見出し画像

コロナ禍後、初の片道12時間の飛行機で、開眼。

エコノミークラスでのニューヨークへの12時間の飛行機。12時間かあ、という気持ちは、飛行機に乗る前も乗っている最中も、乗った後の今でも思っている。
やってみたら意外と簡単。それは事実なのだけれど、足や内臓のあたりに何かがもやもやとまとわりついて、詰まっている感じはやはりきつい。
明確に体調が悪くなるということはなかったが、いつかビジネスクラスで旅行できるようになりたいな、というのが正直なところ。

ただ、エコノミー12時間の移動が、自分が恐れていたほど辛くはなかったという感触は、大袈裟でなく、今後の私の人生の選択に影響すると思う。

コロナ以前は、私は年1回ペースで東南アジアに繰り出していた。ある時はスペインまで13時間ほどかけて行ったこともある。その時のスタイルはバックパッカー。旅行に対する心理的なハードルの低さから、荷物も、所持金も最小限。旅行が生活の一部だった。

それがどうだろう。コロナの途中や、コロナが落ち着いてからは、ちょっと良い国内宿に泊まるのが私の休暇の過ごし方になっていた。700円のバックパッカー宿に泊まっていた私が、朝食のおいしさにこだわるようになり、トイレバス別の部屋、何なら個室露天風呂もついていて欲しいとか思うようになっていた。
そんな生活がここ3、4年続いていた。

もう海外旅行はいいんじゃない?結局日本の食事が一番美味しいし、公共交通も便利で安心だし、綺麗だし。国内だって全然旅行できてなかったし。

海外旅行との心の距離が広がってしまって、コロナでの諦めとか、安全上の理由とか、そういう色々ではないところで、本能的に本質的に海外旅行への魅力を感じなくなっていた。

そんな中、今回誘われるがままにニューヨークに行ってみた。
そしてようやく、私は、めんどうくさくなっただけだったんだとわかった。もっと言うと、コスパ主義に染まっていた。これだけのお金と時間かけるんなら、確実に評判が良い国内で、優雅に過ごした方がメリットが大きい、と考えるようになっていた。旅とメリットという言葉は、ありえないほど相性が悪いのに。

コスパ主義。もっと言うと、損したくない気持ち。東南アジアを放浪していた時と比べたら、私は社会人になって、それなりに大人っぽく振る舞いたい年頃になっている。
けれどもこれは、加齢のせいなのだろうか。歳を取ったらコスパ主義になるものですか? 皆さんはどうお考えだろうか。

年齢のせいだけでは足りない、と私は思います。20の時のように徹夜できなくなったり、酒をかっくらえなくなったのは事実。年齢というか、肉体的な弱りは、感じなくはないんです。
それよりも私にとって大きかったのは、内省する癖がつきすぎたせいではないかと思う。

コロナで必然的に外部との連帯がたたれた。趣味も自己完結しがちな私は、ステイホーム期間はそれほど辛いものだと思ったことはなかったんだけど、今になって、そのときの余波が出てきたのだと思う。
内省のしすぎ、自己の内面化、過度な内向化。

自宅で清潔で快適で誰にも脅かされないところで、思考し続けたコロナ禍。そのうち、自分の選択によって、自分の状況がコントロールできるのが普通だと思い始めていたのかも、と思う。

旅の快適か不快かも予約段階の選択肢である程度コントロールできると思っていて、だから12時間のエコノミーなんて拷問をうん十万で購入するようなものだと。

けれども冷静に考えたら、保証されることなんて世の中にほとんどないんである。しかも旅行ってその最たるもので、だからこそ旅行保険が山ほどある。(出発前の私は旅行保険の内容を隅々まで読み直していました)

旅行に限らず、ここのところの自分はコスパ、タイパ、自己完結の考え方ばかりだった。その自己完結の考えも、自分の記憶を頼りにしているし、記憶っていうのは、かなり不確かなものだし。それこそ、なんの保証もない不安ごとで自分自身をがんじがらめにしていたんだった。

12時間のエコノミーフライトは確かにきつい。でも想像ほどではなくって、やってみたらこれまでの旅行の、忘れていた思い出も蘇ってくることもあった。一人で部屋で悶々としていた時とは明らかに違う、生の体験があったんだった。

今の私はどこまで遠くに行けるだろうか。どれくらい身軽に行けるだろうか。考えも変わるし、体の調子も変わる。だから昔のように気持ちを持っていけなくてもいい。でも、自分を見つめるのに最適なのは、部屋の中ではなくて、外に出ることなんだと思う。それがどれだけ遠くても近くてもいいから、誰かに会ったり、何かを見たりすること。自分以外の何かを感じること。25歳、肩の力を抜いて、私なりの旅をこれからも楽しみたいと思った。


この記事が参加している募集

#新生活をたのしく

47,794件

#一度は行きたいあの場所

50,536件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?