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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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#ホテル

【取材した怪談218】彷徨う叫び

男性K氏が二十代の夏、兵庫県内のラブホテルに彼女と車で赴いた。彼はTシャツに短パンでサンダルの出で立ちだった。受付で■■号室を選び、エレベーターに乗って上階に上がり、その部屋に入室した。洗練されたシックなデザインの部屋で、ベッド、ソファ、テーブル、テレビが並べてあった。 部屋を真っ暗にしてソファに並んで座り、彼女と甘い雰囲気を愉しんでいた、その時──。 おおおおぅおおおおぅおおお 彼らの後方から、中年男性の断末魔のような声が接近してきた。その声の塊は二人の間を通り抜け、

【取材した怪談203】空き部屋

彩乃さんは、とあるホテルで住み込みで働いていたことがある。 「同期が八人いて、そのうち七人はA館で寝泊りして、一人だけB館で寝泊りしてました。私はA館の部屋を割り当てられてたんですが、私の隣の部屋が空き部屋になってたんですよ。一人だけB館で寝泊りさせるんなら、その空き部屋を使えばいいのにって思ってました」 その空き部屋は、施錠されていたという。 彩乃さんが働き出して三ヶ月ぐらい経った夏ごろ。 夜中、彼女は共用トイレに行くために自室を出た。 「自分の部屋に戻る途中、寝ぼ

【取材した怪談192】3時00分

会話状況:女性Aさん・女性Xさん・私の三人。AさんとXさんは友人同士である。録音してないので正確ではなく、かつ言葉を補っているが、だいたいこんな会話だったと記憶している。 ・・・ Aさん「怖い体験かあ、そんなことあったかなあ……。あ、そういえば■■(九州地方)に旅行したとき!」 Xさん「あ! あの部屋なんかいたよね」 AさんとXさんは顔を見合わせる。 私(興味津々で)「一緒に行かれたんですか」 Aさん「はい、私とXと、あともう一人で二泊しました。私がネットで予約し

【取材した怪談話168】受話器

女性Kさんは、新型コロナウイルス感染症患者の療養施設で夜勤の派遣アルバイト(入所者の食事用意、ごみ捨て、書類作成、電話対応など)をしている。この療養施設は、ホテルの一部の棟をまるごと使用している。 ある夜の午前3時15分ごろ、ホテルの電話交換台から電話がかかってきて、Kさんが受けた。 「〇〇〇号室と△△△号室の受話器が外れているようです。対応お願い致します」 ホテルの従業員はノータッチで、自治体の職員と、自治体と契約した派遣会社の社員が諸々の対応をしている。Kさんの派遣

【怪談実話114】人のセックスを笑う

大学生のショウ君が、彼女と温泉付きホテルに一泊した時のことだ。 天然温泉にどっぷりと浸かって命を洗濯し、レストランで豪華な夕食に舌鼓を打ち、その後に客室でお酒を嗜んだ。二人にはもったいないほど広々とした客室という非日常的な空間、浴衣姿の彼女、さらにはアルコールが、ショウ君の性欲中枢を過剰に刺激する。 その流れで、二人は身体を重ね始めた。 ベッド上で互いの裸体を絡ませてしっとりと戯れ、全身の血が滾ってきた矢先、彼女がしくしくと泣き出した。 予期せぬ事態に、ショウ君はいささ

【実話怪談74】302号室

日本全国の宿泊施設数は約5万施設、部屋数は162万部屋に及ぶ。その中には、「霊感のある人は気を付けたほうがいい部屋」が存在するようだ。 霊感を有する女性、Rさんから伺った話。 彼女が24歳の時、友人と横浜に旅行したときのこと。時期は9月。横浜に到着した頃から、Rさんは体調の悪化を感じ始めた。 「体調が悪いから、ちょっと早めにチェックインして少し休んでもいい?」 友人にそう伝え、予約していた横浜市内のホテルに向かうことになった。 Rさんの青ざめた顔にただならぬ異変を感じ

【実話怪談20】本物

都内にあるバーのマスターEさんに伺った話。30年ほど前、彼が北海道の老舗ホテル内のバーで勤務していたときのこと。 宿泊客として霊能者の宜保愛子氏が来訪した。スタッフが彼女を部屋に案内した際、こう一喝されたそうだ。 「私を誰だと思ってるの」 実はその部屋で、過去に人が亡くなっている。ホテル側はそれを承知の上で、かつ宜保氏に知らせずにその部屋を彼女にあてがったのだ。つまり、彼女の霊能力を試した形になる。 「亡くなった方の霊が、その部屋に留まってたみたいなんです。彼女の力は

【実話怪談17】2つの…

ユキさんが19歳の頃、旅行でホテルに宿泊したときの話。 一泊して朝に部屋の窓を見ると、窓の下方に手形が付着していた。 部屋に入室して就寝するまで、そんな手形は存在しなかったはず。 人の手を窓にベタりと押しつけたときに形成される手形である。 小さい手形で、幼い子供のものと思われた。 数は、ふたつ。 両方とも全く同じ形だったため、両手ではなく片手だけで付けられたようだった。 それらの手形は、窓の外側に付着していた。 部屋は4階、窓には手摺りもない。ベランダもない。 恐

【実話怪談12】山陰の旅館

「修学旅行のときに変なことがあったの」 女性Fさんが、興奮ぎみに話してくれた。 彼女は高校の時、暇さえあればオカルト好きのクラスメイトと『こっくりさん』などに興じていた。それが影響してるかどうかは解らないが、就寝時に金縛りに遭うことが多かったそうである。 そんなFさんが高校の修学旅行で山陰地方の旅館に宿泊したときの話。 割り当てられた部屋は、年季の入った和室である。 その日は大雨が降っていた。 Fさんらが夕食を終えて部屋に戻ってみると、閉まっていたはずの窓が全開にな