけれど、確かに春は近いと思わせる日差しが嬉しい。電車に乗ってやってきた主要駅の駅ビルで、気に入ったイヤリングを買えた。店で開封してもらい、すでに耳で揺れている。
ふわふわと明るいパーマがかかった髪がくすぐってくる。その感触にはまだ慣れない。なんだか急いで違う自分になろうとしているようで、気恥ずかしさもあった。
髪型を変えて、メイクを変えて。
職場で龍樹との関係を公表していたわけではないが、なんとなく察していた部分もあったろう。数日気まずさが流れていたが、それも消え今は通常に戻っている。
春に向けて新しい服も買った。ちょっと高いけれど、今買いたいと思ったのだ。
(やっぱり焦ってるのかな)
今までと違う自分に、慌てて変わろうとしてるのだろうか。そんなことを考えながら紙袋を揺らして歩く。
(でも、今の髪型とメイクに、持ってる服はなんだか合わないんだよな)
やっぱり、急いでいるかもしれない。でも、それでいいとも思う。誰に迷惑をかけるわけでもない。香澄も楽しいと思っているのだから。
ふと、視線を感じてそちらを向く。可愛らしい女性と目があった。その女性は驚いたように目を丸くしていて、知人にこんな可愛い人がいたかと香澄は内心首を傾げた。しかし、隣にいる男性を見て誰か思い至る。
(龍樹と、綾野さんだ)
浮気してるんじゃないかと龍樹に尋ねると、彼は綾野雫に会わせてくれた。そして、これからは彼女と生きたいから別れてほしいとも言われたのだ。
まだ、つきりと胸が痛いんだが、そう簡単に失恋とは立ち直れるものではないのだろう。だって、同棲していたマンションから出てまだ2ヶ月しか経っていないのだしと香澄は自分を納得させる。
まさかこうして出会うことになろうとは思わなかったが、今更何か話す義務もない。香澄は前を向いて足早に去ろうとした。
「香澄?」
それは、龍樹のつぶやきによって失敗したけれど。
つい、足が止まり呼ばれた方に顔をむけてしまった。龍樹とも視線が絡む。龍樹と雫は困ったように顔を見合わせてから、龍樹が思い切ったように香澄の方へ足を踏み出してきた。
(いや、来るなよ)
新しい彼女を不安にさせるなと、香澄は内心眉を顰めた。でも、笑顔で対応する。
「久しぶりだね。ふたりも来てたんだね」
なるべく明るく、ゆっくり話す。動揺していると思われたくなかったし、未練があるとはもっと思われたくなかったし、思われたら屈辱だった。
「ああ、久しぶり」
龍樹は読めない表情で香澄を見下ろしてくる。頭ひとつ分、龍樹の方が背が高いのだ。雫も隣でぺこりと頭を下げてくる。香澄も小さくお辞儀で返す。
「驚いた。誰かわからなかった」
「ああ。同じ会社だけど、会わないもんね」
香澄は経理で、龍樹は営業、雫は営業事務だ。雫は龍樹の仕事もフォローしている。それが出会いのきっかけだと香澄は聞いている。
「こういうのも、悪くないかなって」
香澄は、そう言って笑う。正直、龍樹と付き合っていた時の自分より、今の自分の方が好きだと思える。誰にも縛られることなく、好きなように生きる自分はどこか誇らしい。
「うん、良く似合ってる」
「そういうことは、彼女の前で言っちゃダメだよ」
傷つけちゃうよ、と龍樹を嗜める。龍樹はしまったという表情をして雫を見たが、雫は笑顔で首を横に振って見せた。
「ううん、今の本町さん素敵だから言いたくなるのはわかるよ」
「できた彼女だ」
香澄はふざけて目頭を押さえてみせる。龍樹は、また複雑そうな表情をしてポツリと言った。
「–怒らないんだな」
「へ?」
香澄は驚いて顔を上げる。龍樹は苦々しい顔をしていた。
「浮気したのは俺なのに、一方的に別れてほしいと言ったのも俺なのに。香澄は一回も怒ってない」
香澄は不思議で首を傾げた。龍樹はこんなに神妙な顔をする男だったろうか。もっと朗らかで、感情のまま振る舞う少年のような男ではなかったか。考えすぎる自分とは違う、まず動いてみる龍樹の性格には少し憧れていたし、だから告白された時付き合った。
「私は、私にないものを龍樹からもらおうと思ってたなって」
気づけば、頭の中の言葉が口から飛び出していた。龍樹はわからないという顔をしているから、香澄は新たに言葉を探す。
「龍樹の行動力とか、すぐ誰とも仲良くなれるところとか、すごいなと思ってた。私にないものを、龍樹と付き合うことで補ってもらおうとしてたな〜って」
これ以上はうまく言えなくて、香澄も困ったように笑った。
「傷ついたのは本当。でも、ふたりが悪い人じゃないのも知ってるし。だから、幸せになってほしいと思うよ?」
今度は雫もわからないという顔をしていたから、香澄はあははと笑うしかできなかった。
「見知った人が不幸になるって、寝覚め悪いじゃん」
まあ、そういうことだから、と香澄はふたりに手を振って歩き出した。龍樹の手が伸びたけれど、それには気づかないふりをして足早に去る。
自分は今、あのふたりといてはいけない。よくわからないが、龍樹の様子は雫を不安にさせるものだ。不幸になってほしくないというのは本心だ。せっかくなら幸せになってほしい。お似合いのふたりだと、遠目に見ても思ったから。
最終的に別れをふたりが選んでもいいと思っている。ふたりがそれぞれに幸せならそれでいいのだ。
「でも、なんか引きずってたな〜」
(しっかりしろよ、年上彼氏)
風に溶けた言葉は、龍樹の耳に届くはずはなかった。
奪った彼女の心の内は
変な人だと思った。雫は思い出す。静かな喫茶店で香澄と会った。彼女と別れると言う龍樹に無理を言ってついていったのだ。龍樹の彼女がどんな女性か見てみたかったのもあるし、自分に負けて男を取られる情けない顔を見てみたかったのもある。
性格が悪い自覚はある。顔が良い自覚もある。男に好かれやすいと、自覚している。だから、ちょっと良いと思った龍樹に手を出してみた。すごいと、褒めて、褒めて、甘やかして。
そうしたら、ころりと落ちた。浮気が彼女にバレたと言われた時も、別に焦らなかった。別れた香澄はマンションから出て行き、そこに雫は転がり込んだ。前の彼女の残り香は気に入らなかったけれど、すぐに消えると思っていたし、自分なら上書きできると思っていた。
でも、できなかった。ことあるごとに、龍樹は雫と香澄を比べている。彼は口にしないけれど、内心比べて雫にガッカリしているのは見てとれた。どうしたら良いかわからなかった。だから、可愛い後輩女子を演じ続けた。そうするしか、できなかったし知らなかったから。
『可愛い人だね』
初めて会った喫茶店で、香澄は驚いたようにそう言った。そして困ったように笑ったのだ。
『これは勝てないな』
あはは、と誤魔化すように笑う香澄は、十分に綺麗な女性だった。雫は自分は可愛いと知っている。でも、それとはまたベクトルの違う美人だと、香澄のことを雫は思ったのだ。なのに–。
(なんで簡単に諦めるんだろう)
泣きつけば、龍樹は戻ってくるかもしれないのに。あるいは、泥棒猫だと雫を罵倒すればスッキリするかもしれないのに。
雫は不思議でならなかった。本町香澄という人間が理解できずに、少し恐怖を覚えた。偽善にしては、本当に困ったように笑うし。
『–今度は、大切にするんだよ?』
別れ際に、香澄は龍樹にそう言っていた。遺言のようにも、呪いのようにも聞こえた。あの言葉があるから、龍樹は雫と別れていないのではないかと思えるほどだ。
–ただのデートだったはずだった。ふいに、雫は視線を引かれたのだ。軽やかに歩く、綺麗な女性だった。
(?)
既視感に襲われ、目が釘付けにされる。香澄だと気づくのにそう時間はかからなかった。以前の香澄は、長い黒髪を背に流した清楚な女性だった。どこか伏せられたような目、影を落とす長いまつ毛。控えめな音を立てて歩く彼女は、大和撫子という言葉が似合っていた。
でも、今の彼女は違う。短い髪にはパーマをかけて、明るく染めていた。耳に大ぶりのイヤリングかピアスが揺れている。鼻歌でも歌い出しそうに軽快に歩く香澄は、明らかに別人だった。
じっと見つめすぎたのか、香澄が雫の方を向いた。視線が合い、香澄も雫のことを認識したようだった。でも、通り過ぎようとしてくれた。そのことにホッとしてしまう。
「香澄?」
低い声は、雫の頭上から降ってくる。龍樹のそれは、動揺しているようで、すがるようでもあった。ふるりと、雫のまつ毛が揺れる。
(見ないでほしい)
今の香澄を見ないでほしい。綺麗になった彼女を、より魅力的になった彼女を見ないでほしい。でも、それは叶わない。龍樹は香澄に向かって歩を進めてしまう。そうなれば、雫だって後ろに続くしかない。
「久しぶりだね。ふたりも来てたんだね」
香澄はどうってことないようにそう言った。それがまた、雫の癪に障る。でも、顔に出すわけにもいかずそっと唇を噛んだ。
「ああ、久しぶり」
そう返す龍樹の顔を見ることができない。その表情を、瞳を見るのが怖かった。仕方ないから香澄を見る。視線が合うから、小さく頭を下げておいた。それだけで、彼女は許してくれると知っていたから。
「驚いた。誰かわからなかった」
「ああ。同じ会社だけど、会わないもんね」
香澄だけ本部の経理課だ。龍樹と雫が所属する営業部とは建物が違うのだ。会う機会は皆無と言っていい。
「こういうのも、悪くないかなって」
香澄は、そう言って笑う。ふっきれた笑顔だった。清々しさを感じさせるその笑みは、雫から見ても綺麗だった。
「うん、良く似合ってる」
「そういうことは、彼女の前で言っちゃダメだよ」
ああ、この人はまたそんなことを言う。雫を罵倒する権利があるのにそうしない。それが、雫に敗北感を与える。ぎゅっと、龍樹の腕にしがみついた。
(渡したくない)
龍樹はもう、雫のものだ。香澄の下に、戻るなんて許さない。
「ううん、今の本町さん素敵だから言いたくなるのはわかるよ」
汚い本心を隠して、雫は笑う。香澄は目頭を押さえてみせた。
「できた彼女だ」
子ども扱いされたようで、気に食わなかった。それさえ飲み込んで、雫は困ったように笑ってみせるだけだった。
「–怒らないんだな」
龍樹は、雫も思っていたことを口にした。
「へ?」
香澄は驚いて顔を上げた。彼女の中に、怒るという選択肢がないことを如実に表していた。
(本当に、嫌な人)
「浮気したのは俺なのに、一方的に別れてほしいと言ったのも俺なのに。香澄は一回も怒ってない」
龍樹の言葉に、(やっぱり)とも思ったし、(まじか)とも思った。この人は、もう少し俗世間に近づいたほうがいい。そんな心配さえした。
「私は、私にないものを龍樹からもらおうと思ってたなって」
(ほら、また訳のわからないことを言う)
どうやら龍樹も同じ感想を持ったらしい、香澄は言葉を選び直す。
「龍樹の行動力とか、すぐ誰とも仲良くなれるところとか、すごいなと思ってた。私にないものを、龍樹と付き合うことで補ってもらおうとしてたな〜って」
タイプが違うと言いたいのだろうか。違ったから惹かれたと。でも、恋愛ってそんなものじゃないのか。デコとボコかうまくハマると言うか、そんな相手を誰もが探し求めているのではないのだろうか。
雫は、自分にないものを埋めてほしい。龍樹は、精神的にも経済的にも頼れて、雫を甘やかしてくれて、裏表がなくて、行動力があって–。
「傷ついたのは本当。でも、ふたりが悪い人じゃないのも知ってるし。だから、幸せになってほしいと思うよ?」
今度こそ、わからないという気持ちが顔に出た。香澄はあははと困ったように笑った。
(笑うところじゃない。絶対)
一種怒りのような感情が胸を焼く。香澄から龍樹を奪った雫を、彼女は悪い人じゃないと言う。本心からだとわかるから、腹が立つ。見誤っている馬鹿な女に、それでもなぜか負けているような気分にさせられる。
「見知った人が不幸になるって、寝覚め悪いじゃん」
そう言い残すと、香澄は手を振って去っていった。これ以上は時間の無駄だと判断したようだ。そういうところは冷静だし、冷徹だし残酷だ。こうして、難しい顔をした龍樹と雫は残された。
さっきまでは楽しいデートだったのに。どうしてこんなモヤモヤとした気持ちにさせられるのだろう。恋人がいるのは自分なのに、捨てられたのは香澄なのに。なぜ、自分はこんなに惨めな気分になるのだろう。
「カフェ」
「え?」
「カフェに行こう」
「?」
突然の龍樹の言葉に、雫はついていけない。理解が追いつかない。
「頭が混乱している時は、何か甘いものでも飲んだほうがいい」
「って、本町さんが言ってたの?」
なぜかそこだけは頭が回って、苦虫を噛み潰したような龍樹の顔に図星だと知れた。龍樹の行動には、香澄から影響を受けたものが多いのだ。料理だって、香澄から習ったと言っていたし、掃除のやり方だって、朝早く起きる習慣だって–。
(無理だ)
「ひとりで行って」
雫は龍樹の腕から手を離すと、足早に距離を取った。後ろから戸惑う気配がしたが、龍樹は追ってこなかった。
(終わった)
龍樹と自分は、もう終わった。いや、始まってすらいなかった。龍樹の中には最初から最後までずっと香澄がいた。彼女を追い出すことが雫にはできなかった。それだけのこと。
「どうして、本命になれないんだろうな」
自分が男性に好かれる容姿なのは知っている。でも、だいたい遊ばれて終わる。龍樹は真面目だと思ったから手を出したけど、真面目が故に香澄を振り切れていない。
「男を見る目がないのかな」
母の顔が目に浮かぶ。男は経済力だと言って憚らない女だ。どれだけ稼ぐ男を捕まえられるかが女の見せ所だと豪語していた。馬鹿馬鹿しいと思うのに。
(龍樹といれば、みんなから褒められると思ったのに)
母だって文句を言わない、父も喜んでくれる、友だちからは羨ましがられる。そんな世界を夢見ていたのに。溢れそうになる涙を、玄関まで我慢した自分を誰か褒めてほしいと雫は思った。
とはいえ、私には関係ない。
がちゃりと家の鍵を閉じる。ため息が出た。
(まさか龍樹たちと出くわすなんて)
せっかく浮き立っていた心は沈み、同調するよう玄関に落ちたヒールがごとりと重い音を立てた。散らばるそれを揃える気にもならなくて、香澄は家に上がりソファに沈み込んだ。
「あれじゃ先が思いやられる」
頭痛がした。未だ恋人だった時の距離で話しかけてくる龍樹に、雫はどう見たって不安げだった。
「なんで私が振ったみたいになるかな」
痛む頭に疑問が浮かぶ。振られたのは香澄で、傷ついているのも香澄のはずで、追い縋るのであればそれも香澄であるはずだ。なのに、どうして龍樹が思い悩んでいる顔をしているのだ。
まだ雫が罪悪感に苛まれているのならわかる。だって、彼女は奪ってしまった人だから。でも、全てを自分に都合よく決断したのは龍樹のはずなのに。
ピーピヨ
それはメッセージアプリの着信音。小鳥の鳴き声が可愛くてこの音に設定したのだ。その高い音色に思考の海から引き上げられる。相手は園美だった。一瞬龍樹かとこわばった体から力が抜ける。ふうと小さく安堵の息を吐きながらアプリを起動させた。
『言い忘れてたけど、絶対寄りを戻しちゃダメだよ!縋られてもね!』
どきりと心臓が跳ねた。快活な園美は時々エスパーではないかと思うほどの洞察力を発揮する。いつも笑っている瞳は深くて、自分が本心ではどう思われているのか不安になることもある。けれど、なんだか居心地はよくて付き合いは長い。
「–浮気した人とやり直すって、無理でしょう」
いつも不思議だったのだ。漫画で彼氏や婚約者を奪い取った女性が誇らしげにするのが。
(だって、浮気した男だよ?いつ自分を裏切るかわからないじゃない)
浮気をした時点で、『その程度の男』なのだ。その程度の男に選ばれたことをどうしてあんなに誇れるのだろうか。
(考え方が違うのかな)
ソファにゴロリと横になる。午前中に片付けておいたおかげで、視界に入る部屋はすっきりしている。好きな家具に囲まれて、今後は観葉植物を増やしていこうと思っている。この家は、香澄の楽園になる予定だ。
「うん、やめよう」
龍樹は『その程度の男』で、雫は『理解できないタイプの女』なのだ。彼らに使う時間は無駄と言えよう。それなら、今から夕食が少しでも美味しくなるように仕込みを始めたほうが何倍も有意義というものだ。
そう思えば行動は早い。冷蔵庫が空だ。何か買ってこようとコートに手をかけ、今度はスニーカーを履く。脱いだままにしてあったヒールを起こして揃える。「ごめんね」と、ヒールに謝るのも忘れずに。
時間は昼と夕方の間。明るいが風は冷たくなってくる頃合いだ。早く終えて帰ってこようと胸に決め、香澄は再び外に踏み出した。
逃げて、追って。
雫は泣きながらスーツケースに服やらドライヤーやら詰め込んでいた。仲の良かった大学の友人の家に数日泊めてもらうつもりで、荷物を整理していた。
(無理だ無理だ無理だ)
絶対に振られると、今までの経験が言っていた。雫は香澄に勝てなかった。龍樹を奪えなかった。龍樹だったら、大切にしてくれるかも知れないと、雫を包んでくれるかも知れないと思っていた。期待していた。でも、ダメだった。龍樹は、雫が今まで付き合った男性の中で1番誠実な部類だと思う。そんな彼にまで振られてしまっては、もう冷静でなどいられない。心が痛みに耐えられない。最後の決定打を受ける前に、雫は逃げようとしていた。
スマホがバイブ音を立て、メッセージが来たことを知らせる。雫は広げられたスーツケースの横に放り出してあったスマホを手に取る。
『ごめん、今旅行中だから泊めてあげられない』
「役立たず!」
ベッドに向かってスマホを投げる。ぼろぼろと涙が溢れる。友人でさえ物のように扱う自分に嫌気が差す。ああ、きっと。
「こんなだから、ダメなんだ」
ははっと乾いた笑いがこぼれる。こんな矮小な人間、幸せになんてなれっこない。視界を滲ませる涙を力任せに手の甲で拭う。こうなったらどこかのビジネスホテルにでも泊まるほかない。でも、もうそれでもいい。今は龍樹から逃げ出したかった。
「うわ、なんだよこれ」
背中からそんな声がして、雫は慌てて振り向いた。寝室に入り込んだ龍樹が、その荒れように驚いていた。
「衣替えでもしてるの?」
龍樹は踏んでしまわないように床に広がる服やらを拾い始める。そして、拾いながらどうやら衣替えではないと気づいたようで、戸惑った顔を雫に向けた。そこで初めて雫が泣いていることに気づいた。
「ああ、えーと、どうしたの?」
この後に及んで龍樹はそんな間抜けな質問をしてくる。雫にはきっと怒り狂う権利があると思うほどの抜けた声。でも、それに雫もへなへなと力が抜けた。彼のそんな頼れるくせにどこか間抜けな姿は、出会った頃を思い出させた。
陽気で調子が良くて、でも憎めなくて。仲間思いで頼れる先輩。だから、雫は龍樹が欲しいと思った。それが、どこか沈鬱な顔をし始めたのがいつだったか。
(–本町さんと、別れた頃)
ああ、久々だ。憑き物が落ちたかのような、彼らしい鈍さを見たのは。安堵が押し寄せてくる。きっと龍樹は張り詰めた空気をまとって帰ってくると思っていたから。だから、逃げようと思っていたのだ。
「–振られると、思ったから」
気づけば、雫はそう正直に話していた。情けない泣き顔を見られたくなくて俯く。止まれ止まれと胸中で唱えながら涙を拭う。龍樹は拾った服たちをベッドに置くと、濡れた両手をそっと握った。
「引っ越そう!」
「え?」
「あと、ちょっと転職しようかと思う」
「ええ?」
優しい手とは裏腹に飛び出してくる力強い予想外の言葉に、雫は戸惑うしかない。しかし龍樹の心は決まっているようだった。
「ほら、ここは香澄と住んでたからさ。ちょっと忘れづらいなと思って」
その言葉に雫は目を丸くする。龍樹は困ったように笑った。でも、穏やかで優しい目で雫を見つめる。
「ごめんな。たくさん不安にさせて。–営業ならすぐ仕事見つかると思うし、なるべく香澄から離れよう」
「–お給料は下がっちゃ嫌だよ?」
「ああ、やっぱり?」
口をついて出た自分の言葉に雫は嫌気が差したが、龍樹が気にした風はない。龍樹は雫の前にあぐらをかいて座ると、腕を組んで考え出した。
「ほら、年収上げるにしてもさ、高い仕事って忙しくなるじゃん?雫はどれくらいの忙しさまでなら許せる?」
そんな質問に雫は理想とする家庭を思い浮かべる。
「夜ご飯くらいは、毎日一緒に食べたいかな」
無理なら朝ごはん。と付け加える。
「じゃあ、今と環境はあんまり変わらなさそうなところがいいな〜」
そっか〜と言いながら、龍樹はスマホにメモを打ち始める。そして、思い出したように顔を上げた。
「一度さ、ちゃんと雫のご両親にも挨拶しておいたほうがいいなと思ってるんだけど」
「え?」
「同棲先に始めちゃったからな。やっぱ怒られるかな」
「え、と。どうだろう」
父親あたりは少しピリピリしそうである。が、問題はそこではない。そう、そこではないのだ。
「私のこと、嫌になったんじゃないの?」
「え?なんで?」
今度は龍樹が目を丸くした。本当にまん丸だ。こういうところが愛嬌がある。
「だって、私、なんていうか、こう、顔しかいいとこ無いし」
「ええ!俺のこといっぱい褒めてくれるじゃん!」
「–そうだっけ?」
雫は首をかしげる。確かに、気を良くさせようとして持ち上げたことはある。それだろうか。
「俺、考えたんだよね。確かに香澄はすごいけど、なんだか母親と息子みたいだったなって。でも、雫のことは守りたいって思える。俺が大切に守るんだって」
できてなかったけど、と頬を指先で掻く。ふと、甘い香りがすると雫は思った。これは何の匂いだろう。
「カフェ、行ったの?」
「行った行った。ずっと考えてた」
龍樹はもう一度雫の両手を包み込んで言った。
「香澄は大切な人だった。でも、今大切なのは雫だって思い出した。–雫こそ、俺に愛想尽かしたんじゃない?」
「–本当に愛想尽かされたと思った人は、手なんか握らない」
「–確かに」
龍樹は力強く頷いて、でも手は離さなかった。
「今度こそちゃんと大切にする。もう傷付けないから、もう一回チャンスが欲しい」
「なに、それ」
雫の笑みは、泣き笑いになった。それは初めてした表情だと、後になって思う。
「ダメ?」
龍樹は困った顔で首を傾げて見せた。それに、雫は吹き出してしまう。涙はまだ流れていたけれど、それでも雫は首を横に振った。
「ダメじゃない」
「よかったぁ!」
「わ!」
龍樹に突然抱き寄せられて、雫は驚愕に声を上げる。そういえば、こうして抱きしめられるのも久しぶりだ。温もりが懐かしかった。龍樹は平熱が高いのだ。子どもみたいだと思っていたことを思い出す。
「まず、明日は不動産屋に行こう!」
「転職するなら先に仕事を見つけたほうがいいんじゃないかな?」
「じゃあ、エージェントに登録?」
「ふふ、私も一緒に頑張らないと。私、まだ第二新卒かな」
「それも調べないとだな!」
龍樹に手を引かれて立ち上がる。誘われるがままダイニングテーブルにつけば、龍樹はお茶の準備をし始めた。きっと、そんなところも香澄から学んだのだろう。でも、それももういい。
(私は、頑張ろう)
自分を許してくれた龍樹と頑張ろう。彼は守ってくれると言ったけれど、雫だっていざとなれば龍樹を守れるように。そう思えた自分に驚きながら、これからに胸が弾んだ。
私には、あなたがいるし。
「ああ、美味しい〜」
香澄はルーなしで作ったクリームシチューに舌鼓を打っていた。調べてみれば、案外簡単にできた。鍋は汚れたけれど。
「今度、園美にも食べさせてあげよう」
そう言うと、行儀悪くスマホをいじる。手作りの夕食をご馳走してやると連絡するつもりだった。
外は風が強い。もう春がすぐそこに近づいていた。
fin.
最後まで読んでいただきありがとうございます。感想などもいただけるととても嬉しいです。これからもゆるゆると書いていくので楽しみにしていください。