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大好きだった君とのはなし。

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大好きだった君への想いをまとめています。 君にはしあわせになってほしいよ。僕は、新しい君をみつけようとしている。
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僕が君のことを綴ることはもうないけれど、君の歴史において、僕だけが、君の月明かりであるように願っていて、君の指の隙間の、冷たい神様の喧騒が、溶けてなくなりますようにと、祈っている。

僕と君はそれぞれ別の愛でさ、それが混ざり合ったら、世界になっていたんだ。

知りたくなかったことってたくさんあって、それってたとえば、君への気持ちとか、君の気持ちとか。

夏、見つけた君の横顔、瞳、小さな瞳、僕が映っている。
今日も今日が美しいと感じたい、太陽と月は対等な関係ではない、46億年後に死ぬ地球で、僕は海になっていたい。痛い。死体。したい。擬態。
痛いだけだった僕の何もかもを、あの人が繕っている。
痛くして去った君の何もかもを、誰かがまた痛くしている。
繊細な君のこころを、わかっているんだ。僕にはもうどうしようもないけれど、君は僕を置いて行ったから、許せな

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瞬き

息をしている、君を忘れたこの世界で、息を、している、明るすぎるこの街で、息をして、息、吐いている。
気づいたら寝ていた、あの人の声で起きた、あの人に写真を送った。薄れていく君の影を、あの人が踏んでいく。とけたわたがしをかき集めて、砂利。グラスに氷を入れて、反対側の景色がみえない、シンパシー、応答願う。
僕は今日もすこしずつ、君を忘れていく。

僕は僕を愛したい

夜の風に当たって、瞬きをしたら秋が過ぎていた。
商店街のアーケードのすきまからたまに射し込む光が痛くて、思わず目を細めた、風が吹いた、冬の匂いだった、そらいろの空。
僕の神様ですら明日を教えてくれない。神様だって明日どうなるかわからないんだ。神様にわからないこと、僕にわかるわけがない。
今日が過去になってしまう前に、明日が今日になってしまう前に、君と会えなくなってしまう前に、

僕は──────

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ブレイバー

薄暗い雨雲の上、今日も銀笛が鳴っているらしい。

君が好きだと言ったから好きになったわけではない音楽も、聴く度に君を思い出している。
少しずつ失われていく痛みと記憶をたしかめながら、本当に僕が欲しかったものは、君ではなくて愛だったのではないかとおもってしまう。そう、君の好きな果物のことを考えながらおもっているよ。
結局また、君のことばかり話してしまうんだ。どこかに落としてきたアンタレスを、僕は今日

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天使の本棚

朝目が覚めたら君が死んでいたらいい。僕が死んでも君は悲しくないけれど、君が死んだら君の恋人は悲しいだろう。なんて幸せなんだ。

パイオニア計画、12号、海底1000mより

太陽の黒点が爆ぜる、まぶしい何かが僕を溶かす、そういう日々ならよかったんだ。ひたすらイカロスに逃げる毎日で、今日もそこで僕は僕の心臓を抱きしめている。
下から鉄塔を眺めて、すきだとおもった、夜なのに赤く染まる横浜のみなとみらいの空をみて、きらいだとおもった、深い夜だった。

大事に抱えていたい感情、君に出会わなければよかったと思ってしまったこと、いつまでも痛い心臓、ビー玉が割れたような。
はやくす

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零落

音をきいていた、深宇宙で、コスモスが咲いた。
本の頁に付箋を貼って、これを書いた人の想いを思考、耳鳴り。
上空から落下するよだかを、君が口ずさんでいた歌を、君の横顔を閉じ込めたタイムカプセルを、教室に忘れた感情たちを、青春を青春だと気づけなかった青春を、明滅するまぶたのうらを、揺蕩う月明かりを、枯れたウミユリを、染まった夜を、失ってから戻れないすべてを、僕は今日も零している。

渇いた瞳に月光を垂

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空白

僕の安っぽい人生を、白々しい夏を、差し出した口約束を、盗まれた痛みを、思い出してしまった、駅前のちらちらとするイルミネーションすらも朧気になっていた。僕の周回軌道上にいた君は、いつのまにかそこから外れていて、僕だけが取り残されていた。ふたご座の二つある心臓はひとつにはなれず、死んでしまった君との記憶を反芻、反芻、反芻。君と出会った夏の終わりを思い出しながら、今日も他人に君を重ねて、はやく死にたいと

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