社会的正当性は顔の無い聖者

お客様第一を掲げることは、企業の存在意義である社会貢献を宣言することですから、何も間違ってはいません。

多くの会社がお客様第一を掲げて、うまくいかないのはどういうことでしょうか。

もちろん建前と実態に大きな乖離がある場合を除いたとしても、お客様視点で物事を考えると議論が行き詰まることが多々あります。

お客様のお困りごとを解決しようと、アフターサービスやweb上の口コミを集めた結果、当たり前の言葉が連なってしまう様は多くの方が経験しているのでは無いでしょうか。

お客様の声に上がることの多くは、他の企業も既に聞いていて、議論され尽くした上で反映できていないものか、どこまで改善してもいたちごっこになってしまうものが多いのです。

どんなに静かな掃除機を開発しても、無音になるまで要望は止みませんし、無音になったら動いているか分からないと別の不満が上がってきます。

カメラ付き携帯電話が開発された時代の多くの声は、カメラで撮った写真をメールに載せたいというものではなく、通話の音質や電波感度、16和音の着メロなどの改善の要望でした。

また、iPhoneが登場した時にも、カメラの画素数やパケット代などが表に出てくるニーズでした。

顧客はイノベーションを歓迎することはあっても、要望することはありません。

実直にお客様の声を聞き続けるという姿勢は社会的正当性のあるものですが、それはあなたの会社が行うべきことでしょうか。

競争や戦略に基づかない顧客志向はある種聖者的ではありますが、それ社会的正当性ばかりを追ってしまっては、誰とも知れない顔の無い聖者になってしまうかも知れません。

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