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声が枯れるまで語る時間

声が枯れるまで話をした。人生について。親愛なる友人と、大好きな街で。

大学4年間を過ごした街には至る所に思い出があり、そのひとつひとつについて語るだけで数時間が経ってしまう。なくなったお店も、新しいお店も、変わらないお店もあった。

あの頃に戻りたい、と悲観的になるのではなくて。未来志向の懐古は心にいい。こういう時間こそ人生だ、と思う。

話しながら気づいたり、気づきながら捉え直したり。声が枯れるまで話しても、まだ話したいと思った。大学生だった私たちもまぶしいけれど、今の私たちだってきっとまぶしい、と思った。

私は、人と話すことが好きです、と言うことに抵抗がある。簡単に言うことができない。人と人は完全にわかりあうことができない。すれ違うしぶつかるし、別々のかたちだから傷つけ合ってしまう。それでもなお、分かり合える一瞬を求めていたい。そういう意味では人と話すことが好きなのかもしれない。ただ、これをぱっと伝えることが難しい。感情や思考を表現するのに、ことばはいつもすこし足りない。それでも伝えようとする人が好きだし、私もそうでありたいと思う。思い出させてくれる友人に、何度でもありがとうを伝えていたい。

同じ時代に生まれて、同じときを同じ場所で過ごせることは奇跡に近い。人生が交わって、互いの深い部分を見つけ合えるなんてもっともっと奇跡だ。

電車に揺られている。みんな変わっていくけれど、変わっていくあなたのことが、私は変わらずずっと好きだよと、いつでも伝えられる人でいたい。


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