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【IDと教員研修22】「ルールを未知の事例に適用」知的技能の指導方略

前回の記事では,学習目標の分類のうち,言語情報についての指導方略を考えました.
今回は,知的技能について,教員研修に関連させて考えていきましょう.


未知の事例に適用とは

思考スキルを様々な場面で活用する,というイメージで考えてみます.
例えば,「関連づける」というスキルです.

事例1
次の中から,使い方がセットになるものを1つ選びましょう.
ア)やさいとカレンダー
イ)スプーンとカレーライス
ウ)カブトムシと塩

答えはイ).これは,「目的と手段で関連づける」というスキルを発揮しています.では,次の事例でも同じように考えてみましょう.

事例2
次の中から,使い方がセットになるものを1つ選びましょう.
ア)鉛筆とノート
イ)アイスクリームとすり鉢
ウ)時計とハンカチ

答えは言わずもがなア).事例1で知ったスキルを,事例の内容が変わっても適用するということです.では,この場合は?

事例3
次の中から使い方がセットにならないものを1つ選びましょう.
ア)自転車とヘルメット
イ)洗濯物と洗濯機
ウ)靴とカッター

答えはウ)です.この事例においても,「目的と手段で関連づける」というスキルが発揮され,関連づかないものを選んでいます.

未知の事例に適用するステップのようなものも見えてくるかもしれません.

前提事項と情報提示

知的技能を指導する際には,まず,新出技能の前提となる基礎技能を思い出せるようにします.既出の内容であったり,経験であったりします.
次に,新出事項であるスキル(ルールや概念となることも)を,難易度別で段階的に提示します.事例1→3のように,様々な適用事例を用いて概念化につなげることも考えられるでしょう.

練習とフィードバック

スキルを思い出すきっかけやコツ,誤りやすい事例をもとに,次々と事例に対応してスキルを使えるようにします.うまく使えたことや,うまくいかなかったことについてフィードバックが行われるようにすることで,習得すべき下位の技能に気づくこともできるでしょう.

教員の教育技術を知的技能として分解したら…

例えば,子供が音読を上達できるようになる指導技術を対象にした場合はどうなるでしょうか.

最初は,声量・スムーズさ・スピード・抑揚といった基礎的な指導技術の要素を知り,「こんな文章の場合は?」「あんな文章の場合は?」と事例を広げていくことができそうです.発達段階に応じた指導も,段階的に考えられそうです.

例えば,子供が挨拶を上達できるようになる指導技術を対象にした場合はどうなるでしょうか.

最初は,声量・タイミング・姿勢といった基礎的な指導技術の要素を知り,「こんな場所の場合は?」「あんな時間の場合は?」と事例を広げていくことができそうです.発達段階に応じた指導も,段階的に考えられそうです.

と,いうように,今は2つの例ですが,構造的にみればこれらの例も同じような指導技術とみることができるかもしれません.

みなさんの周りにある,知的技能となる指導技術,ぜひ探してみてください.

次回は,認知的方略の指導方略について考えます.

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