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フードプロセッサーは包丁に勝てない

世の中で売られているものには全て価値があります。
どんなものでも価値があることを期待されます。
価値があると判断してもらえることを期待して価格を設定しますし、対価を支払います。
ご自由にお持ちくださいと置かれる見た目の悪い野菜も、廃棄コストを負うより無償提供の方がお互いに価値があるという期待に基づいています。
全てに価値はありますが、容易に比較されるものです。
ただし、価値の大小優劣は判断するものによって変わります。

フードプロセッサーは包丁には勝てません。
手軽さ、スピード、安全性を兼ね備えたフードプロセッサーですが、仕上がりの味に関しては切ることに特化した包丁に勝つことはできません。
技術次第で狙った大きさに均一に切れる包丁と、攪拌によって徐々に均一にしていくフードプロセッサーではコントロールする範囲の意識が異なるからです。
また、包丁が切るだけでなく、刻む、剥く、割る、捌く、潰すなど様々な形状に食材を分解する道具なのに対し、フードプロセッサーは均一化する機能に特化しています。
この勝敗は私の価値基準で判断されたものです。
全ての人に同じ判断があるわけではありません。

手を汚さずにハンバーグを作ることのほうが、肉の食感を噛みしめるようなハンバーグを食べることより重要であれば、フードプロセッサーは便利家電として力を発揮します。
細かいものが見えにくくなったり、細かな作業が苦手だったりすれば手軽に細かくすることの優先度が高まることでしょう。
親子で作るプロセスを楽しみたいなら安全性の高いフードプロセッサーが家電としての真価を発揮します。

提供したい価値と、享受したい価値は必ずしも一致するわけではありません。
だからと言って価値判断を顧客に委ねてもいけません。
誰にどんな価値を提供するのかを明確にすること、その上で享受されている価値が異なるならマーケティングメッセージの見直しを考えること、確たる意志と柔軟性がマーケターには求められるのです。

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