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取材した怪談

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私が取材した心霊的・不可思議現象の話です。
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2021年1月の記事一覧

【怪談実話103】瞬光

「体操は危険なスポーツで、事故も多いんです。だから怪我しないようにと、定期的にお祓いに行ってました」 そう語り出してくれたのは、体操競技の経験者である美穂さんという女性だ。本エピソードは彼女が小学6年生の時の出来事である。 ・・・ 当時彼女は、ある大規模な試合に向けて日々練習に明け暮れていた。 その試合の何日か前に、いつもお祓いを受けている神社に足を運んだ。その際に神主さんから出た言葉は、意外なものだった。 「次の試合、良からぬ気配を感じる。どうしても出なきゃならんの

【怪談実話102】エリちゃん

女性Tさんは10歳の時、母方の伯母から一体の西洋人形を譲り受けた。 「もともとは、伯母が娘さんに買ってあげたものだそうです。娘さんは社会人になって家を離れており、私に譲ってくれました」 その人形は、身長60~70センチの〈何処かの国のお嬢さま〉だった。 長めのリボンがセットされ、緩いパーマが施されたツインテールの栗毛の髪。ベロア生地のワインレッドのワンピース。フリル付きの白シャツ。ピアノの発表会で履くような可愛いエナメルの靴。フリル付きの靴下。 「スリープアイ」式の人

【怪談実話101】寮に潜む女

ある高校野球の名門校の寮でのエピソードです。いつもの4〜5倍の文量ですが、野球部員ならではの結末が待っているので最後まで読んでいただければ幸いです。 ・・・ 10年前、A君が高校の野球部に入学して間もない時期の体験談である。 彼は中学卒業と同時の親元を離れ、高校野球の名門校に進学して寮で生活することになった。その高校は歴史が長く、寮も年季が入っていた。 寮には野球部員が数十名ほど住んでおり、その約3分の1が新1年生だった。寮は2人部屋で、A君は同じ野球部1年のB君と同

【怪談実話100】著作紹介『実話怪談・犬鳴村』

竹書房さんから『実話怪談・犬鳴村』という文庫本・電子書籍が出版されています。 本書は、第一部と第二部から構成されています。 第一部には、日本屈指の心霊スポット・福岡県の犬鳴村/犬鳴トンネルに関する地理・歴史などが写真、図面、文章で紹介されています。 第二部には、犬鳴村/犬鳴トンネルに関する実話怪談が25篇収録されています。多くの作家さんが寄稿しています。 私も「水」という実話怪談をムーンハイツ名義で収載いただいたので、それを100話目とカウントします。内容をnoteに

【怪談実話99】巻き戻し?

28年前、女性Kさんは高校3年生になる前の春休み、友人のツテで新聞配達の短期アルバイトに勤しんだ。2週間、朝刊だけ100部を自転車で配達して回った。勤務先は大阪市内の配達所で、本エピソードはその職場の女性先輩からKさんが聞いた話である。 その先輩が、あるマンションに新聞を配達する時のこと。 エレベーターを利用して上階から下階へと配達するのだが、箱に乗るといつも人の会話が聞こえてきたそうだ。 「エレベーターの中でだけ、天井の方から人の話し声みたいな音が聞こえたのよ。朝4時頃

【怪談実話98】巻き戻し

霊感の強い男性Tさんは30代の時、精巣癌を患ったことがある。疾患が判明した時点で既に末期だった。全身に転移が進行している可能性が高く、助かる見込みが極めて薄かったそうだ。 もう自分は長くないと思った彼は、残された時間で何ができるか、自問自答していた。その結果、家族に金銭を残したいと思うに至り、当時住んでいた地域のパチンコ店の景品交換所の場所を全て調べ上げ、強盗を計画していたほどだった。 だが検査の結果、奇跡的に癌の転移が全く認められず、精巣腫瘍の摘出により一命を取り留める

【怪談実話97】一反木綿

女性Aさんが20歳の時の話。 当時彼女は、福岡県のとある団地のマンション1階に住んでいた。その団地は、T字路の突き当りの正面に位置している。1階のため、夜に道路の正面から車が進入すると、その車のヘッドライトの光が部屋に差し込んでくる。 ある夏の夜、換気のために窓を10cmほど開けており、窓に合わせてカーテンの端部も開けていた。 夕食後に台所でコーヒーを淹れていると、カーテンの向こうから、やたらと眩しい光が見えてきた。車のライトかと思ったが、ライトの位置にしては高すぎて違

【怪談実話96】頭に何か憑いている

7年ほど前のある夜、女性Kさんは、同居人の女性、知人の男性Xさんと3人で自宅近くの飲食店でディナーを楽しんだ。Xさんは種々の仕事を兼務しており、霊能者としての一面もある多才な努力家だ。 夕食後、皆でKさん宅でお茶しよう、という流れになった。帰宅するや否や、Kさんは「頭に何か憑いてるぞ」とXさんに指摘された。 彼の指示により、Kさんはダイニングの椅子に座らされた。Xさんは彼女の背後に立ち、数分間(5分ぐらい)にわたり念仏を唱え続けた。その間、ときどき両肩と頭部にそっと手を置

【怪談実話94】吸い取る男

京子さんは学生時代、学費を賄うために東京都内のスナックで働いていた。その店には、ある常連の男性客がいたそうだ。実年齢は七十代だが、シミのない艶肌、黒々とした毛髪、ぴんとした背筋、どう見ても四~五十代だった。 「その人の隣に座って接客したことがあるのですが、時間が経つにつれて、身体がどんどん軽くなっていくんですよ。頭もキリっと冴え、気分もふわりと軽くなりました。接客して十五分も経ってないぐらいです。呼吸さえ、楽に感じるほどでした」 酒が進み、彼がほろ酔いになると、不意にこん