珈琲を一杯
からっぽの部屋から、
午前三時の街並みを眺めていた。
あんまりに静かなもんで、
自分ひとり世界に取り残されたみたいだ。
色々考えるのも疲れたからさ、
まずは珈琲を一杯、くれないか。
じっとしてるのも退屈になって、
散歩でもしようかと思い立つ。
手荷物は少なくていい、
感傷も憂鬱も置いていけたらいいのに。
こころの重さを測ったところで、
まずは珈琲を一杯くれないか。
静かな街並みの至るところに、
あの人の面影を探す。
さながらかくれんぼの様相、
溢れた失笑、とりとめもない妄想。
無意味な堂々巡りに後悔を見出だす前に、
まずは珈琲を一杯くれないか。
唐突に降って湧いたであろう
人生とかいう大層な厄介事。
それらを全うすべき価値とか理由とか
あれこれ模索なんてする前に、
僕らには現実を理解する時間が必要だ。
まずは珈琲を一杯くれないか。
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