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【実話怪談74】302号室

日本全国の宿泊施設数は約5万施設、部屋数は162万部屋に及ぶ。その中には、「霊感のある人は気を付けたほうがいい部屋」が存在するようだ。

霊感を有する女性、Rさんから伺った話。

彼女が24歳の時、友人と横浜に旅行したときのこと。時期は9月。横浜に到着した頃から、Rさんは体調の悪化を感じ始めた。

「体調が悪いから、ちょっと早めにチェックインして少し休んでもいい?」
友人にそう伝え、予約していた横浜市内のホテルに向かうことになった。

Rさんの青ざめた顔にただならぬ異変を感じとった友人は、すぐに理解を示した。早々にホテルに向かい、到着後はフロントで友人がチェックインの手続きをしてくれた。

「お客様のお部屋は、302号室です」と従業員が友人に鍵を手渡した瞬間、Rさんは、あ……その部屋、嫌だな、と直感した。

「エレベーターで3階まで上がり、降りて右側に302号室があったのですが……。部屋の扉が、真っ黒く見えました。実際は、綺麗なホワイトの扉なのに」

あ……やっぱりなんか嫌だ、この部屋……。

得体の知れない嫌悪感を抱きながらも、Rさんは一刻も早く横になりたかったため、302号室に入ってすぐにベッドに身体を投げ出して目を閉じた。
そのとき友人はソファに座り、テレビを鑑賞していた。

・・・

ベッドで仰向けに眠っていたRさんは、急に息苦しさを感じた。誰かが自分の上にまたがって、自分の首を絞めている、そんな苦しさだ。感覚として苦しさを感じたため目視したわけでないが、首を絞めているのは男性のようだった。年齢などはわからない。

「ねぇ、大丈夫? 大丈夫?」

不安げな友人の声で、Rさんは目が覚めた。

「友人によれば、テレビを見ていたら私が急にうめきだし、苦しがっていたので驚いたそうです。“首を絞められた、誰かが私のお腹にまたがっていた“と話すと、友人の顔から血の気が引いて青ざめていくのがわかりました」

Rさんの首元には、両手で首を絞められたような痕(あと)が残っていた。
両手の掌全体の痕跡がべったりと残っており、特に喉仏周辺には親指の腹の部分の痕がくっきりと視認できたそうだ。

すぐに友人がフロントに電話して従業員を部屋に呼び出し、事情を話してくれた。

「あ……そうですか……。お部屋を変えますね」

駆けつけた従業員は顔を強張らせながら、そう言った。
過去に302号室で何があったのかは、教えてもらえなかった。

新たにあてがわれた部屋に入室して以降、Rさんの体調は良くなり、首の手の痕も薄れていった。一時しのぎとしてストールを巻いて対処したが、数時間後には手の残痕は完全に消失していた。

念のため、Rさんは旅行の帰りに祖母の友人(沖縄出身のユタ)に除霊をしてもらった。

ちなみに、Rさんはこの友人とはよく一緒に旅行をするそうで、いつもは友人が宿の予約を入れるが、今回は自分が予約する、と自ら申し出たそうだ。Rさんが宿泊先をインターネットで調べた際、「このホテルに泊まらなきゃ」と感じて予約に至ったという。理由は全くわからないそうだ。

「手の痕、写真に撮っておけばよかったです」と、Rさんは後悔している。

・・・

※記事中の部屋番号は、実際の部屋番号とは異なります。

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