【実話怪談33】コンビニ

その日、女性Gさんは幼い息子を連れて東京都内の某私鉄駅に電車で向かっていた。その駅近くの友人宅にお邪魔するためだ。

駅に到着して改札を出た後に、「トイレ行きたい」と息子が言い出した。
もう少し早く言ってくれれば駅の構内にお手洗いあったのに、といささか立腹しながら、彼女は仕方なくトイレがあるような場所を探す。

初めて降り立った駅のため、土地勘はない。だがちょうど改札の近くに一軒のコンビニが見えたので駆け込んだ。店員に断りを入れ、息子は店の奥にあるトイレに向かう。

Gさんが店内で待っていると、ほどなくして息子がトイレから出てきた。が、怯えた表情で「ままぁ、トイレがこわかった」と訴えてきた。

ごくありふれた外観と内観のコンビニチェーン店だ。何が怖いのだろう。
気になったGさんは、好奇心も手伝ってトイレのドアをがちゃりと開けて個室内を覗いてみた。

絶句した。

「壁にびっっっしり、御札が貼ってありました。壁と天井に隙間なく。綺麗に並べて貼ってあるんじゃなくて、御札の向きが一枚一枚バラバラでした。とにかく隙間ができないように貼り重ねてあるような感じで。あれはヤバかった、ほんとにホラー映画の世界」

・・・

Gさんには都内の喫茶店で取材させてもらったのだが、私は取材後にその足で見に行ってみた
ご本人も正確に憶えていないほど昔の話で(おそらく7年以上前)、コンビニ名も記憶にないとのこと。御札が今もなお貼ってある可能性は極めて低い。もしかしたらコンビニごと消えているかもしれない。だが、現地に行って確かめずにはいられない。

その駅に到着すると、改札近くに一軒のコンビニがあった。おそらくここだ。はやる気持ちを抑えながら、入店してトイレを使いたい旨を店員に伝える。すると、

「外に出てもらって右手にあります」と促された。

面を食らってしまった。予想外の展開。
指定の場所に行くと、工事現場にあるような仮設トイレが設置されていた。設置から長年経過しているような印象だ。

ちなみに、コンビニ店内のトイレがありそうな奥の場所はスライド式のドアにより閉鎖されており、中を覗くことはできなかった。ドアには「事務室」と印字された紙と、「トイレは外にあります」と注意書きされた紙が貼られていた。

ここからは推測だが、店内トイレに霊的な障害が生じ、当初は応急処置として御札を貼って使用していたと思われる。おびただしい数の御札が、そこで生じていた現象の壮絶さを物語っている。

しかしその後に使用禁止にせざるを得なくなり、屋外に仮設トイレを置くことになったのではないだろうか。

となれば、店内には『御札のトイレ』が未だに残っている可能性もある。

本件に関しては、追加情報が入り次第、追って報告する。

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